144話 ナビエの絵を見て、泣き崩れたソビエシュでしたが・・・
◇私を見て欲しい◇
しばらく泣いた後、ソビエシュは
他の人の目につく絵を
衝動的に購入したことを
後悔しました。
布団の中に潜り込みながら
明日になったら絵を外そうと
誓いましたが
翌朝、絵を外す代わりに
宮廷画家を呼び
ナビエが自分を見下ろすように
絵を書き換えるように
命じました。
◇交易の問題◇
西大帝国では
ナビエ、ハインリ、カフメン大公、
マッケナ、そして、
ルイフトとの交易を担当した
官僚たちが
ホワイトモンドで
起こったことについて
何時間も議論をしました。
色々な意見が出ましたが
結論は「わからない」でした。
ハインリは、カトロン侯爵に
この問題について
ホワイトモンドへ問い合わせるように
命じました。
そして、カフメン大公へは
現場近くにいる部下に
状況を確認させるように
命じました。
ナビエは、
カトロン侯爵を信じてよいのか
不安になりましたが
ハインリの、
そこまで愚かではないという言葉を
信じることにしました。
ナビエとハインリは
仲間意識が強くなり
互いに見つめ合っていましたが
ナビエは、ハインリと
最期に別れた時のことを思い出し
顔を背けました。
ハインリが慌てて
ナビエの手を握ると
カフメン大公は
ハインリの心を読んだのか
急用ができたと言って
逃げるように立ち去りました。
人の心が読めるって、とても辛いことなのでしょうね。
ナビエも他の場所へ行こうとすると
ハインリはナビエの名を呼びながら
彼女の手を握りました。
見る人の胸をドキッとさせるような
いじらしい顔をしていましたが
ハインリが猫を被ることを
知った後なので
本気なのかどうか
わかりませんでした。
ナビエは、働く時間だからと
言って、執務室へ向かいました。
ハインリは後を付いてきました。
ナビエが怒っているのではと
尋ねるハインリに
怒っていない、
仕事をするようにと命じる
ナビエでしたが
ハインリは、ぴったりと
後を付いてくるので
ナビエは立ち止まりました。
ハインリは、
自分とナビエが
近づいていると思ったのに
ナビエが急に自分を遠ざけるから
感情的になり、つい、
あんなことを言ってしまったと
謝りました。
ナビエは、
ハインリの謝罪を聞いて
自分が情けなくなりました。
彼といる時間を
無理に減らしたのは自分。
彼を愛したくないという
恐怖に酔い
彼を寂しくさせて
しまったのではないか。
ナビエは、
両親の前で笑っている
ハインリを思い出し
心が痛みました。
ハインリを幸せにすると
決心したのに
どうして、また、こんなことに
なってしまったのか。
ハインリはナビエの
顔色をうかがい
両手でナビエの頬を包みながら
そんなに
悲しそうな顔をしないでと
言いました。
ナビエは、
ハインリを愛したくないと
もがきながらも
彼のことを愛らしく思うのは
ある意味で、本当に
彼の身体だけを
愛しているのではないか、
ハインリの身体を愛しながらも
心は負担に思っているのだからと
思いました。
そして、ハインリの言葉は
本当かもしれないと思ったと
言いました。
◇不妊症だったら・・◇
ハインリは軽く笑い
何か言おうとすると
茂みから、
小さな男の子が飛び出しました。
ナビエが初めて見る子でした。
その子が、ハインリのことを
パパと呼んだので
ナビエが驚くと
その男の子はマッケナの甥で
自分とは関係ないと言いました。
ハインリは、その子の名前も
よく覚えていませんでした。
するとマッケナが後ろから
その子の名前は
セバスチャンで
宮殿の見物に来たけれども
ここまで入り込んでしまったと
教えてくれました。
セバスチャンはマッケナのことも
パパと呼びました。
そして、ナビエのことも
パパと呼び、
彼女に抱かれたがりました。
そして、今度は
セバスチャンを
追いかけていた乳母が
不審者と疑われ
騎士たちに捕らえました。
彼女は、
マッケナに泣きそうな顔で
自分は不審者でないことを
騎士たちに教えて欲しいと
懇願しました。
その騒動を見て
ナビエは吹き出しました。
マッケナは、
ハインリとナビエに了解を求めてから
子供を連れて
どこかへ行ってしまいました。
遠ざかる彼らを見つめながら
ナビエはハインリに視線を
移しました。
ソビエシュは
自分の子供を持ちたくて
やきもきしていた。
ハインリはどうだろうか。
ハインリは
ベッドの秘密を教えてくれて
本当に不妊症であっても
今度は子供が持てると
言ってくれた。
しかし、あれほど頻繁に
愛し合ってきたけれども
まだ妊娠の兆候はない。
本当にベッドが
身体を回復させて
子供を持てるようにしてくれるのか。
クリスタと前国王の間に
子供はいなかった。
もし、私たちの間にも
子供ができなかったら・・・
と考えました。
ナビエは
ロッキングチェアに座りながら
お腹に手を置き
自分が母親になった時のことを
想像してみましたが
簡単にはできませんでした。
ソビエシュは
自分の子供が欲しくて
地団太を踏んでいたけれども
ハインリも自分の子供を
ひどく欲しがるだろうか。
もし、自分が不妊症だったら
東大帝国のようなことが
繰り返されるのだろうか・・・
ナビエがお腹をさすりながら
ぼんやりと椅子に座っていると
おやつを持ってきた
ジュベール伯爵夫人が
ナビエの姿を見て
心配そうな顔をしました。
◇両親の暗殺計画◇
ナビエが
彼女に言い訳をする前に
突然ハインリが
やって来ました。
何かあったのかと思い
ナビエは不安になりましたが
その予想は的中しました。
ハインリは
ラスタが傭兵を雇い
トロビー公爵夫妻を暗殺するように
命じたと
ナビエに伝えました。
ナビエはラスタが
自分の暗殺を命じたとしても
不合理だと思いましたが
両親の暗殺を命じるなんて
とんでもないことだと
思いました。
ナビエの両親は
ラスタと戦うタイプではないし
ソビエシュと彼女に
会いたくなければ
邸宅に引きこもる方を選ぶ
人たちでした。
ラスタは、トロビー公爵家が
赤ちゃんの邪魔になると思い
暗殺を命じたのだと
ナビエは思いました。
不安でいっぱいのナビエに
ハインリは
ラスタが雇った傭兵は
自分の情報提供者が
彼の部下とすり替えている。
だから、この情報が
自分のところへ伝わってきたと
言いました。
情報提供者はエルギ公爵で、ブレスレットの一件の時に、傭兵をすり替えていたのですね。
ナビエの心の中に
火の手が上がりました。
腹が立つほどではないけれど
非常に悔しい思いがしました。
ナビエは東大帝国にいた時
ラスタより
はるかに権力のあるソビエシュが
彼女を側室にしたので
彼女の言動は
ソビエシュの責任下にあると考え
ラスタの行動を
黙って見ていました。
自分の権力でラスタを
押さえつけたところで
人々は弱者に共感するので
自分が悪い皇后に
なってしまいます。
それなのに、
ラスタは権力を持った途端
自分の両親の暗殺を命じるとは。
ナビエは
じっとしていられないと言いました。
自分の前にいる時は
ハインリが
猫をかぶっているのではと
疑ってしまうナビエ様。
ハインリのナビエ様の愛は
本物で、彼がナビエ様を
裏切ることはないけれど、
子供の頃から友達だった
ソビエシュの裏切りは、
ナビエ様の心に大きな傷を
残してしまいました。
ナビエ様がハインリの気持ちを
心から信じられる日が
早く来ればいいのにと
思います。