157話 ラスタの実父出現にエルギ公爵が関わっていたようですが・・・
◇父親との再会◇
実の父親がやって来る日
ラスタは、
朝からぼんやりとしていました。
彼女は自分を奴隷にした
両親が嫌いだったので
父親の顔を見たくないし
話も聞きたくない、
今さら自分の前に顔を出すなんて
厚かましいと思いました。
ラスタは、お茶もお菓子も
用意することなく
応接室で父親と会いました。
目鼻立ちは整っているけれども
表情は陰険で
背中が曲がっている
薄汚い男でした。
彼は「私の娘」と言って
ニヤリとして立ち上がりました。
ラスタは、身の毛がよだちました。
父親は自分のことを
愛することがなかったし
面倒も見てくれなかったし
彼女の誕生日も覚えていなかったし
名前を間違うこともありました。
こんな人は、父親ではなく
ただの男だと思いました。
ラスタは、
なぜ、自分に会いに来たのかと
父親に尋ねると
彼は、彼女の話を聞いたからだと
答えました。
ラスタは、
自分が辛い生活をしている時に
会いに来なかった父親に腹を立て
彼を睨みつけながら
出て行くように言いました。
けれども、ラスタは
出ていけと言って
父親が素直に出て行くとは
思いませんでした。
自分が先にお金を出すのではなく
父親が何かを要求するのなら
彼の口から言わせようと
思いました。
ラスタが自分の寝室に
戻ろうとすると
父親は、ラスタに
エルギ公爵の容貌を伝え
その男が、彼女のことを
教えてくれたと伝えました。
ラスタは、実の父親よりも
自分のことを気遣ってくれた
エルギ公爵が
そんなことをするはずがないと
思いました。
ラスタは父親に反論することなく
寝室へ戻ってしまいましたが
父親が何度もドアを叩くので
寝室から出てきました。
そのラスタの顔を見て、父親は
ラスタがエルギ公爵を
愛していることに気づきました。
父親は、エルギ公爵の
悪口を言う代わりに
本題に入ろうと思いました。
父親は事業を始めるので
お金が必要だと言いました。
その金額は、
ラスタが予想していたよりも
少なかったので
安心しましたが
何かおかしいと思いました。
父親は詐欺を働いたので
奴隷になり
その娘のラスタも奴隷になりました。
金銭問題で罪を犯した人は
お金を一定以上集めて
被害者に返し
国に罰金を納めれば
奴隷からすぐに解放されます。
父親もそれで
奴隷から解放されたけれども
奴隷は
事業を始めることができません。
それについて、ラスタは
父親に尋ねると
父親は、必死でお金を集めて
奴隷から解放されたと
答えました。
父親のせいで
自分は奴隷になったのに
奴隷売買証書さえなければ
今、自分はこんなに
苦労しなくて良かったのに。
ラスタは
父親が勝手に平民になったことに
腹が立ちました。
父親は、
ラスタも奴隷から解放しようと
思ったけれども
領主の息子と恋仲になり
裕福に暮らしているようだから
そちらが解放してくれると思ったと
言いました。
ラスタは父親に腹を立て
お金は一銭もやらない、
勝手にしろ。
自分は関わらないと叫びました。
父親は、
ラスタが皇后になれたのは
自分が彼女に
きれいな顔をあげたからだ。
この恩知らずと罵りました。
ラスタは、
どうして、こんな人間がいるのかと
呆れて、息もできませんでした。
しかし、父親は、
娘が父親のことを気遣うのは
当然の義務。
ラスタが自分を捨てるなら
ラスタがどれだけ
恩知らずで親不孝者か
皆に言いふらすと言いました。
親としての義務を果たしていないのに、親を気遣うように要求するのは、虫が良すぎます。
◇肖像画の真実◇
マッケナは、
泣きそうな顔をして
慌てて肖像画を箱に入れて
裏口から出て行きました。
ハインリの過去を調べていて
バレたナビエも
皇后の威厳を保ちながら
マッケナの後を
追いかけようとしましたが
ハインリに呼び止められました。
ナビエが、
急に思い出したことがあると言うと
ハインリはナビエの頬を
引っ張りました。
ナビエは、
無礼だと
わざと冷たく言うと、ハインリは
クイーンについて
気づいたことがある。
クイーンは恥ずかしい時
より威厳を保とうとし
冷たくなると指摘しました。
きまりの悪いナビエは
表情が固まりましたが
ハインリは
彼女の頬を両手で包み
鼻先にキスを3回して
ニッコリ笑いました。
そして、
ナビエのことを
可愛い、きれいと言い、
自分は、クイーンが
こんな時でも大好きだと告げました。
男性にこんな風に言われたら、嬉しいです。
ハインリに、
マッケナと何を話していたのか
聞かれたナビエは
ハインリの子供の頃のことを
聞いていたと答えました。
ハインリは、子供の頃
いたずらっ子だったから
その時のことを
知られたくないと言いました。
そして、マッケナが拾い忘れた
肖像画を拾いました。
両頬がパンパンに膨らんだ
子供の頃のハインリを
大人のハインリが
笑いながら見ました。
その姿を見たナビエは
ハインリの母親は
彼が悪さをして
憎たらしいと思っても
彼のことを愛おしく思い
肖像画を残したのだと思いました。
ナビエは
どのような子供が生まれても
自分は、自分たちの子を
愛さなければならない。
今から怖がっても意味はないと
思いました。
ナビエは
双子が生まれても大丈夫。
1人はハインリに似て
もう1人は自分に似ていたらいい。
それとも半分ずつ似るとか。
それと
肖像画は捨てたりしないでと
言いました。
ふくれっ面をしたハインリが
肖像画を差し出すと
ナビエは胸に抱きしめて
得意げに笑いました。
ラスタの父親の卑劣さに
腹が立ちました。
どんな親であっても
子供は自分のことを
愛して欲しいと思うもの。
けれども、
父親にとって
ラスタは金づるで
少しの愛情も持っていないようです。
ラスタは親から愛されず
アレンに捨てられ
ソビエシュの愛も冷めてしまい
エルギ公爵は見せかけの愛
そして、
子供から引き離されてしまったので
子供からの愛情も受けられない。
ラスタは愛されたいと
思っているのに
愛を得られない
可愛そうな女性だと思いました。