239話 カフメン大公は、シャーレット姫の不吉な心の声を聞いてしまいました。
◇不安◇
シャーレット姫が帰ると
カフメン大公は
彼女が結婚をしないと
世界平和が壊れると
ホワイトモンド王が
伝えてきていたと
ナビエに伝えました。
月大陸連合は西大帝国に
新年祭に招待する手紙を
送って来ていましたが
他の国には別の手紙を送ったようだと
ハインリは話していました。
手紙を受け取った国が
緊急会議を開いたことを考えると
シャーレット姫が考えていたことも
ハインリに関係があるのではと
ナビエは思いました。
彼女はカフメン大公に
お礼を言うと
ハインリにその話をしました。
カフメン大公がシャレット姫の心を読んだというのはハインリには内緒です。
ホワイトモンド王が
平和という言葉を口に出したことから
月大陸連合が考えていることは
平和に反することではないかと
ハインリは推測し
ナビエも同意しました。
ハインリは、もう少し早く
魔石を回収しなければと
言いました。
◇エインジェルの計画◇
エインジェルは部下たちと
食事をしながら、
情報が入れば、焦って
より早く痕跡を消そうと
するだろうと話しました。
すると部下は
連合首長は、
東大帝国と西大帝国の両方を
狙っているのではないかと
言いました。
エインジェルは、
2つの国を狙った結果、
両国が力を合わせたら
他の国々を全部かき集めても
勝機を得るのは難しい。
だから、
一国ずつ撃破するのが有効だと
部下に話しました。
エインジェルは、
手紙を送った国々から
そろそろ返事が来るのではと
部下に尋ねました。
返事ではないけれど
ブルーボヘアンから手紙が来たと
部下が伝えました。
エルギ公爵は不要のようだと
言いました。
◇母親への思い◇
母親の編み物を手伝っている
エルギ公爵は
平和な時を過ごしていました。
彼女が眠ると、布団をかけてあげて
エルギ公爵は外へ出ました。
母親の前では
表情管理をしているエルギ公爵でしたが
本館の前に父親が立っているのを見ると
冷たい顔をしました。
エルギ公爵が
黙って通り過ぎようとすると、父親は
エルギ公爵が考えなしに犯した
恋愛遊びのせいで
東大帝国と西大帝国と
対立することになったと
嫌味を言いました。
その日の夜、エルギ公爵が
色々と調べたところ
月大陸連合から
微妙なニュアンスの提案があり
ブルーボヘアン王は
肯定的な回答を送ったことが
分かりました。
エルギ公爵が完全に
東大帝国と仲違いをし
屈する気がないことを知ると
王は東大帝国を敵にするよりも
東大帝国をなくす方がましだと
考えたようでした。
エルギ公爵は、
素早く手紙を書き
鳥の足に結びました。
早いスピードで遠ざかる鳥を
眺めながら
エルギ公爵は窓の外へ行きました。
視線をそらすと
外から見えないように
徹底的に隠された
母親のいる別邸が見えました。
エルギ公爵は、
ため息をつきました。
母親を思う子供の復讐心のせいで
一人の女性が死ぬところだった。
その女性は、
他の誰かの母親の名前を奪い
絶望に陥れた。
母親のため、青年は復讐心から
一人の女性を死に至らしめた。
そして、その女性は・・・
◇王位継承権の放棄◇
誰かの敵意に敏感なシャルルは
ソビエシュが口元に笑みをたたえ
優しく、穏やかに話をしていても
その冷たい視線から
彼が自分のことを好きではないと
直観的に感じていました。
宮殿に来て何日も経っていないのに
シャルルは家へ帰りたいと
ソビエシュに告げました。
最近のソビエシュは
変な幻想を見るようになり
昼なのに記憶がなくりました。
ルベティは、
ソビエシュが気を失っていた時
カルル侯爵が妙な視線を向けていたと
話していました。
いろいろ気になることが多い中
皇位継承順の高いシャルルが
家に帰りたいと言っていることに
ソビエシュは腹が立ちました。
シャルルが
父親と母親に会いたいと言うと
ソビエシュは、
時々帰ればいいと言いました。
とは言ったものの
そもそも、秘書たちと貴族たちが
早くシャルルを宮殿に呼びたかったのは
野心満々のリルテアン大公と大公婦人に
シャルルを教育させないためだったので
ソビエシュは時々でも
シャルルを
家へ帰したくありませんでした。
ソビエシュは、できる限り優しい声で
皇位継承順の一番高いシャルルが
歩き回って暗殺されるといけないと
話すと
彼は、涙声で
継承権を放棄すると言いました。
シャルルは、皇帝の座に野心のない
父親を見て育ったので
彼自身も欲はありませんでした。
勉強も嫌いでした。
シャルルは、
関心のない皇帝の座について
頭を抱えるくらいなら
一生贅沢に暮らせる財産と
王族という名誉を持って
楽しく暮らしたいと思いました。
聡明で名高い皇帝も
即位して数年も経たないうちに
すでにたくさんの
問題を起こしているし
自分がその立場だったら
頭が破裂すると思いました。
ソビエシュも
狂っているように見えるので
シャルルは、そんな風に
なりたくありませんでした。
◇ナビエの子供◇
夜遅くに、カルル侯爵は
夜のソビエシュに
シャルルが公式に
皇位継承権を放棄したことを
報告しました。
リルテアン大公は
自分自身は皇帝になるつもりはなくても
息子にはなって欲しいと
願っていたので、
ソビエシュを見たシャルルが
恐怖のあまり、
皇位継承権を放棄した事実を
知らないソビエシュは
不思議に思いました。
カルル侯爵は、こうなった以上
ソビエシュが再婚するしかないと
進言しました。
昼間のソビエシュとは違い
夜のソビエシュは
ナビエが戻ってくる可能性は
ないと思っていましたが
他の女性と
結婚する気はありませんでした。
政略結婚をするとしても
その相手が、
昼と夜の自分を見て、
どう出てくるか
そして、皇后やその家門が
悪心を抱く可能性が
高いと思いました。
カルル侯爵は
興奮するといけないので
昼間のソビエシュには
伝えていないけれどもと
前置きをした後で
躊躇いがちに
ナビエが双子を出産したことを
報告しました。
連合の怪しい動きが気になる中
東大帝国が西大帝国に
友好的であることを示すために
贈り物を送ったらどうかと
カルル侯爵は提案しました。
けれども、ソビエシュは
ナビエの名前を呟くだけで
返事をしませんでした。
嫉妬とか懐かしさとか
一つの単語では表現できない
暗い感情がソビエシュに
湧き上がって来ました。
子供はナビエに似ているのか
似ていないのか
気になるけれど、知りたくない。
会いたいけれど、会いたくない・・・
ソビエシュは、カルル侯爵に
産婦に良い物をすべて集めて
トロビー公爵夫人に渡すように、
自分からだとは言わないでと
伝えるようにと指示しました。
ソビエシュはベッドに戻り
膝に顔を埋めました。
エルギ公爵の意味深な発言が
気になりますが
エルギ公爵の過去に何があったか
明らかになるのは
もう少し先になります。
エルギ公爵の父親は
息子が考えなしに行動したと
彼のことを非難していますが
彼を叱責するだけでなく
彼の心に寄り添ってあげても
良いのではと思います。