129話 偽親に慰めてもらおうと思っていたのに、2人に妹を探しているかと聞かれたラスタでしたが・・・
◇偽両親の無心◇
自分たちは偽の親子なのに
イスクア子爵夫妻が
本心から
自分の妹を探しているのかと
聞かれ、
ラスタは、2人が
頭がおかしくなったのではないかと
思いました。
イスクア子爵夫妻は
大変明るく愉快な人たちで
欲がありませんでした。
そんな2人が
幼い子供たちと生き別れになり
ずっと探し回っていたことを
貴族たちに話すことで
彼らの同情を買っていました。
2人が妹の話をする度に
ラスタは
気が狂いそうになりましたが
彼女は、妹を探すと
約束していました。
ラスタは、妹を探しているので
すぐに行方が分かると思うと
答えました。
しかし、用事はそれで終わらず
夫妻は
ラスタ1人で広い国内を、
どうやって妹を探すのか尋ねました。
2人は、
自分たちも妹を探したいと言って
ラスタにお金を無心しました。
2人は、自分の子供を
見つけるためなら
自分たちのお金だけでなく
人のお金も使い果たすような
人たちでした。
夫妻がラスタの偽親を引き受けたのは、実の娘を探すためにお金が欲しかったからなのでしょうね。
ラスタが返事をしないと
自分の妹を探すのが嫌なのかと
言われました。
ラスタ自身が劇的な家族との再会で
たくさん得をしたので
妹を探すためのお金を惜しむことで
薄情だと言われたくありませんでした。
ラスタは
ラント男爵に話をして
お金をもらうように
夫妻に告げました。
◇マレーニの家系◇
ナビエは副官選びと
兄の出征準備で忙しい数日間を
過ごした後、ローズから、
マレーニの家系について
報告を受けました。
マレーニの父:アマレス侯爵
アマレス侯爵夫人の甥で
リバティ公爵の3男:ウィヤン
リバティ公爵はクリスタ側の人間
アマレス侯爵は、
ウィヤンを養子にする。
彼はアマレス侯爵の
血のつながった甥では
ないけれども
アマレス侯爵家とリバティ公爵家は
以前にも姻戚関係を
結んだことがあるので
元を正せば、ウィヤンも
アマレス侯爵と親戚関係にある。
ウィヤンは
リバティ公爵家の長男より賢いので、
彼は、アマレス侯爵家の
跡継ぎにしたいと思い
早い時期にウィヤンを
養子に出した。
アマレス侯爵夫人も、夫の甥より
自分の甥が跡継ぎになる方が良いと思い
ウィヤンを養子にすることを
承諾した。
アマレス侯爵夫妻は
マレーニが爵位を
継ぎたがっているのは
知っているけれども
幼いころからウィヤンが鋭敏だと
知られていたため
マレーニを信頼していない。
その代わり、爵位はウィヤンに
財産のほとんどは
マレーニがもらうことになっている。
財産のほとんどをマレーニがもらうのに
義理の弟が唯一もらうことになる
爵位まで奪うのかと
家族に思われている。
マレーニは、
全部自分がもらえるはずだったのに
義弟に爵位を奪われたと思っている。
けれども、周りの人たちは、
義弟に一つもあげたがらない
利己的な姉と思われている。
アマレス侯爵はマレーニに
財産を渡すと言っているので
彼は薄情というより
公正で冷静に
家門のための決断をしていると
考えられている。
まずは、マレーニの方が
ウィヤンより
はるかに優れていることを
示す必要があると
ナビエは思いました。
アマレス侯爵は、
かつて国主導の事業に参加して
大きな利益を上げたことがありました。
そして、彼の家門が運営している
いくつかの企業がありました。
ナビエは、その点を念頭に置き
ウィヤンとマレーニを
執務室に呼び出し
あらかじめ用意していた同じ書類を
2人に渡しました。
ナビエは、
ルイフトとの大陸間国家貿易を
進めることにしたので
どの品目を取引すれば
時間と距離の短所を
カバーできるか、
調べるように2人に命じました。
マレーニは
口をポカンと開け
ウィヤンは顔をしかめましたが、
ナビエは、
アマレス侯爵家は、優れた商才で
いくつかの国家主導の事業で
成功を収めたと聞いている。
侯爵家の後継者である彼らも
優れた手腕を持っているだろうから
その能力を自分に見せて欲しいと
ナビエは言いました。
女性として可愛げのないところはあるかもしれませんが、皇后としては完璧だと思います。
◇ワシと子犬◇
その日の夕方、夕食の時に
ナビエはハインリに
昼間の出来事を伝えました。
初心者の2人に、
このような仕事を任せても
大丈夫なのかという
ハインリの質問に対し
ナビエは、当然、任せないと
答えました。
ナビエは東大帝国の
前皇后の下で
10年以上勉強した自分も
初めて実務責任者になった時は
慌てたので
初心者の2人に
大事なことは任せないと
言おうとしましたが
ハインリに、
ナビエが東大帝国にいた時のことを
思い出させたくなかったので
やめました。
ナビエは
別にきちんと調査をし
結果が出たら
どちらの案が役に立ち
誰が役に立つかわかると
ナビエは答えました。
どちらも役に立たなかったら
どうするのかという
ハインリの質問に対し、ナビエは
どちらが爵位を継いでも
侯爵家に未来はないから
マレーニを支持すると答えました。
その後も、
ハインリはナビエに
質問をしましたが
最初は
真剣に話を聞いてくれていたのに
今はふざけた顔をしていました。
ハインリは、ナビエに
難しい質問をして
面白がっているようでした。
ナビエは冗談のつもりで
わざとナイフで大きな音を立てて
冷淡に答えましたが
自分の冗談を
理解してくれる人は少ないので
ハインリが、自分のことを
本当に冷淡な人だと思ったら
どうしようと思いました。
ナイフの音を立てたのは怒っていたのではなく、冗談だったのですね・・・確かに、理解してもらうのは難しいかも。
ハインリは
ナビエがナイフのように
振る舞う度に興奮すると言いました。
ハインリは、ナビエの冗談を
理解していないようでしたが
顔を赤くし、意味深な目つきで
片手で頬杖をついて
ナビエを見つめていました。
ナビエは、気まずい顔をしながら
ハインリの好みは少し変だと
言いました。
先ほどまでは、
いたずらっぽく
意地悪な表情をしていたのに
今は目つきが暗くて
いやらしくなっていました。
一体、ハインリは
頭の中で何を考えているのか
どの時点で興奮したのか
ナビエは分かりませんでした。
ハインリは、
声だけいたずらっぽくして
自分の好みは何だと思うかと
ナビエに尋ねました。
ハインリは、
たまに荒っぽくされるのが
好きなようだと
ナビエは言いました。
彼は、ナビエが
冷たく答えたり
鋭く答えたりすると
顔を赤くして喜び、初夜の時も、
ナビエがハインリの手を押さえたら
興奮したからでした。
ハインリは
荒っぽくされるのも
荒っぽくするのも好きだと答えたので
ナビエはむせてしまいました。
咳き込むナビエの
目元をぬぐいながら
ハインリはナビエに
「きれい」と言いました。
そして、ナビエの耳元の髪を
後ろにかき上げ、
自信満々の鷲のように
こうされるのは嫌かと尋ねました。
初夜の時に
恥ずかしいと震えていた鷲は
どこへ行ったのかと
ナビエは思いました。
ナビエが返事をしないと
今度は大きな子犬のように
同じ質問をしたので
ナビエは、嫌ではないと答えると
ハインリは
再び自信満々の鷲になり
ナビエの頬と耳に
キスをし始めました。
ナビエの態度で
鷲になったり、
子犬になったりするハインリに
ナビエは騙されているような
気がしました。
まさか、わざと
弱気なふりをしているのではないかと
ナビエは疑いました。
◇エルギ公爵の正体◇
ソビエシュは
エルギ公爵について
カルル侯爵から報告を
受けていました。
1つ目
危険な海賊に関する噂が多いこと。
その全ての噂は実体がないので
本当なのか、デマなのかは
わからない。
2つ目
社交界で何度も
痴情事件を起こしている。
特に大きな事件が起こった時は
いつもエルギ公爵が
被害を受けたことになり
相手側が大きな代価を払っている。
ラスタがエルギ公爵と
仲が良いことを心配した
カルル侯爵は
エルギ公爵と
浮いた仲になった相手は
皆、終わり方が良くないので
言い訳をつけてでも
彼を追い出した方が良いと
ソビエシュに言いました。
ナビエ様は西大帝国で
苦労はしているものの
その先は明るい未来が
待っている予感。
けれども、東大帝国の未来は
暗雲がかかっているような
気がします。
ハインリと一緒にいる時は
皇后の鎧を脱ぎ捨てて
ナビエ様には、
普通の女性でいて欲しいなと思います。