自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 6話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 5話 あの男との再会

6話 バスティアンからオデットの元へ手紙が届きましたが・・・

 

本当に驚くほど無礼な男。

オデットは、

静かにため息をつきながら

手に持った手紙を下ろしました。

 

オデット嬢の意見に同意します。

今週の水曜日の午後二時、

フレベ大通りにある

ラインフェルトホテルのラウンジを

予約しておきます。

 

その男が寄こした返事は、

とても手紙とは呼べないほどの

短いメモが全てでした。

格式張って自分を紹介し、

なるべく私的な初体面をしたいという

了解を求めたオデットを

馬鹿にする態度でした。

 

何より印象的だったのは

最後に付け加えられた

「K」という頭文字でした。

その男は、

自分の名前一つまともに残さず

何度見ても呆れた手紙でした。

 

急にドアを開けて入って来たティラが

「お姉さま、きれい」と

無邪気に感心しました。

表情を整えたオデットは、

クローゼットの上に置いていた手紙を

急いでカバンの中に隠しました。

 

出かける準備を終えた

オデットの姿を見たティラの瞳が

好奇心で輝き始めました。

彼女は姉に

出かけるのかと尋ねました。

オデットが「うん」と答えると

ティラは、

どこへ行くのか。

自分も一緒に行っていいかと

尋ねました。

オデットは、

ダメ。皇室の人に会うからと

巧みに嘘をつきました。

幸いティラは、

これ以上意地を張らずに

頷きました。

しょんぼりしている姿が

可哀想だと思いましたが、オデットは

無責任に憐れんだりしませんでした。

 

日傘と手提げカバンを持ったオデットは

遅くならないうちに

帰ってくるという約束をした後、

家を出ました。

一階へ続く階段を一段ずつ降りるほど

頭の中は、ますます

複雑になっていきました。

 

トリエ伯爵夫人の計画では

皇居で開かれる舞踏会で

二人を紹介することになっていました。

それが社交界の礼儀作法にかなった

手順であり、

また皇帝が望んでいる方式だと

話していました。

 

しかし、オデットは、

途方に暮れたまま、

見知らぬ世界に放り込まれた見せ物に

なりたくありませんでした。

少なくとも、一度は会って

この結婚についての見解を

交わす機会を望んでいたし、

その男の考えも、

自分と同じだろうと信じていました。

それが、こんな返事をもらうほどの

無礼だったのだろうか。

 

複雑な気持ちで、

建物の入り口の扉を開けたオデットは

道の両脇に並ぶ

街路樹の花が満開なのを見て、

思わず小さな嘆声を漏らしました。

ゆっくりと息を整えたオデットは、

しばらく止まっていた足を踏み出し

日傘を広げました。

まだ水温が冷たい気候でしたが、

軍事訓練真っ最中のプラター川では

士官候補生たちが死力を尽くして

水の流れを遡っていました。

バスティアンとルーカスは、

しばらく立ち止まって

そちらを見ました。

 

自分たちは氷水の中で

雪に当たりながら泳いでいたのに

花が咲く春に水泳をするなんて、

最近の士官学校は本当によくなったと

ルーカスは、クスクス笑いながら

くだらない冗談を言いました。

にっこり笑うバスティアンの顔は、

気が進まない嫁との出会いを控えた

身の上らしくなく平穏でした。

 

しばらく水泳訓練を見守っていた二人は

再び目的地に向かって歩き始めました。

士官学校の敷地を離れると、

水の庭園と呼ばれる公園が現れました。 

 

公園の向こうにある

海軍本部の建物が見え始めると、

ルーカスは絶望的なため息をつき、

この面倒なことを

いつまでしなければならないのかと

嘆きました。

本部の要職に就けて嬉しかったのも

つかの間。 毎日のように

激務に苦しむようになると、

むしろ軍艦に乗っていた頃が

懐かしく思えました。

今春からは、士官学校

制式訓練教育まで

引き受けることになり、

それこそ息が詰まるほどでした。

もちろん、バスティアンは平気で

この地獄に耐えているようでした。

 

バスティアンは、

気が向かないなら、

また艦艇勤務を申請したらどうかと

提案すると、腕時計を確認しました。

皇帝に押し付けられた荷物を

相手にする時間が

いつのまにか目前に迫っていました。

 

ルーカスは、

苦労して用意してくれた席を蹴ったら

父親が自分を放っておくと思うか。

無条件でお前の後を追えという

特命まで下した状況なのにと

返事をすると

気楽そうな笑みを浮かべました。

そして、

父親は本当に、バスティアンのことが

気に入っているみたいだ。

近いうちに、もう一度

酒席を設けたいと言っていたが、

どうだろうかと尋ねました。

バスティアンは、

招待してもらえたら光栄だと

答えました。

 

ルーカスは、

とにかくバスティアンはすごい。

生まれつき、融通の利かない年寄りの

機嫌を取る能力がある。

一体、どんな秘訣があるのかと

心から感嘆すると、

無邪気な好奇心で両目を輝かせました。

バスティアンは、

適当にとぼけた笑みで答えました。

 

息子を守る猟犬。

エヴァルト伯爵が考える自分の使い方が

そこにあることを

バスティアンはよく知っていました。

代々有名な海軍将校を

輩出してきたという事実は、

エヴァルト家の大きな誇りでした。

そして、それが、

文学を志すことを夢見た息子を

軍事学校に押し込んだ

理由でもありました。

 

厳しい父親が怖くて、

現実に順応したものの、一朝一夕で、

別の人間になることはできないもの。

ルーカスは、

なかなか士官学校に適応できず、

捕食者を自任する連中は、

その容易な獲物を逃しませんでした。

 

それから一年が過ぎた頃、

バスティアンは、

ルーカスのような寮を

割り当てられました。

貴族の家の子弟たちが、

皆個室を使うという点を考えると

非常に異例な決定でした。

 

それが上部の特別な指示だと知った日、

バスティアンは、

エヴァルト伯爵の柔弱な息子は、

自分に訪れた祝福に他ならないことに

気づきました。

お互いの利害が、

よく一致する取引でした。

彼らはその目的に契合する関係で

共に歩んで来ました。

 

ルーカスが不適応者の烙印を

拭い去るまで、

その後も長い時間が必要でしたが、

少なくとも、これ以上、

悪口と殴打に苦しめられることは

ありませんでした。

ルーカスの顔に唾を吐いた

ある上級生が、

バスティアンの軍靴に踏みつけられて

泥まみれになった後に起きた

変化の一つでした。

 

エヴァルト家との親交。

それを元に得た華麗な人脈。

おかげで一層高まった

海軍省内の威信と立ち位置。

 

その見返りとして得た利益だけ

ルーカスとの関係は

深まって行きました。

異変がない限り、

今後もそのような友情が

続いていくはずでした。

 

ルーカスは辺りを見回すと、

もう、彼女に会いに行くのではないかと

声を低くして囁きました。

バスティアンは頷きました。

ルーカスは、

弱みを握られないよう気をつけてと

忠告すると、深いため息をつきました。

そして、いくら血筋が良くても、

そんな女と絡んでいいことはない。

遅くとも来年には、

サンドリンの結婚の片が付くはず。

ようやく、バスティアンに

好意を示し始めたラビエル公爵が

このことで失望でもしたら・・・と

心配しましたが、バスティアンは

彼の名前を呼んで

興奮したルーカスの言葉を遮りました。

幸いにも、

全く気が利かないわけではない

ルーカスは、

その辺で失言を止めました。

 

彼らは海軍本部の建物の前で

別れました。

普段なら、バスティアンも本部に戻って

残りの業務に邁進したはずでしたが、

今日はその高貴な淑女のおかげで

のんびりとした午後を

過ごせるようになりました。

 

適当に相手した上で片を付ける。

バスティアンの考えも

ルーカスと同じでした。

まずは、この縁談を

要領よく白紙に戻した後、

再び海外戦線に志願する予定でした。

その間に皇女が結婚して

ベルクを去れば、皇帝もこれ以上

このような無理を言わないだろうと

思いました。

危険な場所へ行くことは、

より大きな戦功を立てる

機会でもあるので、彼としても

損することのない選択でした。

その後、再びラビエル公爵家の令嬢に

戻ったサンドリンと結婚すれば、

最も完璧な結末になるはずでした。

 

海軍省の出入り口と

本部をつなぐ大通りに入ると、

二時を知らせる時計塔の鐘の音が

聞こえて来ました。

しかし、バスティアンは

依然として急ぐ気配のない足取りで

日差しの良い午後を歩きました。

まさか来ないつもりなのか。

オデットは、

古い懐中時計をもう一度開いて

時間を確認しました。

もう約束の時間は

とっくに過ぎていましたが、

その男はやって来ませんでした。

これ程までになると、

バスティアン・クラウヴィッツ

底なしの無礼に驚嘆するほどでした。

 

時計を手提げカバンに入れた

オデットは、

慎ましい好奇心のこもった目で

周囲を見回しました。

テーブルを飾った花や食器。

インテリア。

完璧に整えられた庭園など、

目に触れるすべてのものが格調高い

美しい所でした。

美しく着飾った姿で

談笑している客たちと、

実力のあるピアニストが演奏する

幻想曲も、やはりそうでした。

 

どうせ現れないなら、

どうしてこんな所に

呼び出したのだろうか?

オデットは、

罰を受けているような気分に

襲われたまま、自分を取り巻く

華やかな世界を見ました。

 

バスティアン・クラウヴィッツ

予約したのは、

甚だしく素晴らしい席で、

ホテルの庭園と噴水台を

一望することができました。

周囲の注目を

集めやすい場所でもありました。 

 

あと10分待つと決心したオデットは

心配そうに周囲を見回しました。

席代を払わなければならないので

お茶一杯くらいは

注文するのが望ましいだろうけれど

この緊張した状態で、

平然とティータイムを楽しむ自信が

ありませんでした。

 

その時、海軍の制服を着た男が

ホテルのラウンジに入って来ました。

周囲を見回したその将校は

洗練され、格式のある態度で

ウェイターを呼びました。

オデットをチラチラ見ていた

客の視線は、

一斉にそちらに集中しました。

オデットもその男を見ました。

 

将校は、

オデットをここに案内してくれた

ウェイターの後を付いて

ホールを横切って来ました。

背が高くて体格も良かったけれど、

全体的には、

すらりとした印象の強い男でした。

そんなに急ぐ気配がない歩き方からも

節度が感じられるのは、

軍人特有の、

まっすぐな姿勢のためのようでした。

 

オデットは、

ふと浮かんだ不吉な予感を消して

息を殺しました。

あの夜、

賭博場で会った男の記憶が

ますます近づいて来る将校の上に

浮び上がりました。

彼も海軍だったし、

あの将校と同じくらい背が高く、

よく見かけるような

外見ではありませんでした。

 

しかし、あのような場所に出入りして

低級な賭博をする者が、

大きな戦功を立てて勲章を受けた

帝国の英雄であるはずがない。

オデットが、

必死で現実を否定している間に、

将校がテラスに入って来ました。

露骨な関心が集まっていましたが、

男は依然として余裕がありました。

まるで他の人間の存在を

きれいに消してしまったかのような

態度でした。

 

あの男だ。

オデットが、もはや否定できない事実を

受け入れたのと同時に、

男が最後の歩幅を縮めて来ました。

午後の日差しの中で

二人の目が合いました。

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いくら会いたくないとはいえ、

約束の時間が過ぎたら、

少しくらい足を速めても

いいのではないでしょうか。

きっとオデットは

約束の時間の前にはやって来て

バスティアンを待っていたでしょうに。

もしかしたら、バスティアンは、

わざと嫌われるようなことを

したのかもしれませんが、

周囲の目にさらされながら

ひたすらバスティアンを

待っているオデットが

可哀想だと思いました。

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