190話 ラスタは、ラント男爵に逃げることを提案されましたが・・・
◇逃げるべきか◇
ラント男爵の提案に
ラスタは、
少し考える時間が欲しいと
言いました。
しかし、ロテシュ子爵の
裁判が終わり
ラスタが罪人扱い
されることになれば
今よりも見張りが強化され
逃げづらくなるので
ラント男爵は
早い決断が必要だと
ラスタに言いました。
けれども、ラスタは
うまく事が運ばなければ
もっと苦境に
立たされることになるので、
慎重にしたいと言いました。
ラント男爵が帰った後も
ラスタは悩んでいました。
ラント男爵を信じていいのか?
逃げれば、
東大帝国に住むことはできない。
けれども外国に行って
住民として支援を受けるには
自分の身分と出身地を示す
文書が必要。
これがないと
仕事に就くことができない。
身分はお金で買えるけれど
身分なしで、身分を買う方が
難しい。
逃げた皇后であることがばれれば
さらに大きな罰を
受けることになる。
ラスタはクリスタのことを
思い出しました。
彼女は、引き出しから
新聞を引っ張り出し
クリスタが家族を恨んで
自殺をしたという
記事を読みました。
クリスタは、素直に
コンプシャへ行っていれば
権力は失っても
人々から愛情と同情を受けて
安らかに暮らしただろう。
けれども、彼女は
その道を選ばずに
冒険したことで死んでしまった。
もし、自分が逃げれば
クリスタの二の舞になるのではと
ラスタは思いました。
皇后の座にいれば
罰を受けても死ぬことはない。
けれども、逃げることで
もっと大きな罰を受けたら
どうしよう・・・
ラスタは、ソビエシュと
取引をすることにしました。
◇ラスタの処遇◇
その同じ時刻
ソビエシュは、ラスタについて
どのように対処するか悩み
部屋の中を歩き回っていました。
皇族には免責特権があるので
他の人よりも、罰が軽くなります。
けれども、
ソビエシュは港のことを
見過ごすわけにはいきませんでした。
結婚自体を無効にして
皇后でなかったことにすれば
厳罰に処することができるが
離婚して退位させるのなら
人里離れた城や島、
塔に閉じ込めるのが
最大の罰ではないかと
ソビエシュは
カルル侯爵に言いました。
カルル侯爵は
ソビエシュが騙されて
結婚したことを強調し、
結婚を無効にすれば
ラスタがエルギ公爵に渡した
港に関する文書が無効になり
月大陸連合に提訴する時に
有利になると
言いました。
しかし、婚姻無効訴訟は
時間がかかり
その間、結婚できないので
跡継ぎを望むソビエシュにとって
よくないことであるのと
皇族や王族は、婚姻無効訴訟を
悪用できる立場にあるため
神殿は、なかなか婚姻無効の申請を
受け付けてくれませんでした。
カルル侯爵は
ラスタが逃亡奴隷であることを
ソビエシュは知った上で
彼女を受け入れたと
ラスタは暴露するかもしれないと
言うと、ソビエシュは、
ラスタがグローリエムのことを
愛していれば
そんなことはしないと言いました。
もしも
自分が逃亡奴隷だったことを
ラスタが暴露すれば
グローリエムは
無条件に奴隷になるからです。
けれども、ラスタは一度
グローリエムを
投げたことがあるので
その可能性もあると
ソビエシュは言いました。
ソビエシュは
カルル侯爵に下がるように言うと
頭の痛い業務に集中しました。
そのおかげで、ラスタのことを
後回しにすることができていましたが
ピルヌ伯爵がひどく驚いた顔で
執務室に入って来て、
ナビエ様は不妊のせいで離婚したと
西大帝国の貴族に
ラスタ様が手紙を送った。
そのことで西大帝国はひどく怒り
公式の謝罪を要求していると
伝えました。
ラスタは、
文句をつけられることだけは
熱心にやっていると
ソビエシュは思いました。
◇枕で反撃◇
氷の魔法を使う侵入者が
使用人を凍らせました。
怖いですと言って、
ハインリは
ナビエをからかいました。
人を凍らせる
恐ろしい魔法使いがここへ来たら
クイーンはハインリを
守ってくれますか?と
ラスタの口真似までしました。
そして、ナビエのお腹に向かって
優しい声で
坊やのお母さんは冷たい人ですよ。
お母さんは、夢と希望に満ちた
童話を読んでくれるけれど
気に入らなければ
生きていている人を凍らせる現実も
教えてくれるよと言いました。
宮医が帰ってから30分間
ずっと我慢していたナビエは
背中に当てていた
大きな枕を持ち
戦闘準備に入りました。
ハインリはからかうのを
やめました。
そして、ナビエは枕を
ハインリの背中に向かって
振り回すと、彼はうまくかわして
後ろも見ずに
部屋の扉を開けて逃げていき
扉を閉めました。
扉を閉めるハインリを狙って
振り下ろされた枕は
扉を叩き、その音は
部屋の中に響き渡りました。
ナビエは
皇后としての威厳と対面を
気にしているので
彼女がハインリを追いかけて
廊下で彼に
枕を振り回すことはないと
ハインリはわかっていて
彼は廊下に出たに違いないと
彼女は思いました。
怒りを鎮めようと
扉の前で呼吸を整えていると
侍女たちが心配して
声をかけてくれたので
ナビエは扉を開けて
話をしました。
彼女たちは安心しましたが
ナビエの持っている枕に
興味津々でした。
ナビエは説明せずに
枕をベッドに下ろしました。
お腹の赤ちゃんが
ハインリの言葉を
誤解しないように
釈明しなければと思いました。
◇枕投げを伝授したのは◇
エレガントなナビエが
鉄槌のように
枕を振り回したことが
信じられないハインリは
驚いた気持ちを抑えきれず
歩き回っていると
コシャールに会いました。
ハインリは、ナビエが怒ると
枕を振り回すのか
コシャールに尋ねました。
コシャールは困惑した笑みを
浮かべながら、
ナビエは、
よほどのことがなければ
1人で我慢するけれど
怒りが我慢の限界を超えると
枕を振り回すと答えました。
ハインリは、ナビエにも
激情的なところがあるのを知り
驚いたとコシャールに伝えました。
貴族が使う枕は、
中に羽がたくさん入っているので
叩かれても痛くありません。
ナビエとソビエシュは
とても仲が良かったけれども
些細なことで喧嘩をすることが
ありました。
けれども皇太子のソビエシュと
ナビエは
争うことができなかったので
彼女は枕を使うようになり
コシャールは、負けない
枕投げの方法を
ナビエに伝授しました。
けれども、
ソビエシュに関係のあることを
ハインリに話さず
コシャールは恥かしそうに
ナビエが怒ったんですねと
言いました。
ハインリは、
お前がナビエを怒らせたと
コシャールに遠回しに
非難されていると誤解したので
彼は話題を変え、
シャーレット姫と
結婚するのかどうか
コシャールに尋ねました。
コシャールは、
自分は結婚しても良いけれど
シャーレット姫は
自分で大丈夫なのかと
心配していると言うと
ちょうどやって来たシャーレット姫が
コシャールはハンサムだから大丈夫。
自分が選べる人の中で一番、
ハンサムな人を選んだ。
コシャールが選べる人の中で
自分より身分の高い人はいるかと
尋ねました。
コシャールが困った顔を
しているのを見てハインリは、
そっとその場を離れて
執務室へ行きました。
机に座っているマッケナが
申告な顔をしていたので
理由を尋ねると
ナビエに足を凍らされた使用人は
元々、宮殿で働いていたけれども
様子がおかしかったので
調べてみたところ
ナビエに危害を
加えるつもりはなかったが
彼女に近づくと
どんな人が出てくるか
確認して欲しいと
頼まれていたという証言を
ハインリに伝えました。
ナビエ様は、
自分が襲われるかもしれないと
思って、氷の魔法を使ったのに
それをからかうハインリは
ひどいと思いました。
でも枕を振り回して
ナビエ様がハインリを追いかける姿を
想像して笑ってしまいました。
マンガでは
どんな風に描かれるか楽しみです。
コシャール直伝の枕の攻撃。
きっと、ソビエシュにも
負けなかったでしょうね。