自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

問題な王子様 ネタバレ 原作 82話 あらすじ マンガ 72、73話 雪だるまの思い出

 

82話 仲直りしたエルナとビョルンに、平和な日常が戻って来ました。

本格的な春が訪れると、

エルナは毎朝、庭へ散歩に出かけ、

ビョルンが目を覚ます頃には、

すでにベッドを離れている日が

ほとんどでした。

それは、ビョルンにとっては

あまり喜ばしいことでは

ありませんでした。

 

ビョルンは、

寝室のバルコニーの手すりに

寄りかかったまま、

大噴水と川をつなぐ水路沿いを

歩いているエルナを見守りました。

今日も影のように付いて回る、

リサと一緒でした。

 

帽子を飾っている造花は

昨日とは少し違うように

見えました。

毎朝、花を取り替えるという

妻のささやかで真面目な装いが

何となく可愛く思えて、

ビョルンはクスッと笑いました。

 

部屋の中へ戻って鐘を鳴らすと、

新聞とモーニングティーを持った

執事のグレッグが入って来ました。

そして、新聞を読むビョルンの

そばに立ったグレッグは、

銀行から来たお客さんが

書斎で待っていると伝えました。

 

ビョルンは、

エルナが戻り次第、行くと伝えてと

指示しました。

 

グレッグは、

馬車は何時頃出発するよう

待機させればいいかと尋ねると

ビョルンは、

11時頃がいいと答えました。

 

今日の新聞には、

ラルスの外務大臣の言葉を

引用した、レチェンとラルスの

強い同盟関係についての

かなり公信力のある記事が

掲載されていました。

 

ラルスの国王は、

娘をレチェンの王子妃の座に

戻すことに失敗し、

相当プライドが傷ついたはずでしたが

レチェンとの関係を

以前と変わらず維持していました。

ビョルンは、

分けて食べるパイが残っている限り

いつまでも、すっきりとさっぱりと

維持されるような関係が好きでした。

 

執事が下がると、

ビョルンは再びバルコニーに向かい、

葉巻を吸ったまま

石造りの欄干に寄りかかりました。

 

ビョルンは、

大噴水のそばの階段を上っている

妻を、目を細めて見ました。

柔らかい風が吹くたびに

白いドレスが密着し、

美しい体の線を露わにしました。

 

ビョルンは、あの小さな女一人が、

雄大な噴水台と金色に輝く彫像と

その下に広がる春の庭園を

圧倒していると、

とんでもないことを考えた瞬間、

エルナは顔を上げました。

涼しげに流れる水の音の間から、

「お目覚めになりましたか?」と

エルナの声が響き渡りました。

眩しい朝の日差しのように

笑う妻を眺めながら、ビョルンは、

ゆっくりと煙を吐きました。

些細な騒ぎは消え、

再び彼の管轄下に置かれた世界は

平穏でした。

その事実一つで、

さらに美しくなった春を

楽しみながら、ビョルンは、

ゆっくりと微笑みました。

手を振ったエルナは

急いで階段を上り始めました。

ヒラヒラする花とリボンを

鑑賞していたビョルンは、

葉巻を握った手に

無意識に力を入れました。

彼の胸の奥深くに、

静かに、限りなく、

暖かい雪が降っているような

感じがしました。

 

軽く笑って、

そのおかしな考えを

打ち消している間に、

エレナは階段の端に到着しました。

周りに見る目がないことを確認した

たおやかな淑女は、寝室まで来る途中で

フィツ夫人と会わないように

祈りながら、

早足で邸宅に入って来ました。

ビョルンは、葉巻を消しました。

浮かれて走って来ては

煙のせいで咳込むのに、

それでも未練がましく

自分のそばにいるエルナの姿が

ふと、思い浮かんだからでした。

 

後になってビョルンは、

自分の行動に気づきましたが

あまり気にしませんでした。

神経に障る咳の音よりは、

少しのもの足りなさの方を

我慢できるからでした。

 

エルナは彼を呼びながら

扉を叩きましたが、

彼が返事をする前に

扉を開けて入って来ました。

彼女の明るい顔を見ると、

フィツ夫人を、うまく避けて

走って来たようでした。

エルナは一気に寝室を横切り

ビョルンの前に立ちました。

 

ビョルンは、

手でエルナの顔を包み込みながら

彼女は勤勉だと言いました。

エルナは、

体力をつける必要があると思ったからと

返事をしました。

ビョルンが「体力?」と聞き返すと、

エルナは、いつも自分が先に疲れて

寝てしまうのが、少し残念だからと

思いがけない理由を

平然と並べ立てました。

 

慎ましやかなようで

かましい妻を見下ろす

ビョルンの唇の先が曲がりました。

 

ビョルンは、

自分の妃は、

何事にもよく頑張っているので

何だか肩が重くなりそうだ。

自分も努力しなければ

ならないのだろうかと尋ねると、

エルナは、

全くその必要はないと

真顔で答えましたが、

エルナの唇は、相変わらず

笑を浮かべていました。

軽く笑ったビョルンは、

会わせたい人がいるので

準備をしてと言いました。

空っぽのクッキー缶の代わりに

エルナが受け取ったのは通帳でした。

エルナは、微かにしかめっ面をして

手に持った通帳を見ました。

確かに自分の名前と

預金したお金の金額が

書かれていましたが、

これがお金の代わりだという事実が

全く信じられませんでした。

もちろん大都市の人々は

銀行にお金を預ける方式を

好むということくらいは

すでに知っていましたが、

書斎で銀行の職員に向き合うまで、

自分がその仲間入りをするとは

夢にも思っていませんでした。

 

エルナの預金口座を

作ってくれた職員は、

クッキー缶からお金を出すと

立ち上がりました。

エルナは残念そうに

彼のカバンを見ました。

わずかな金額だけれど、

見ているだけで

心が満たされた財産でした。

自分なりに最善を尽くして生きてきた

過去の象徴であり、

ビョルンとの縁を作ってくれた

お金なので、

小銭一枚でも使うのがもったいなくて

大切にしてきました。

そのお金がついに

書斎の扉の向こうに姿を消すと、

エルナは我慢していた

ため息をつきました。

 

ビョルンは、

新しいクッキー缶が

気に入らないのかと

いけずうずうしく質問しました。

手に持っている通帳と夫を

交互に見ていたエルナは、

眉を顰めて頷くと、

自分は昔の方式の方が好きなので

元に戻すことはできないだろうかと

尋ねました。

 

ビョルンは、

そのくらいで、その考えは手放し、

文明社会の一員になるよう

エルナに勧めましたが、彼女は、

通帳は、

自分のお金とは思えないと

言い返しました。

ビョルンは、

そこにエルナの名前が書いてあると

言いましたが、エルナは、

銀行が自分のお金を勝手に使って

返さなかったらどうするのかと

心配しました。

強い不信感を露わにした

エルナの目を見て、

ビョルンは唖然としました。

 

ビョルンは、

お金を踏み倒したりしないので

心配しないでと返事をしました。

しかし、エルナは、

もし銀行が倒産したらどうするのか。

永遠にお金を取り戻せない人も

いるのではないかと、

さらに深刻な表情で訴えました。

破産を心配するその銀行のオーナーを

目の前にしているという事実は

すっかり忘れているような顔でした。

 

ビョルンは、

素晴らしい。

それだけ疑い深ければ、

どこかで、簡単に

詐欺に遭ったりしないと

エルナを称賛しました。

 

しかし、エルナは、

自分はその単語が本当に嫌いだから

そんなこと言わないで欲しいと

頼みました。

ビョルンは、

さらに意地悪な目つきで、

確かに「詐欺」という言葉は

痛恨の単語だろうと指摘しました。

 

エルナはビョルンに

抗議しましたが、彼は、

銀行が倒産しても、

エルナのお金は必ず返すので、

もう心配しないようにと言いました。

 

泥棒に続いて詐欺師扱い。

並大抵のプライドなら、

傷つかないだろうけれど、

ビョルンは喜んで

エルナを理解することにしました。

和解の意味で準備した贈り物なので、

若干の寛容さを

発揮できない理由はありませんでした。

 

ビョルンは、

新しいクッキー缶と仲良くなるように。

それより、ずっといいだろうと言うと

退屈そうな目で、

自分のライバルである古いブリキ缶を

見つめました。

旧時代の遺物を飾っている

雪だるまは、

今日も無邪気に笑っていました。

 

ビョルンは、

古いクッキー缶は、

エルナのお金を守るだけだけれど

新しいクッキー缶は

守ったお金を増やしてくれると言うと

エルナは驚いて、目を丸くしました。

 

どうやらエルナは

利子が何なのか分からないようで、

彼女は、本当にじっとしているだけで

お金が増えるのかと、

驚きと疑いの入り混じった目で

彼を見つめました。

 

一体、どんな田舎なら、

このような野蛮な淑女を

育てることができるのかと、

ビョルンは、

真剣に妻の故郷のことが

気になり始めました。

 

ビョルンは

穏やかなため息をつくと

淡々とした口調で

預金と利子について説明しました。

あまりにも馬鹿馬鹿しいので、

かえって心が落ち着きました。

何も知らないけれど、

何事にも熱心な彼の妻は

目を輝かせながら、

耳を傾けていました。

 

やがて利子の概念を

理解するようになると、

エルナは、

非常に興奮した表情をしたので、

ビョルンは、ベッドの横に、

通帳を掛けておかなければならないと

思うほどでした。

 

エルナはビョルンにお礼を言い、

大事にすると告げると、

いつにも増して

明るい笑みを浮かべながら、

通帳をクッキー缶の中に入れました。

相変わらず、

それを捨てる気はなさそうでした。

 

ビョルンは、

金庫を使え。

いったい、いつまで

その古い物を抱きかかえて

暮らすつもりなのかと尋ねました。

 

エルナは、少し古いけれど、

大切な物なので捨てたくない。

祖父からのプレゼントだからと

照れくさそうに返事をすると、

クッキー缶を膝の上に

大切に置きました。

それから、エルナは、

このクッキー缶は、

母が亡くなった後、

初めて迎えた8歳の誕生日に

自分もこのように笑って欲しいと

言いながら、

祖父が買ってくれたものだ。

そうすると約束した記念に、

これと同じ形の雪だるまも

一緒に作ったと話すと、

歪んだブリキの蓋をなでて、

彼女の手の下にある

雪だるまのように笑いました。

 

そして、エルナは、

自分にとって、

とても大切な思い出だ。

雪だるまは溶けて、なくなったし、

祖父も遠くへ旅立ったけれど、

これは残っているので、

できるだけ長くそばに

置いておきたいと言いました。

 

心の痛む思い出を語る瞬間にも、

エルナは笑顔のままでした。

貧乏たらしい未練ではあるけれど、

ビョルンは、どうしても

それを捨てるようにと

命じることができなくて、

頷きました。

8歳という言葉は、

かなり長い余韻を残して

彼の耳元に留まりました。

 

ハルディ子爵が捨てた前妻が

早くに世を去ったことは

すでに知っていたけれど、

母親を失ったエルナの年齢を聞くと、

その事実を改めて実感しました。

5歳で父親に見捨てられ、

8歳になる前に母親を亡くして、

貧しい母の実家で育った女性。

なかなか数奇な人生だと思いました。

それを特に意識できなかったのは、

この女性がいつも

笑っているからだと思いました。

 

時計を見ていたエルナは

そろそろ出かける時間ではないか。

銀行で理事たちに会うと

言っていたではないかと、

慌ててビョルンに尋ねました。

 

ビョルンは、

このまま辞めようと思うと言うと、

どうでもいいといった様子で

椅子のクッションにもたれました。

 

エルナは、

それはどういうことかと尋ねると、

ビョルンは、

じっとしていても、

エルナが一生懸命花を作って

食べさせてくれそうだからと

答えました。

 

しかし、エルナは首を横に振り、

ダメだと、きっぱり言って、

ソファーから立ち上がると、

自分が、

たくさんの利子をもらえるように

早く行って一生懸命働いてと

促しました。

 

純真無垢な顔で

野望を露わにする妻を

見ていたビョルンは、

声を上げて笑ってしまいました。

もう行きなさいと、

利子に目がくらんだ妻の

催促に耐えられず、ビョルンは、

ついに立ち上がりました。

 

いつものようにエルナは

馬車が待機している

邸宅の玄関前まで

彼を見送りました。

 

閉ざされた馬車の扉の向こうで

純朴で貪欲な子鹿が

「行ってらっしゃい」と言って

手を振ってくれました。

ビョルンは、

今後、いやらしいことをさせる時は

利子のことを囁けばいいと思った途端

馬車が動き出しました。

 

ビョルンは車窓の外に見える

咲き乱れる春の花々が

まるでエルナのようだと思い、

くすくす笑いました。

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エルナと祖父の

クッキー缶にまつわる話。

こういう話に私は弱いので

涙が出て来ました。

ビョルンも、

エルナがクッキー缶を

捨てられない理由について

理解を示してくれて良かったです。

 

何となくビョルンは、

心の中に壁を作っていて

その中に人を

立ち入らせないようにしている

感じがするのですが、

エルナが、少しずつ、

その壁を壊して、

ビョルンの心を溶かし、

彼の心の中へ

入り込んで行っているような

気がします。

 

ところで、エルナの住んでいた

バフォードにだって

銀行くらいあったかも

しれませんが、もしかしたら

バーデン家には

銀行に預金するほど、お金が

なかったのかもしれないと

思いました。

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