86話 麗奈は璃香に復讐を宣言しました。
頭が痛いと言いながら、
不機嫌な顔で
恵美は自宅に戻って来ましたが
家の中の雰囲気が、
騒がしくなっていました。
すると、
恵美を見た使用人の一人は、
こんなに急に
出て行けと言われたら・・と
焦った様子で恵美に訴えました。
そこへ、
久しぶりだと言って、
一人の女性が腕組みをしながら
階段を降りて来ました。
なぜ、彼女がここにいるのかと
驚く恵美。
女性は、
恵美が泥棒の濡れ衣を着せて
追い出した自分が、
また戻って来て驚いたかと
言いました。
彼女は、
会長が留守をしている間に、
無理矢理、恵美から
追い出されていました。
怒った恵美は、
誰がこの人を家に入れたのかと
叫ぶと、
「私が呼んだ。」と
浅井を従えた会長が
返事をしました。
平然と会長に挨拶する女性と
焦る恵美。
会長は、眉間にしわを寄せ、
恵美を睨みつけながら、
帰って来たのか。
恵美は、その女性(中本)と
挨拶を済ませたようだと
指摘しました。
恵美は跪いて、
一度だけ許して欲しい。
今まで、自分は
会社と家のために何でもした。
それは、会長も
分かっているのではないかと
訴えましたが、彼は、
恵美と恵美の娘のためだった。
真っ赤な嘘をついて、
自分たちを騙していたと
恵美を非難し、
顔も見たくないので、
今すぐ、この家から出て行けと
怒鳴りました。
恵美は、体を震わせながら、
結局、自分も、
自分の両親のように
追い出すのかと尋ねました。
会長は、
恵美の両親は、
常習的に盗みを働いたので
追い出した。
それでも恵美を追い出さなかったのは
長い間働いてくれたから
情けをかけたと言いました。
しかし、恵美は、
あれは濡れ衣だったと訴えました。
それに対して会長は、
濡れ衣だなんて勘違いをするな。
濡れ衣は、恵美が中本にかぶせたと
怒鳴りました。
恵美は震えながら、
会長に懇願しましたが、
浅井は恵美に
会長は休まなければならないので
話を止めるよう告げました。
恵美は、
死んだ浅井穣の息子のせいだ。
あの時、
一緒に死ぬべきだったと
歯ぎしりしました。
会長は、
恵美がこの家に手ぶらで来たように
今すぐ、手ぶらで出て行けと
怒鳴りました。
恵美は、立ち上がりながら、
このまま引き下がったりしない。
また会おうと、
捨て台詞を吐きました。
そして、家を出て行こうとした時
玄関で、麗奈と鉢合わせしました。
彼女はニッコリ笑いながら、
もう帰るのかと尋ね、
自分のプレゼントは、
気に入ってもらえたか。
璃香は、かなり気に入ったようだと
告げました。
恵美は麗奈の胸倉をつかみ、
このまま無事でいられると
思うのかと、
顔に青筋を立てて、
怒りをぶつけました。
しかし、麗奈はその手を払い退け
2人の反応が、
これ程までに同じなのを見ると
璃香が恵美の娘なのは、
確かなようだ。
恵美は自分に、
戻って来る所がないと言ったけれど
その言葉を、そのまま返す。
恵美に帰る所はないと、
ニヤリと笑いながら言いました。
家に帰らないのかと尋ねる璃香。
しばらく、あの家には
帰るなと璃香に告げる恵美。
自分の物は、全て家にあるのに、
どうしてここにいなければ
ならないのかと尋ねる璃香。
必要な物は、全て買ってあげるので
ここにいてと命令する恵美。
璃香は、
そんな問題ではない。
今日、会社で会った
あの男は誰なのか。
自分の実の父親だと
言っていたけれど、
それは本当なのかと尋ねました。
カッとなった恵美は、
璃香には関係のないこと。
璃香が気にすることではないと
怒鳴りました。
璃香は、
気にならないはずがない。
本当に、父親の実の娘は
自分ではなく麗奈なのかと
尋ねました。
恵美は顔色を変え、
なぜ璃香がそれを知っているのか
尋ねました。
恵美の言葉と態度で、
璃香は、それが真実だと気付き、
母親に「違うと言って」と
訴えました。
恵美は、弁解しようとしましたが
璃香は、
どうして、そんな恐ろしいことを
するのかと恵美を責めました。
恵美は、
全て璃香のためだった。
仕方がなかったと言い訳しましたが
璃香は、
そんなことを言わないで欲しい。
どうして、それが自分のためなのか。
結局、このように追い出された。
もう終わりだと、
恵美を非難しました。
しかし、彼女は、
もう終わりだという言葉を否定し、
泣き言を言うな。
璃香は、あの男を
早く何とかするように。
後は自分がやると言いました。
しかし、璃香は、
この状況で、
あの男を何とかするなんて
正気なのかと聞きました。
恵美は、
自分のことは何とでも言えばいい。
麗奈を受け入れたのに、
璃香だからダメだということはないと
言いました。
璃香は、涙を浮かべながら、
恵美がやったように、
自分も妊娠でもして、
あの男を捕まえろと言うのかと
聞きました。
それを聞いた恵美は、
璃香の頬を叩きました。
動揺する璃香。
娘を叩いたことで、
恵美も動揺していました。
恵美は璃香を抱き締めて謝り、
自分は今、とても辛くて、
頭がどうかなっているみたいだと
言い訳をしました。
しかし、璃香は恵美を払い退け、
涙を流しながら、
父親が実の父親ではない事実を知った
今の自分の気持ちが分かるか。
せめて母親だけでも、
慰めて欲しいと訴えました。
恵美は、おろおろしながら
璃香の手を握り、
落ち着くように、自分が悪かった、
何とかすると言いましたが、
璃香は恵美の手を払い退け、
彼女は実の母親なのかと
問い詰めました。
恵美は、母親に向かって
そんなことを言うのか。
自分が惨めな姿を見たいのかと
璃香を非難しました。
璃香に呼び出された碧人は
ベンチに座り込んでいる璃香を見て
どうして、ここに来たのか。
何かあったのかと尋ねました。
すると、璃香は、
どうして碧人に
こんなことができるのかと言って
会話を録音したデータを
麗奈に渡したことを非難しました。
碧人は、
璃香には申し訳ないけれど、
自分も仕方がなかったと謝りました。
呆れる璃香。
そして、碧人は、
本当に申し訳ないけれど、
自分に連絡をして呼び出すのは
今日で最後にして欲しいと
躊躇いながら頼みました。
驚く璃香。
碧人は、
自分の家族も璃香の家から出たので
自分たちが、これ以上絡んでも
いいことはないと告げました。
璃香は怒った顔で、
碧人は自分のことが好きなのに、
どうして、
こんなことができるのかと
問い詰めました。
碧人は、
璃香のことが好きだったけれど、
もう止めたい。
どうせ璃香の目には、
自分が映っていない。
もう、これ以上、璃香に対して
感情が残っていない。
ボロボロになった片思いも
うんざりする希望も、未練も全て、
何も残っていないと
返事をしました。
璃香は、今、碧人のせいで
自分がどれだけ困っているのか。
今、それを自分に言うのかと
彼を責め、
どうして、
自分にこんなことができるのかと
碧人を握り拳で叩きました。
碧人は璃香の手首をつかみながら
落ちつくようにと話し、
本当にどうしたのか。
一体、どうして、
こんなになってしまったのか。
自分の愛した璃香は、
こんな人ではなかったと言うと、
璃香は碧人に
ふざけるなと叫び、
他の人たち全てが
自分に背を向けても、
碧人だけは絶対にダメだと
必死で訴えました。
その璃香の髪を、
後ろから由香がむんずとつかみ、
頭のおかしい女は、
どこまで乱暴なのかと
非難しました。
ようやく、恵美は
堤家から追い出されましたが、
彼女のいる場所は
それなりに豪華なので、
何らかの悪辣な方法で隠れ資産を築き
璃香にも内緒の隠れ家を
持っていたのかもしれないと
思いました。
この期に及んで、まだ璃香に
雅紀を何とかしろと、
けしかけるなんて
どれだけ、恵美は
金銭欲と権力欲に塗れているのか。
自分の両親が
追い出されたことを恨み、
堤家に復讐するついでに、
何もかも、
手に入れようとしていたとしても、
それは逆恨みというもの。
もっとも、
そんな女に情けをかけた挙句、
騙された麗奈の祖父も父親も
情けないと思います。
そういえば、父親は
倒れてからどうなったのでしょうか。
さすがに家まで来たら、
祖父も息子が床に臥していることを
知るでしょうけれど・・・
突然現われた女性について、
以前、どこかに描かれていたか
考えましたが、
思い出せませんでした。