509話 ラティルはアニャに、頭のおかしな幸せな人に転生してよかったねと言われましたが・・・
◇たくさんの肖像画◇
ラティルは、今、アニャが
自分に悪口を言ったようだと
不機嫌そうに呟きました。
アニャは面倒くさそうな表情で
それなりに言語を単純化した。
元々は幸せなゴミに転生したと
言おうとしたけれど、皇帝の立場が
特殊であることを考慮して
頭のおかしな人にしたと
素直に答えました。
ラティルは、
アニャは昔の人だから保守的だと
非難しました。
アニャは、保守的ではないと思うと
言い返しました。
ラティルは、アニャに
恋人を作ったことがないのかと
尋ねました。
アニャは「ない」と答えると、
ラティルが、
突然、悲しそうな表情をしたので、
アニャは、なぜ、ここで、
悲しい表情をするのかと
疑問に思っていると、ラティルは、
相談相手を選び間違えた。
歩き方も知らないアニャに
走り方を聞いてしまったと
言ったので、アニャはムッとしました。
続けてラティルは、
アニャが500年も生きているのに、
恋人と付き合っていないことを
嘆きましたが、その大部分は
洞窟にだけ閉じこもっていたので、
恋人と付き合えなかったのも
仕方がない。
それに、必ず恋人と
付き合わなければならないという
ものでもないしと言ったので、
アニャは、怒りに満ちて、
抗議をしようとしました。
ところが、ラティルは
何かを一つ一つ取り出しているので
何かと思って見下ろしていると、
ラティルは小さな肖像画を並べながら
この中に、
アニャの気に入った人がいたら
紹介すると言いました。
ラティルが広げているのは、
ハンサムな男たちの
肖像画であることに気づくと
アニャは驚きました。
アニャは、
どうしてこれを、ラティルが
持ち歩いているのかと尋ねました。
ラティルは、
好色だと誤解されていると、
こういうものがよく手に入る。
これは、ある貴族が
プレゼントしてくれたものだと
答えました。
その言葉に驚いたアニャは、
そんなものを持ち歩いているから、
ずっと好色だと
言われ続けるのだと叫びました。
◇父親の怒り◇
クラインがカリセンに発つ前日、
ラナムンは侍従のカルドンと
ヒュアツィンテ皇帝に
贈り物を送るべきかどうかについて
話し合っていました。
カルドンは、
ラナムンは皇配の席を狙っているので、
ヒュアツィンテ皇帝に
気を遣った方がいいのではないか。
カリセンはタリウムの
強力な友好国だと答えました。
しかし、ラナムンは、
クラインがきちんと
プレゼントを渡してくれるかどうか
心配していました。
しかし、カルドンは、
まさかそんなことで
問題を起こすことはないだろう。
彼はわがままだけれど皇子なので、
最低限の常識はあるはずだと
言いました。
それでもラナムンは半信半疑でした。
そのように、
しばらく2人が話していると、
扉の向こうで、
何か騒いでいる声が聞こえ、
護衛が、アトラクシー公爵が
訪ねて来たと叫びました。
ラナムンは、
父親の入室を許可すると、
漁っていた宝箱を閉めて
立ち上がりました。
すぐに扉が開き、
アトラクシー公爵が
部屋の中に入って来ました。
大急ぎで歩いて来る
アトラクシー公爵を見るや否や、
ラナムンとカルドンは
彼の尋常でない様子に気づきました。
彼の険悪な表情を見て、
何か良くないことが
起こったに違いないと思ったラナムンは
どうしたのかと尋ねると、
アトラクシー公爵は、
ラナムンに向かって、
お前は本当に頭がおかしくなったのかと
怒鳴りました。
カルドンはすぐに扉の方へ駆けつけ、
扉をしっかり閉めました。
なぜ公爵が大切な子供に
あれぼとまでに怒鳴るのかは
分かりませんでしたが、
他の人の耳に入っていいはずが
ありませんでした。
一方、ラナムンは
父親があんなに怒って
近づいて来るのに瞬きもせず、
公爵が目の前に近づくと
どうしたのかと淡々と尋ねました。
すると、アトラクシー公爵は
ラナムンがそれも分からずに、
どうしたのかと、
何度も聞いてくるのかと尋ねました。
ラナムンは、知っていれば
聞くはずがないと答えると、
興奮している父親のために、
心を落ち着かせるようなお茶を
持って来るよう、
カルドンに指示しました、
カルドンが出て行くと、
ラナムンは再び
アトラクシー公爵をチラッと見ました。
彼はソファーに近づくと、
バタンと倒れるように座り、
椅子の肘掛けをドンドン叩きながら、
今、宮廷人たちが、
ラナムンとカリセン皇后について、
何と言っているか知っているのかと
尋ねました。
ラナムンは、
良い言葉ではなさそうだと答えると
アトラクシー公爵は、
それだけでなく、
とても恥ずかしい言葉でいっぱいだ。
これは、どうしたことなのかと
尋ねました。
そして、カルドンが運んで来た
カモミールティーを飲みながら
ラナムンを睨みつけました。
幸い、ラナムンは、
昨日、サーナット卿から、
アイニ皇后と自分についての醜聞を
聞いていたので、
自分はアイニ皇后と
何度か会って話をしたけれど、
それは対抗者の剣について
話すためだったと説明しました。
アトラクシー公爵は眉を顰めると、
ラナムンが本当に浮気をして、
カリセンの皇后と会っていたとは
思わなかった。
しかし、ラナムンは馬鹿なことをした。
仕方なく会ったとしても、
2人だけで会うのではなく
対策を立てて会うべきだったと
責めました。
しかし、ラナムンは、
人前で議論できない内容だから
2人だけで会った。
ギルゴールに一緒にいてくれと
頼んだけれど、
彼は面倒だと言って断ったと
言い訳をしました。
アトラクシー公爵は
ラナムンがスラスラと答えるので
萎縮しましたが、
すぐに、カッとなり、
それが彼の企みであることに
気付かないなんて、愚か者だ。
もっと気を遣うべきだったと、
さらに怒りを露わにしました。
ラナムンはじっと父親を見ると、
そんなデマが気になって
ここへ来たのか。
そのような噂は放っておけば、
自然と落ち着くはずだと言いました。
アトラクシー公爵は、
重々しくため息をつくと、
噂のためだけなら、
自分もこうはしない。
問題は・・・と呟きました。
◇父親の悪巧み◇
問題はロルド宰相でした。
アトラクシー公爵が
ラナムンに会うために
急いでこちらへ来たのは、
会議が終わるや否や、ロルド宰相が、
ハーレムに入ったという話を
聞いたからでした。
ロルド宰相がハーレムへ行くのは
自分の息子に会うため。
そして、息子に会えば、
彼のやることも
明らかになるはずなので、
アトラクシー公爵も急いで
ハーレムへやって来たのでした。
そしてアトラクシー公爵の予想通り、
ロルド宰相は
ゲスターの部屋に入って行きました。
それだけでなく、
彼はゲスターとトゥーリを呼んだ後、
ラナムンと
カリセンの皇后との雰囲気が、
微妙だという噂を聞いたと
話しました。
ゲスターは、
それはデマだと思う。
ラナムンはそういう性格ではないと
庇いましたが、ロルド宰相は、
それがデマなのかどうかは
重要ではない。
重要なのは、そのような噂が
流れたということだ。
相手が自ら自爆してくれたので、
当然、その機会を
つかむべきではないだろうかと、
ゲスターの頭を撫でながら、
トゥーリに言いました。
ロルド宰相の話を
ぼんやりと聞いていた
トゥーリは、すぐに宰相の前に近づき
「はい」と返事をしました。
ロルド宰相は、
このチャンスを
掴まなければならない。
ラナムンが不倫をしたように
追い詰めなければならないと言うと
トゥーリは「はい」と返事をしました。
ゲスターは、
その恐ろしい会話を聞いて
顔が青ざめ、
そんなことをしてはいけない。
ラナムンは絶対にカリセンの皇后と
不倫をする人ではない。
違うと分かっていながら、
悪い噂を広めてはいけないと
父親を止めました。
しかし、ロルド宰相は、
気弱な息子が、
このような悪巧みを
共に分かち合えるとは、
最初から思っていなかったので、
失望もしませんでした。
宰相はゲスターの手の甲を
2回優しく叩いた後、
無言でトゥーリに目で合図しました。
ゲスターが知らないうちに
適当に処理しろという合図でした。
トゥーリはすぐに理解して
頷きました。
聡明なトゥーリの答えに
満足した宰相は、
ゆっくりとソファーから身体を起こすと
トゥーリが
ゲスターのそばにいてくれて
良かったと言いました。
トゥーリは、ラナムンに仕えるのが、
自分の喜びだと返事をしました。
宰相はトゥーリの肩を2回叩いて
ゲスターを振り返りました。
ゲスターは、
まだ何も知らない純真な顔に
微かな心配を浮かべて、
父親を見つめていました。
ハーレムに入っても、
少しも濁っていない
自分の純粋な息子を見ると、
これも、それなりにいいと、
微笑ましくなりました。
ロルド宰相は、
トゥーリに再び目を向けて
外に出ました。
すると、ロルド宰相は、
ひどく目障りな使用人を発見し、
眉をひそめました。
名前は知らないけれど、宰相は
その青年が、ゲスターが
タナサン王から受け取った
使用人であることは知っていました。
「まだここにいたんだ。」と
冷たく呟いた宰相は、
使用人を上から下まで
ジロジロ眺めました。
使用人が丁寧にお辞儀をすると、
ロルド宰相は、さっと通り過ぎて
廊下に出ました。
宰相は、
「よろしく、トゥーリ」と言って
再び彼の背中を叩くと、
ハーレムを離れました。
その後、トゥーリは
自分の部屋に閉じこもり、
どうすれば、
宰相が今回下した任務を
完遂できるか、熟考しました。
◇告げ口◇
翌日は、クラインが
ヒュアツィンテの誕生日のために
カリセンに発つ日でした。
ラティルは、
自分が用意した馬車の贈り物と
その中に入れた贈り物を
もう一度点検し、満足そうに
クラインを軽く抱きしめました。
そして、クラインに
「いってらっしゃい」と声をかけた後
ヒュアツィンテに、
自分の愛とお祝いの言葉を
伝えて欲しいと頼みました。
クラインは、
誰の愛を伝えて欲しいのかと
聞き返すと、ラティルは、
クラインの愛と
自分のお祝いの言葉だと答えました。
クラインは怪訝な目で、
ラティルを見つめましたが、
彼女は皇帝の厳粛な表情を浮かべて
誤魔化しました。
本当に愛してるから
愛と言ったわけではなく、
ただお祝いの言葉を述べた時に
反射的に言っただけなのに、
クラインは、
自分がヒュアツィンテと
付き合っていたことを
知っているからなのか、
愛という単語に、
敏感に反応すると思いました。
依然として疑いを晴らせない
クラインを再び抱きしめた後、
ラティルはカルレインから借りた
吸血鬼の傭兵たち10人に、
クライン皇子を、
よく守らなければならない。
とんでもないことを
しようとしたら、彼を止め
危険な所へ、一人で行こうとしても
止めるよう、何度も頼みました。
傭兵たちが、心に刻むと答えると、
その会話を聞きながらクラインは
皇帝は自分のことを
恋人だと思っているようだと
ブツブツ言いましたが、
ラティルは全く気にしませんでした。
あんなに自分を心配しているなんて、
やはり自分を愛しているんだという
クラインの本音で
満足していたからでした。
ラティルは、
もし手に負えない状況だと思ったら、
1人は必ずこちらへ来て
知らせなければならないと
傭兵たちに指示しました。
カリセンへ行く祝賀使節団は
ラティルに挨拶をした後、
宮殿を出発しました。
彼女は、馬車が見えなくなるまで
手を振りました、
その後、
ハーレムに行ったラティルは
久しぶりにゲスターと一緒に
昼食を取りながら、
アニャドミスがどこに現れるかを
一緒に相談しました。
ところが食事が終わった後、
ラティルが執務室に戻るために
ハーレムの外へ出たばかりの時、
後ろから
急いで誰かが付いてくる音が
聞こえたので振り向くと、
ゲスターがタナサンから受け取った、
あのハンサムな使用人が
走ってくるのが見えました。
自分の所へ来るみたいだけれど、
どうして付いて来るのかと
不思議に思って眺めていると、
その使用人は、
ラティルの3歩前で立ち止まり、
ぺこりと挨拶した後、
申し訳ないけれど、
是非、話したいことがあって来たと
言いました。
ラティルは、懐中時計を取り出して
時間を確認すると、
少し話を聞いても問題ないほどの
時間が残っていました。
ラティルは時計をしまって
使用人に話すよう促すと、
ロルド宰相が、
ラナムンに関する醜聞が
広がっているのを利用して
ラナムンを攻撃しなければならないと
トゥーリに何かを指示した。
正確に何を指示したのかは
聞いていない。
ゲスターが止めたけれど、
無駄だったと話しました。
まさかラティルは、時間のある時に
肖像画を取り出し、
ハンサムな男性を見て
ニマニマしているなんてことは
ないですよね・・・
ラティルは、思いついたことを
言っているだけで、
決して悪気があるわけでは
ないのでしょうけれど、
こんなことを言ったら、
アニャがどう思うかなんて、
全然、考えもしないのでしょう。
でも、アニャもイケメン好きなので
ラティルに素直に頼めないけれど
案外、ハンサムな男性を
紹介されたがっているかも
しれません。
ロルド宰相が、
純真だと信じている息子が、
自分の性格の悪さに輪をかけて
悪辣な性格であることを知る日が
早く来て欲しいと思います。