44話 扉の外にいたのは・・・
◇側室は側室◇
側室は側室にすぎないと
扉の向こうから
大きな声が聞こえた時
ラスタは大きなぬいぐるみを
抱き締めました。
ラスタは泣きそうな顔で
扉を見つめた後
自分の部屋へ向かいました。
ラスタは
ロテシュ子爵の言葉は正しかった。
ソビエシュが自分のことを
愛してくれていても
愛人にすぎない。
いつ心変わりするかわからない人に
頼っているこの身分は
危なかっしいと思いました。
ラスタはベルディ子爵夫人を呼んで
一生涯、皇帝から寵愛を受けた
側室がいたかどうか尋ねました。
しかし、ベルディ子爵夫人の
困ったような表情から
ラスタは答えが分かりました。
ベルディ子爵夫人は
いないわけではないと答えた後
皇帝の寵愛を受けなくても
皇帝との間に子供がいたら
皇室と縁が切れることはない、
赤ちゃんがラスタの
力になってくれると言いました。
しかし、ラスタは
赤ちゃんを愛して
責任を持ちたいと思っている。
赤ちゃんを利用したいのではないと
叫びました。
その時、下女のシュレーヌが
ロテシュ子爵の来訪を告げました。
ラスタはベルディ子爵夫人に
出て行くように命じた後
ロテシュ子爵を中へ入れました。
彼は、
そろそろ首都へ引っ越してくるので
家を買うためのお金が必要だと
ラスタに告げました。
彼女は、以前、
エルギ公爵が貸してくれた
1万クランを思い出しました。
家がいくらかわからないけれど
1万クランは膨大な金額だと
ラスタは思いました。
ロテシュ子爵は
庭付き邸宅が40万クラン
改装費に10万クラン、
計50万クランを要求しました。
ラスタは、聞いているだけで
手が震えるくらいの金額でした。
ラスタは
ロテシュ子爵一人で
どれだけ大きな邸宅に
住むつもりなのかと抗議しました。
ロテシュ子爵は、
孫を連れて来る、
ラスタの息子だ、
自分の息子にお金を使うのが
そんなにもったいないのかと
言いました。
口を震わせている
ラスタを見て
ロテシュ子爵は蛭のように
笑いました。
◇血相を変えたラスタ◇
ナビエはいくら仕事をしても
手に付きませんでした。
彼女は、ソビエシュの本音が
さっぱり理解できませんでした。
自分を愛していないのに
一体、どうしてなのか。
心臓がヒリヒリし
胸が苦しくなったので
ナビエは本宮から外へ出ました。
前の日に、ハインリが
急いで走って行ったことを思い出し
ナビエの足は自然と
南宮へ向かいました。
ところが歩いて行くと
ナビエから少し離れた回廊を
真っ青な顔をしたラスタが
走っていくのが見えました。
彼女はナビエがいることに
気付いていませんでした。
ラスタはエルギ公爵の部屋へ
入って行きました。
彼はナビエと目が合うと
にっこり笑い扉を閉めました。
自分には関係ないと
ナビエは思いました。
◇別れの挨拶◇
ナビエは
ハインリの部屋へ向かうと
彼が向こうから歩いてきました。
彼もナビエを訪ねるところだったと
言いました。
2人は並んで散策路を歩きました。
ハインリが自分のコートを
ナビエの肩にかけてくれました。
ハインリのコートからは
彼の香りがしました。
慣れ親しんだ
クイーンの香りでもありました。
2人はしばらく歩いていると
ハインリは、
西王国へ帰ることを
ナビエに告げました。
ナビエは、
すでに覚悟はしていたものの
聞くや否や
残念な気持ちになりました。
しかし、
彼の兄が生死の境目にいるのに
そんなそぶりは
見せられませんでした。
ずっと手紙のやり取りは
できますよねと
ハインリが尋ねると、ナビエは
もちろんだと答えました。
ハインリには
会えなくなるけれど
回数が減ったとしても、
クイーンが会いに来てくれるなら
残念な気持ちを
少し抑えようと思いました。
けれども、ハインリは
クイーンは忙しくなり
来ることが難しいので
代わりに青い鳥を送ると
言いました。
ナビエは、ハインリのことを
単にいい人だと思っていましたが
いつのまにか
ハインリとクイーンと
近くなっていました。
別れの挨拶のような
ハインリの言葉に
ナビエの足取りは重くなりました。
初めて経験する友達との別れは
とても息苦しいものでした。
◇未来の目的◇
ナビエと別れた後
ハインリは、その足で
ソビエシュの所へ行き
帰国する旨を伝えました。
彼は、
やっぱり大公の方かと
小さく呟きました。
ハインリは
ソビエシュの言葉を
聞いていない振りをしました。
実際のところ
自分に向かって言った言葉であっても
返事をしませんでした。
愛を証明するために
未来を台無しにすることは
できないと、
ハインリは思いました。
しばらくして、ソビエシュは
にっこり笑いながら
気を付けて帰るようにと
言いました。
その後、ハインリは
エルギ公爵を訪れると
先客がいました。ラスタでした。
彼女は、必ず返すと言って
部屋から走って行きました。
エルギ公爵が1人になると
ハインリは彼の所へ
歩いて行きました。
彼はエルギ公爵の部屋の中へ
入りました。
扉が閉まるや否や
彼はすぐに目的を述べました。
◇別れ◇
翌朝、起きた時
ハインリが夜明けに発ったことを
アルティナ卿から聞きました。
それと分かっていたら
前の日に、もう少し話をしたのにと
ナビエは思いました。
ナビエは本宮へ
仕事をしに行ったものの
気分が悪くなり
侍女たちと一緒にお昼を食べようと
西宮へ戻ってくると
彼女たちから、
トゥアニア公爵夫人が
首都を離れること
ランドレ子爵の事件のせいで
裁判官はトゥアニア公爵に
有利な判決を下したと聞きました。
ナビエは罪悪感を覚えました。
ランドレ子爵の命と
彼の情報を交換したおかげで
彼の命は救えたけれど
彼の情報は埋もれてしまい
トゥアニア公爵夫人は
裁判で不利になってしまいました。
ローラはナビエに
あまり悲しまないようにと言って
トゥアニア公爵夫人からの手紙を
ナビエに渡しました。
トゥアニア公爵夫人からの手紙には
ナビエへのお礼と
自分はランドレ子爵に
付いていくことと
後日、
ナビエに大変なことが起きたら
必ず恩返しをすると
書かれていました。
そして、ナビエは彼女の指示通り
手紙を読んだ後
ろうそくの火で燃やしました。
ハインリ、トゥアニア公爵夫人
ランドレ子爵の3人が
去ってしまい
ナビエは憂鬱になりました。
その夜、クイーンが窓ガラスを
叩くのではないかと
待っていましたが
やって来ませんでした。
窓を開けると
冷たい風が吹きつけ
鳥肌が立ちました。
「寒くないですか?」と
前日のハインリの言葉が
耳に聞こえてきました。
ナビエは「寒いです。」
と答えました。
ナビエは窓を開けっぱなしにして
布団に入りました。
翌朝も、
クイーンが訪れた形跡は
ありませんでした。
◇兄が帰ってくる◇
窓を開けて寝たせいで
ナビエは風邪を引いてしまいました。
鼻をグスグス言わせながら
謁見で、
国民から真摯な相談を受けたり
深刻な討論を
するわけにはいかないので
ナビエは仕事を休むことにしました。
宮医が処方した薬を飲み
ひと眠りすると
いつのまにか昼になっていました。
ナビエは習慣のように
閉まった窓を見て
思わず窓を開けてしまいました。
もしかしたら、寝ている間に
クイーンが来るかもしれないと
思いました。
けれども、イライザ伯爵夫人が
窓を閉めてしまいました。
イライザ伯爵夫人は
お湯に浸したタオルを
固く絞った後
ナビエの手と足を温めながら
ナビエの兄のコシャール卿が
首都へ帰ってくる話をしました。
コシャールは
ナビエにとっては良い兄だけれど
かっとなる性格で、
自分からは言いがかりを
つけないけれど
相手が言いがかりをつければ
その何十倍も相手に返し
何度も暴力事件を起こしていました。
ナビエが皇后になった時
コシャールが何か事件を起こし
彼女に火の粉が飛ぶのを
恐れた両親はコシャールを
地方へ追いやりました。
そんな兄が、
妊娠しているラスタを見て
おとなしくしているだろうかと
ナビエは思いました。
ハインリとナビエ様が
一緒に歩くシーン。
マンガでも、
ナビエ様の寂しい気持ちが痛いほど
伝わってきましたが
マンガでは描かれていない
ハインリのコートから
彼の香りがする。
残念なそぶりをしてはならないなど、
原作に書かれている
ナビエ様の感情を思い浮かべながら
マンガでのシーンを読むと
いっそう、
ナビエ様のせつない気持ちが
伝わって来て
涙が出てきてしまいました。
この時点で、ハインリは
愛のために未来を台無しにできないと
冷静に考えていますが、
ナビエ様のために、自分の代では、
東大帝国を手にすることを
諦めます。
それほどまでに、
ハインリのナビエ様への愛は
強いのですね。
ハインリは
ソビエシュの持っているものを
羨ましくて仕方がありませんでしたが
全て手に入れることができた。
これも、
すべてハインリの愛のおかげなのだと
思います。