10話 ラティルはカリセンに使節団を送るように指示しました。
◇反応が見たい◇
ラティルはブレター伯爵に
使節団の代表を任せることにしました。
ラティルとヒュアツィンテのことを
何も知らない官吏は
カリセンのヒュアツィンテ皇帝は
皇子の時に
タリウムに留学に来ていたし
彼が結婚した時は
ラティル皇帝が使節団の代表として
訪ねて行った。
最近では、タリウムからカリセンへ
側室を送ったので
ラティル皇帝の要求は
当然のことだと思いました。
けれども、官吏が退室した後
侍従長はラティルに
大丈夫かと尋ねました。
侍従長は先帝の時からの側近だったので
ラティルが
ヒュアツィンテの結婚について
どれだけ衝撃を受けたか、
彼が側室を送って欲しいと要請した時
どれほど怒ったか覚えていました。
ラティルは、
大丈夫ではなかったけれど
大丈夫だと思うと言って
笑いながら頷きました。
ヒュアツィンテも
自分の手で私の男になる人を
選びながら
私がどんな気持ちだったか
感じてみなければならない。
呆れるか?当惑するか?
心の中が丸見えだと嘲笑うか?
それとも
少しでも心が痛むだろうか。
目の前で
ヒュアツィンテの反応を
見たいけれど
それは無理だと思いました。
ラティルは話題を変えて
息子を皇配にしたがっていた
アトラクシー公爵は
息子を側室に送って来ると思うかと
侍従長に尋ねました。
彼は、アトラクシー公爵が
ラナムンを側室に送ってまで
彼を皇配にしようとは
思わないだろうし
幼い頃から
プライドが高かったラナムンは
父親が無理矢理側室に送ろうとしても
来ないだろうと答えました。
◇ラナムンのプライド◇
皇帝が側室を置くことにしたと
父親から聞いたラナムンは
侍従長の予想に反して
側室になると告げました。
アトラクシー公爵は驚きのあまり
自分の言ったことを
きちんと聞いていたかと
ラナムンに尋ねました。
彼は、息子の性格を知っているので
彼は絶対に側室にならないと
思いました。
けれども、
側室になるの?
という父親の質問に対し、
ラナムンは、はいと答えました。
物凄い発言をしたとは思えないほど
ラナムンは淡々として、
穏やかだったので
父親の心臓がドキドキしていました。
ラティルとトゥーラが争っていた時
アトラクシー公爵は
ラナムンが、将来皇配になると
豪語しました。
それなので、
ラティルが側室を置くと聞いた時
彼の困惑は計り知れませんでした。
自分の計画はダメになったとしても
プライドが天を突くほど高いラナムンに
どのように伝えたら良いのか
アトラクシー公爵は
途方に暮れていました。
息子に、この話をしたら、
数か月間は家の中が凍り付くと
彼は考えていました。
それでも、
何も言わないわけにはいかなかったので
恥ずかしい気持ちで話をしたら
ラナムンはあっさり側室になると
返事をしたので
アトラクシー公爵は当惑しました。
彼は、ラナムンが社交界に
全く関心がないので
側室が何なのか知らないのではないかと
思いました。
けれども、ラナムンは
躊躇うことなく
側室制度について説明しました。
息子の教科書通りの答えに
アトラクシー公爵は頷きました。
そして、ラナムンが
皇后とは異なり
公式的な業務はなく
皇帝に楽しさと快楽を与えるのが
側室の最優先の役割。
特に夜の仕事が
うまくないといけない。
私はまだ経験がないけれど
習得能力が早いから
一つ学べば十を悟る・・・
と言っている途中で
アトラクシー公爵は
息子の口を塞ぎました。
息子は成人しているけれど
子供なので
彼の口から、そのようなことを
聞きたくありませんでした。
ラナムンは、そっけなく
父親の手を退かしました。
これが現実だと言うラナムンに
それでも行くのかと
アトラクシー公爵は尋ねました。
ラナムンは、はいと答えました。
アトラクシー公爵の心配は
当たっていました。
ラナムンは父親の想像以上に
プライドが傷つけられていました。
そもそも、彼に
皇配になりたいという気持ちは
ありませんでした。
ラナムンにとって皇配の座は
望まないけれど
自分がやってあげる程度の位置でした。
けれども、
他の人に譲る気はありませんでした。
欲しがっていないのに
自分が候補者として割り当てられた席を
他者が占めるのが不快でした。
自分より劣っている人に
皇配という理由だけで
腰を曲げて
挨拶したくありませんでした。
皇配を選ばない?
側室を置く?
側室の中から皇配を選ぶ?
皇帝はバカではないので
誰が皇配の有力候補だったか
知っているはずでした。
それなのに自分を
皇配に選ばなかったということは
自分を
皇配にしたくないという意見に
他なりませんでした。
ラナムンは、それを
認められませんでした。
ラナムンは側室になって
愛嬌を振りまくと言いました。
息子の型破りな言葉に
アトラクシー公爵は
腰を抜かしました。
そして、ラナムンは
アトラクシー公爵が
廃棄しようと思っていた
側室関連の書類を奪い
躊躇うことなくサインをしました。
1年も経たないうちに
皇帝は
自分を皇配に上げるはずだから
父親にも徹底的に準備してもらいたいと
ラナムンは告げました。
アトラクシー公爵は
驚いている場合ではないと
思いました。
皇配の座を巡る側室間の戦いは
おそらく熾烈で恐ろしいと
思ったので
多くのことを準備する必要があると
思いました。
公爵は緊張した面持ちで
何を準備してあげようか?
毒?催淫剤?人の買収?
使用人のふりをして
連れて行く護衛?
何でも私が準備してあげる。
と言いました。
ラナムンは頷いた後
夜の技術について著わした書籍を
頼みました。
息子よ。
どこまで準備するのか!
公爵は心の中で叫びました。
◇ラティルの手紙◇
ブレター伯爵は
なぜ自分が使節団の代表になったのか
不思議に思っていました。
使節として行き来した経歴はあるけれど
自分より経験豊かな人は
たくさんいました。
伯爵はラティルと
それほど親しい間柄でも
ありませんでした。
ラティルとトゥーラが
皇帝の座を巡って争った時
彼は、中立でしたが
あえて、どちらかを選ぶとしたら
おそらくトゥーラを選びました。
そのように、
よそよそしい関係だったので
しばらく静かに
過ごそうと思っていたのに
ラティルに使節を命じられました。
いくら考えもおかしいので
他に何か意図があるのではと
ブレター伯爵は考えました。
けれども随行員は
最初の使節団の代表として
ブレター伯爵を送ったのは
良い兆候だと言いました。
随行員は
良い言葉を繰り返し言ってくれたので
ブレター伯爵は
少し安心しました。
しかし、カリセンに到着した
ブレター伯爵は、
皇帝に側室の話を持ち出すや否や
ラティルが
自分を使節団の代表にした
理由がわかりました。
ヒュアツィンテ皇帝は、
顔いっぱいに笑みを浮かべながら
喜んで迎え入れてくれました。
ところが、ブレター伯爵が
使節団の目的を話すや否や
皇帝から
眩しいほどの笑みが
すっかり消え
彼の顔は白くなり
歯を食いしばりました。
ヒュアツィンテは
誰が、誰に、誰をよこせと?
と、一言、一言、言葉を区切って
質問しましたが
最後は玉座を抜いて
投げてしまうほどの勢いでした。
ヒュアツィンテは
ラトラシル皇帝が
自分のハーレムに入れる男を
私に選んでくれと
あなたを遣わしたのか?
と尋ねました。
ブレター伯爵は
ラティル皇帝とヒュアツィンテ皇帝が
悪い方に、
私的な親交があることに
気がつきました。
ラティル皇帝は、
ヒュアツィンテ皇帝が
暴れることを想定して
自分を使節団の代表にしたのは
少しひどいと思い
ブレター伯爵はべそをかきました。
心の中で
トゥーラ皇子の方が
皇位にふさわしいと思ったのは
事実だけれど
それを表に出して
歩き回ったりしていませんでした。
しかし、ブレター伯爵は
悔しがってばかりいる場合では
ありませんでした。
領地を諦めて移住するのでなければ
しっかり任務を遂行しなければと
思いました。
ブレター伯爵は
タリウムの皇帝陛下は
カリセンに無限の好意を
持っていらっしゃる。
2年前には
タリウムからカリセンへ
側室を送った。
今回、カリセンからタリウムへ
側室を送ってくれれば
両国の縁が固く結ばれ
もっと仲が深まるとおっしゃいました。
と、できるだけ静かに慎重に話して、
ラティルからの親書を
ヒュアツィンテへ渡しました。
ヒュアツィンテの後ろに立っていた
首席秘書が手紙を受け取り
彼に渡しました。
ブレター伯爵は
両手をしっかり握りしめ
手紙を隅々まで見ている
ヒュアツィンテを見つめました。
この手紙を持って行った人を殺せと
手紙の中に書かれていないようにと
願っていました。
手紙を読んでいる間、
無表情だったヒュアツィンテは
しばらくすると
手紙をゆっくりと手放しました。
一体、手紙に何が書かれていたのか。
その顔は、今すぐにでも
ブレター伯爵を引き裂いて
殺してやりたいと
言っているようでした。
私のハーレムに入れる男が必要なの。
私の好みを知っているでしょう?
それに合わせて送ってね。
ハーレムに入れるから
頭が良い必要はないけれど
対話が可能な水準でいて欲しい。
茶色の髪と灰色の瞳の組み合わせは
避けてください。
あなたのことを思い出して
気分が悪いから。
アトラクシー公爵は
ラナムンのプライドが高いことを
知っていますが
彼の心の中を知ったら
もっと驚愕するのではないかと
思います。
プライドが高すぎるラナムンですが
これで皇配になれなかったら
どうなるのでしょうか?
気になります。