156話 なぜナビエはハインリの子供の頃のことを知りたくなったのでしょうか?
◇子育ての準備◇
ハインリの子供の頃のことを
教えて欲しいと言うナビエに、
ハインリは
自分のことをもっと
知りたくなったのかと
ナビエに尋ねました。
彼女は、子は親の鏡というから
子供がハインリに似た時のために
今から準備したいと
ナビエは答えました。
ナビエ自身は、誰もが認める
本当に言うことを聞く子でした。
しかし、ハインリは、
表では優しく振舞うけれども
裏ではわがままで
賢くて快活だけれども
いたずらがひどいので
ハインリの子供の頃のことを聞いて
どのように教育するか
判断したいと思いました。
ハインリは、
子は親の鏡という意見に
同意できない。
自分は親に依存していなかった。
マッケナを連れて
外をあちこち歩き回っていた。
と話してくれました。
ナビエは、未来の子供の性格が
目に浮かんで不安になりました。
真面目なナビエらしいです。
◇ハインリの肖像画◇
マッケナは、ナビエの仕事を
かなり持って行ってくれたので
ナビエは時間に余裕ができました。
暇になると、未来の子供の性格を
考えてしまうので
彼女は、ハインリと
子供の頃から仲の良かったマッケナに、
ハインリがどんな子供だったか
聞くことにしました。
夜の8時に
マッケナに呼び出されたナビエは
執務室へ行くと
マッケナが、ハインリが7-8歳の頃の
肖像画を見せてくれました。
今は、ニコニコしているハインリが
ふくれっ面をしていました。
何かの行事の時に
無理に絵を描くことになり
怒っていたとのことでした。
続いて、5-6歳の頃のハインリの
肖像画も見せてもらいました。
ハインリは今の顔そのままに
にっこり笑っていました。
ところで、ナビエは
いとこのマッケナが
なぜ、こんなに
ハインリの肖像画を持っているのか
不思議に思いました。
それについて尋ねると
ハインリは静かに座っているのが
嫌いだったので
ハインリが過ちを犯す度に
その罰として、前王妃が
肖像画を描かせた。
ハインリが大きくなって
自分で絵の管理を任されたけれども
証拠隠滅を少しずつ図ろうとして
ばれたので、その後自分が
担当することになった。
と答えました。
やはりハインリは
厄介者だったのかと
ナビエは子育てに対して
不安を募らせました。
そして、マッケナが
一番近くの肖像画を手に取り
話を続けようとすると
口でトントンと言って
苦笑いをしているハインリが
ドアにもたれて
立っていました。
◇父親をどうするか◇
ラスタはエルギ公爵の所へ行き
実父がロテシュ子爵に会いに来た、
明らかに、彼は金が目当てだ、
どうしたらよいかと
相談しました。
ラスタが奴隷になったのは
父親のせいでした。
捨てられたも同然の彼女を
父親が訪ねて来るなんて
何か魂胆があるに
決まっていました。
ラスタは、ロテシュ子爵や
自分が雇ったのと
同じような傭兵を
雇うのは困難だし
さすがに実父を殺すことは
忌まわしいと思いました。
一生会えないような遠い場所へ
送ることができたらと
思いました。
エルギ公爵は
お金で解決するしかないと言って
莫大な金額の書かれている小切手を
持ってきました。
手形事件が起こったばかりなので
ラスタは大金を受け取るのを
躊躇いましたが
エルギ公爵が優しい声で
無理な金額ではないし
助けたのは一度や二度では
ないでしょう?
と言ったので
ラスタは小切手を受け取り
エルギ公爵が
欲しいと言っていた港を
彼にあげられるように
努力をすると言いました。
◇エルギ公爵の企み◇
他の人よりも頭2つ分背が高く
高級な服を着て
傲慢な顔をしているエルギ公爵は
薄汚い通りで目につきました。
誰が見ても王族か貴族の
エルギ公爵に
誰も声をかけない中
古いけれども高級な服を着て
小柄で目鼻立ちが整っている
銀髪の男が
ヘラヘラ笑いながら
エルギ公爵に声をかけました。
その男は、ラスタの
実の父親でした。
ラスタの父親は
自分がロテシュ子爵に
会えるように
してくれたことについて
エルギ公爵に礼を言いました。
しかし、彼は知らんぷりしました。
そんなことはお構いなく
ラスタの父親は話を続けました。
そちらも何か魂胆があって
俺を助けたんだろう?
娘とはどのような関係?
そして、
うちの娘に
お前が裏で何をしているか
話して欲しくなければ金を出せ。
と手のひらを広げました。
エルギ公爵は今まで、
あらゆる悪い人を
見てきたけれどもここまで
厚かましい人は初めてだったので
生まれつきのひどい奴だ
と言いました、
父親は、
娘の情報を
売り飛ばしながら
お金を横取りされるのは嫌・・・
と言い終わる前に
エルギ公爵は男の後頭部を
手で握り近くの壁に
ドカンと音がするほど
押し付けました。
そして、手を伸ばし
男の首がちぎれそうなほど
握りしめました。
男は両手を動かして
放してくれと合図を送りました。
男が気を失う前に
エルギ公爵は男の首を放し
男を脅迫することなく
立ち去りました。
男は何度も咳き込んで
目尻にたまった涙を拭きました。
男は
殺人鬼みたいだ、
貴族というだけで
あんなことをしても
何ともないなんて
と悪態をつき
俺は娘に言ってやる。
私の娘は皇后だ!
エルギ公爵に聞こえるくらい
大きな声で自信満々に
男は言いました。
あれはどういう意味?
と売店の商人の呟く声も
聞こえました。
エルギ公爵は
私の出る幕はないね。
と言いました。
ラスタの父親の出現に
エルギ公爵が
関わっているとは
全然思いませんでした。
港を手に入れるために
エルギ公爵は
色々と手を回していたのですね。
恐るべしエルギ公爵です。