181話 親子検査の場に現れたエルギ公爵の目的は?
◇混乱◇
エルギ公爵は
姫に驚くほどよく似た
少し年上の子供を
抱いていました。
その子の仕草は
ラスタにそっくりでした。
アレンは、悲鳴を上げながら
その子に飛び掛かろうとしましたが
騎士たちに抑えられました。
ソビエシュはエルギ公爵が
ここに来た理由を尋ねると
どういうわけか
子供を預かることになったけれど
ここに、この子の
お父さんとお母さんがいると
聞いたので返しに来た。
と答えました。
ソビエシュの指示で
騎士たちはアレンを離すと
彼は、エルギ公爵から
子供を奪い返しました。
アレンの子供への愛情は本物ですね。
ラスタは、
子供を欲しがっている家に
子供を預けるように頼んだのに、
なぜ、エルギ公爵が
ここへ連れて来たのか
理解できませんでした。
ラスタは、姫は
本当に陛下の娘なので
信じて欲しいと
ソビエシュに懇願しました。
しかし、彼は
この状況にひどく腹を立て
誰の弁解も聞きたく
ありませんでした。
姫が自分の娘でなければ
ラスタを野の花のように
か弱くて、純粋で
欲がなくて正直だと
思っていた時代から
彼女は自分を翻弄していた、
罠にかかったのも
わざとではないかと
疑いました。
貴族たちは、
ラスタがソビエシュを騙して
結婚したのでは?
アレンとの子も
親子検査をすべきだ。
と叫びました。
貴族たちの様子に
ラスタは激怒しました。
自分と姫が窮地に陥っているのに
ソビエシュは
自分だけが被害者面しているのを
嫌だと思い
ソビエシュは、
すべてを知りながら
自分を受け入れてくれた。
自分が逃亡奴隷ということを
知っていて貴族たちを
騙していた。
と言おうと思いましたが
何か一つ、ソビエシュの弱点を
握っていた方が
自分と姫に役に立つだろうと思い
やめました。
腹黒なラスタ
ラスタはソビエシュに
もう一度、検査をして欲しいと
訴えましたが
ソビエシュは拒否し
ラスタとアレンの子の
親子検査をするように
神官と騎士に命じて
出て行きました。
ラスタは、ソビエシュを
追いかけようとしましたが
騎士に遮られました。
神官から姫を返された
ベルティ子爵夫人は
ソビエシュの後に続きました。
ベルディ子爵夫人は
ソビエシュとは別の馬車に乗り込むと
姫を抱きしめて
私が守ってあげます。
誰が何といっても
私にとってお姫様です。
と言いました。
ベルティ子爵夫人は
子供に愛情を持っていたので
その子が姫でなくても
気にしませんでした。
ソビエシュにも
それまでの愛情が残っていて
この子に冷たくしないで欲しいと
思いました。
◇姫の行く末◇
先に宮殿に戻った
ソビエシュとカルル侯爵
そして
ベルディ子爵夫人の顔を見た
宮廷の人々は
結果を聞く前から
何が起こったかがわかり
これから起こりうることを
口々に話しました。
姫のことを
カッコウ姫と呼ぶ人も
いました。
ソビエシュは執務室に戻り
狂ったように仕事に打ち込みました。
その様子を見ていたカルル侯爵は
これからのことを心配しました。
ソビエシュは、
カッコウ姫を自分の手元に
置いておけば
馬鹿にされるし
その子を追い出せば
薄情だと言われる。
と思いました。
しかし、廃位になった皇后が
側室だった時に
他の男との間にできた子供を
いつまでも皇女にしておくことは
できませんでした。
2時間後、ソビエシュは
ラント男爵に
検査の結果を報告し
しばらくしてから
口を開きました。
◇夢見心地のハインリ◇
ナビエの束の間の愛の告白は
ハインリの心を
赤く染めるには十分で
彼は、半分意識がなくなり
自分が何をしているのかわからず
インク瓶を肘で倒したりするので
それを見ていたマッケナは
腹を立てました。
しかし、ハインリが
自分は愛されていると
言って喜んでいるので
マッケナは
気分が悪くなりました。
マッケナは、
シャレット姫が
コシャールと結婚すれば
港が一つくらい手に入ると
期待しているのかと尋ねると
ハインリは、
マッケナのことを
計算高いと非難しました。
ハインリは、
子供が生まれたら
父と母はどうして
結婚しているのか尋ねるだろう。
私は、父は母を愛し母も父を
愛しているからと答える。
と夢見心地に言いました。
それに対してマッケナは
それは運が良かったからで
子供たちは
愛する人と結婚できない。
と言ったので、ハインリは
マッケナを睨みつけました。
そして、マッケナに
結婚する気はないのか尋ねました。
ハインリの真剣な様子に
マッケナはぎこちなくなり
彼は話題を変えて
ジュメンシア老公爵と
ジュメンシア公爵が
喧嘩した話をしました。
ジュメンシア老公爵は
怒りで自らを燃やすので
こちらは薪をくべればよい。
とハインリは言いました。
彼は、ジュメンシア老公爵が
ナビエと子供を害する食べ物を
用意したことを
大目に見るつもりは
ありませんでした。
マッケナは執務室を出ると
すべてがうまくいっているのに
なぜかすっきりしません。
なぜ、もやもやするのか
考えながら歩いていると
カフメン大公が
木にもたれかかり
眉間に皺を寄せて
1人で座っているのが見えました。
◇カフメン大公の悩み◇
マッケナは
カフメン大公に
何か悩みがあるのかと
尋ねました。
しかし、カフメン大公は、
悩みがあるのは、
そちらだろうと
心の中で答えながら
冷たく笑いました。
マッケナの心配事の中に
ナビエの名前が何度も
出てきているのと
通り過ぎる人たちの多くが
ナビエのことを考えているので
カフメン大公は
通りを歩くのも大変でした。
カフメン大公は
自分とあまり話を
したくなさそうだと思い
マッケナは立ち去りました。
ルイフトと西大帝国の貿易は
うまくいっているのに
カフメン大公は
他の人たちのように
純粋に喜べませんでした。
ナビエが、自分の心を
凍らせてくれればよいのにと
思っていました。
その時、近くから
ナビエの声が聞こえました。
ナビエもカフメン大公を
見つけると
2人の目が合いましたが
彼の顔が歪みました。
ナビエは、
ハインリとシャレット姫のことを
誤解した時の苦痛を
カフメン大公が常に
感じているのかと思うと
彼のことが可哀そうだと
思いました。
カフメン大公は
逃げるように立ち去りました。
その姿を見て
文句を言ったマスタスを
ローズが叱責しました。
そして、ローズは
シャレット姫がコシャールと
結婚したいと言っているのを
聞いてから、マスタスは
攻撃的に人と接していると
指摘しました。
ラスタが罠にかかったのは
わざとではないかもしれませんが
ソビエシュと出会った時には
野の花のような可愛らしい
見た目とは裏腹に
中身は男を手玉に取る
手管に長けていたと思います。
ソビエシュが、
どれだけ腹を立てても
混乱を招いたのは
ラスタに溺れてしまった
彼自身の責任だと
思います。