2話 夫が女性を連れて来たことに、ナビエの心が揺れ始めました。
◇刹那の愛◇
ナビエは、いつもの口調で
何気なくソビエシュに、
罠にかかった女性のことを
聞いたつもりでしたが、
彼は、
どんどん機嫌が悪くなりました。
ようやく、彼は、
自分の責任で怪我をさせたので
仕方なく連れて来たと話しましたが
その後は、
一言も口をききませんでした。
ナビエは西宮へ戻ると
彼女を心配している侍女たちに、
ソビエシュから聞いたことと
彼の様子を話しましたが、
侍女のローラは、
それは典型的な浮気男の反応だと
怒りまくりました。
その後、イライザ伯爵夫人と
2人だけになったナビエは、
ソビエシュが
その奴隷を側室に迎えても
仕方がないと思っているけれど、
急にソビエシュが冷たくなったので
憂鬱な気分になっていると
イライザ伯爵夫人に打ち明けました。
そんなナビエに、
イライザ伯爵夫人は
幼い頃からの婚約者なので、
気分を害するのは当たり前だと
言いました。
ナビエは、自分も他の男性を
そばに置いたら、
ソビエシュは悲しむだろうかと
尋ねると、
正直に言うと、分からない。
刹那の愛ほど、より強力で
周りを見回す余力がないと
ナビエにアドバイスをしました。
彼女は無理に笑って、
その女性を顔を合わすことは
ないだろうと言うと、
イライザ伯爵夫人も、
あの奴隷が側室になっても、
公の場や社交界に
出入りできるわけがないと
言いました。
◇秘密の場所◇
ナビエは、自分の設計した庭の中の
人の出入りが少ない所に
自分の好みを入れて作った
鳥の巣の形をしたブランコを
置いていました。
そこへは、侍女たちを
連れてこないので
ナビエの秘密の場所となっていましたが
そこにナビエがいることを
知らない人たちは、
ソビエシュとラスタの噂話を
していました。
日を追うごとに、
ソビエシュの奴隷女に対する関心が
高まっているのか、
皆、興味津々でしたが、
幸いなことに、ナビエは、
彼女と会うことがなかったので、
知らぬ存ぜぬで過ごしました。
新年祭の準備のための会議の合間に
ナビエは休息を兼ねて
アルティナ卿と共に
本宮近くの庭園を歩いていた時に
その女と初めて会いました。
ナビエは、その女性は
ソビエシュが拾ってきた奴隷かと
思いましたが
側室の職位が高く
本宮で仕事をしているのでなければ
側室が本宮へ来るはずがないと
思いました。
彼女は車いすに乗っていて
ナビエに近づこうとするのを
下女たちは止めましたが
彼女は頑として
言うことを聞きませんでした。
そして、彼女は
「ちょっと」と言って
ナビエを呼び止め
自分の名前がラスタだと告げました。
それが何なのかと
ナビエは思いましたが、
彼女はラスタの名前を口にすると
彼女は、にっこり笑いました。
ナビエは、
これで用事は済んだと思い
立ち去ろうとしましたが
ラスタは彼女のドレスの裾を
つかみました。
侍女たちは、
ラスタの手の甲を叩いて
「無礼者」と叱責しました。
ラスタは、
ナビエが皇后だと
知っているにもかかわらず、
彼女を呼び止めるのに
何て呼んだら良いか
分からなかったと言ったので
侍女たちは怒りました。
けれども、ラスタはもう一度、
自分はラスタだと言ったので、
ナビエと侍女たちは
ラスタが、その名前を
知らなければならないほどの
人なのかと慌てました。
ナビエと侍女たちが知っている
貴賓の中に
ラスタと言う名前の人は
いませんでした。
ラスタは、ナビエに
自分のことを知らないのかと
尋ねたので
ナビエは知らないと言うと
ラスタは困って
ようやく、
ソビエシュの恵みを受けて
東宮で暮らしていることを
話しました。
ナビエは、ようやく
彼女が誰だかわかり
「奴隷ね」と言いましたが、
ラスタと一緒にいた下女たちは、
そうではないと否定しました。
侍女たちは、ラスタのことを
逃亡奴隷だと言っていたので、
おかしいと思いましたが、
本人が否定しているので、
とやかく言うことはないと
思いました。
ラスタは、
清楚で可憐なイメージの
美しさを持ち、
罠にかかった美しい獲物
という言葉がぴったりだと
ナビエは思いました。
ラスタの身体を洗うように
ソビエシュに命じられた侍女たちは
その場にいなかったので
ナビエと一緒にいた侍女たちも
ラスタが分かりませんでした。
ナビエは、ようやくラスタが
誰だかわかったと言うと、
彼女は明るく笑い、
いつナビエに挨拶に行くべきか
ずっと悩んでいた。
何て呼んだらいいかと
尋ねましたが、
ナビエは「皇后陛下」と答えました。
そして、
ラスタと仲良く話したくないナビエは
その場を去ろうとしましたが
ラスタは、まだナビエに
しつこくしようとしました。
侍女たちがラスタの車椅子を
押し戻し、
ローラが彼女のことを
「汚らわしい」と言った時に、
ソビエシュが現われました。
ソビエシュは、
彼が過って仕掛けた罠に
ラスタが、かかっていたと
ノベルに書かれていますが、
それはソビエシュの嘘だと思います。
その場所を狩場だと知らずに
ラスタが逃げる時に、
入り込んだだけだと思います。
そして、仕方なく
連れて来たと言うのも
嘘だと思います。
まさか、ナビエ様に、
ラスタが気に入ったから
連れて来たとは言えないので、
誤魔化すしかなかったのでしょう。
ラスタは貴族ではないので
宮中の礼儀というものを
知らなくて当然ですが、
下女が彼女を止めたのに、
無視して、ナビエ様に
近づいたことから、
ラスタは、
人の助言を聞くことなく、
何としてでも、
自分のやりたいことをする
性格のように思います。
そうとは知らずに、
母親とナビエ様しか女性を知らない
ソビエシュは、
ラスタの美しさと可愛らしい態度から
性格まで愛らしいと思い
まんまと騙されてしまいました。
これまでの経験から、
自分が可哀そうなふりをすれば
周りの人が助けてくれることを
知っているラスタは、
皇帝を騙すことなど
お手の物だったかもしれません。