49話 ナビエからの贈り物を喜ぶラスタでしたが・・・
◇喜ぶラスタ◇
ラスタはナビエからの贈り物が
気に入ったようで、
顔色が一気に明るくなったラスタは
ナビエにお礼を言うと、
喜びの叫び声をあげました。
ラスタは、豪華な剣を
注意深く観察しながら、
綺麗だと言って、
何度も感心していました。
ラスタは
本当に喜んでいるようでした。
どのような意味で贈られたかは
わからないようでした。
あえて説明する必要はないと思い
ナビエは
気に入ってもらえてよかったと
心にもないことを言った後
ナビエはラスタに背を向けました。
ラスタは、
皇后が来てくれたことに
感謝しているし感動している。
皇后と仲良く過ごしたいと
言いました。
ナビエは答える代わりに
適当にラスタの言葉を聞き流して
背を向けました。
そして、自分はパーティの
主人公ではないので
仲の良い人達に少しだけ挨拶をしたら
部屋へ戻ってお風呂に入り
休むつもりでした。
◇赤ちゃんへの祝福◇
しかし、ラスタは
ナビエを呼び止め、
お腹の赤ちゃんを祝福して欲しいと
言いました。
ナビエはやりたくないので
断りました。
ナビエは同じことを
よく頼まれることがありましたが
自分の祝福に
大きな効果があるとは
思っていませんでした。
けれども、
少しでも効き目があるのなら
ラスタの赤ちゃんに
それを受けさせたく
ありませんでした。
ナビエが人前で断ると
思っていなかったラスタは
目を大きく開きました。
ナビエは
心にもない祝福を受けて、
赤ちゃんが幸せなのかと
率直に言うと
ラスタの顔が真っ赤になりました。
それでもやってほしいならやると、
ナビエが言うと、
ラスタは耳まで真っ赤になり
視線を落としました。
ソビエシュは声を低くして
あえて人前で
恥をかかせなければいけないのかと
ナビエに文句を言いました。
ナビエは
人前で恥をかきたくないと
返事をしました。
ソビエシュは、
その一言を言うのが
そんなに難しいのかと尋ねると
ナビエは、
その一言が千の金より重い
ことがあると答えました。
ソビエシュは、
ムカついてたまらないという
表情でナビエを見つめると、
周りの貴族たちは、
好奇心に満ちた目で
ソビエシュとナビエを見ました。
痴情劇を演じたくなければ
止めましょうと
ナビエが、きっぱり言うと
ソビエシュは呆れたとばかりに
舌打ちをしました。
その場にいたくないナビエは
背を向けて、
立ち去ろうとしましたが
気が変わり、彼らに近づきました。
ソビエシュは
ギョッとして彼女を見ました。
一体、何をするつもりなのかと
露骨に彼の顔が語っていました。
ナビエは知らんぷりして
2人に近づくと
ラスタに
どうしても祝福が欲しいなら
してあげると言いながら
ちらっとソビエシュを見ました。
ラスタは、にっこり笑いながら
「はい」と返事をしました。
ナビエはお腹をじっと眺めた後
自分が贈った剣のように
華やかに美しく生きるようにと
ゆっくり言いました。
ラスタは、
とても嬉しそうな顔で、
皇后が赤ちゃんを
祝福してくれたと言って、
ソビエシュの顔を見上げました。
喜んでいるラスタとは違い
ソビエシュは妙な表情で
ナビエを見つめていました。
言いたいことがあれば
言えばいいとナビエは思いました。
ソビエシュは
視線を避けなかったものの
無言でラスタの肩を抱いて
ソファーへ連れて行きました。
◇元恋人◇
ラスタはご機嫌で
ソファーに背をもたれて、
お腹を抱きしめ、
卑しい奴隷だと卑下した
偉そうな貴族たちが
あなたに会いに来ている。
あなたに取り入ろうとして
贈り物を捧げていると
赤ちゃんに話しかけました。
皇帝の権力を借りて
人々に愛されるのもいいけれど、
彼が心変わりをすれば
それは失われる。
けれども、赤ちゃんは
誰が何といっても
皇帝の赤ちゃんで
自分が赤ちゃんの母親である
事実は変わらない。
そして、
自分を存在しないかのように
扱っていた皇后も
贈り物をくれて
祝福までしてくれたと思い、
明るく笑いながら、
ナビエからもらった剣を
指でいじっていました。
ラスタは、
赤ちゃんが腰に
剣を着けているのを見たら
皇后は赤ちゃんを
愛してくれるだろう。
実際に赤ちゃんを見れば
愛してくれるに違いない。
皇后は不妊かもしれないし。
後はロテシュ子爵だけ
片付ければ・・・と思った瞬間
身の毛のよだつ顔が見えました。
ラスタのかつての恋人
アレン・リムウェルでした。
彼女は、固まったまま
彼を見つめました。
なぜ、彼がここにいるのか。
ラスタは顔が真っ白になり
手で顔を覆いました。
もしも、アレンが
何か喋ったらと思うと、
ラスタの顔は恐怖に怯えました。
しかし、アレンは固まったまま
泣きそうな表情で
ラスタを眺めていました。
◇宝剣の意味◇
隣でエルギ公爵に呼ばれると
ようやくラスタは表情管理をして
彼の方を向きました。
いつ来たのかと、
ラスタが尋ねましたが、
エルギ公爵は答える代わりに
ラスタが見ている方を見ました。
エルギ公爵に、
誰を見ていたのかと聞かれると
ラスタは驚いて
彼の袖をつかみました。
エルギ公爵は
アレンの方を見つめる代わりに
ラスタの細くて傷だらけの手を
見ました。
ラスタは、
ちょっと考え事をしていたと
ごまかすと、手を下ろしました。
エルギ公爵は
再びラスタが見ていた方を見ましたが
すでにアレンはいませんでした。
エルギ公爵は
ソファに片腕を乗せて
ラスタの方へ身体を傾けました。
その姿は満腹の狼のようで
周囲の貴婦人たちは
感嘆の声を漏らしました。
それを聞いたエルギ公爵は、
より格好よく構えると、
ラスタは気分が良くなり
笑いました。
ラスタは
ナビエからもらった贈り物を
エルギ公爵に見せました。
彼が自然にラスタの隣に座ったので
周囲が少し騒がしくなりましたが
ラスタもエルギ公爵も
意に介しませんでした。
彼は、慎重に宝剣を確認した後
口元に笑みを浮かべました。
そして、ラスタが、
ナビエから赤ちゃんへの
祝福の言葉を教えると、
エルギ公爵の笑みが
より鮮明になりました。
エルギ公爵はナビエを見ながら
この宝剣は
高価だけれど装飾用だ。
剣としての実用性はなく
決闘にも使えない。
華やかで美しく生きろということは
何もしないで
遊んで暮らせという意味だと
説明しました。
エルギ公爵は、
苦労をしないようにという
意味にも取れると言いましたが、
すでにラスタは
衝撃を受けていました。
そうとは知らずに
人前で贈り物をもらって
喜んだことを、
恥かしく思いました。
ナビエの本音を
理解できなかったのは自分だけ。
皇后が皮肉って差し出した贈り物を
喜びながら受け取った自分は
どれだけ滑稽に見えたかと
思いました。
皇后が自分を侮辱したと言って、
ラスタは実に哀れな様子で
涙をポロポロ流し始めました。
ソビエシュはすぐにそれに気づき
彼女の所へやって来て
どうしたのかと尋ねました。
ソビエシュは、エルギ公爵が、
何か言ったのかというような顔で
冷ややかにエルギ公爵を眺めました。
彼は答える代わりに
優雅に挨拶をして席を外しました。
ソビエシュは、
ラスタをなだめましたが、
容易に泣き止みませんでした。
ソビエシュは
周りにいる貴族から事情を聞くと、
エルギ公爵は口が軽いと
非難しました。
しかし、ラスタは
エルギ公爵は
自分が馬鹿を見ないように
助けてくれたと
彼を擁護しました。
そして、ソビエシュに
なぜ、ナビエの祝福の言葉の意味を
教えてくれなかったのかと
尋ねました。
ソビエシュは返事をしませんでした。
彼は全部分かっていながら
ラスタに話しませんでした。
ラスタは、ソビエシュよりも
エルギ公爵を信じられると
思いました。
ラスタは、
皇后は人前で堂々と
自分と赤ちゃんを侮辱した。
後で皇子と皇女を
いじめるのではないかと
怖がりました。
ラスタは、ソビエシュが、
そんなことはない。
自分が赤ちゃんを守ると
言ってくれると思いました。
しかし彼は
ラスタが自然に庶子を
皇子、皇女と呼んだことに
固まってしまいました。
ナビエ様に
ソビエシュとラスタの子供を
祝うパーティを計画させ
出席までさせるソビエシュは
本当に残酷だと思います。
そして、
側室の立場でありながら、
赤ちゃんを祝福してくれと
ナビエ様に頼むラスタは
本当に図々しいと思います。
ナビエ様が、ラスタの赤ちゃんに
祝福を受けさせたくない。
むしろ呪ってやりたいと思うのも
当然です。
見方によっては、
ナビエ様のラスタへの態度は、
皇后らしくない、
少しひどいのではないかと
思えなくもないのですが、
今までのソビエシュの仕打ちと
ラスタのナビエ様への態度を思えば
ナビエ様が少しくらい
復讐してもいいのではないかと
思います。
今回のお話で、ラスタは
お腹の中にいる子供は
皇帝の子供だと確信しているので
その子の父親は
ソビエシュだと信じたくない私は
がっかりしてしまいました。
けれども、宮医は
ラスタを診察した時に、
ソビエシュが
ラスタを連れて来た後に
妊娠したと思うと言っています。
断言をしていないのですよね。
そして、ロテシュ子爵によれば
ラスタは男関係がかなり派手だった。
そして、ラスタは生理が不順だった。
ソビエシュは、
宮医の言葉を信じて、
ラスタのお腹の中の子供は
自分の子供だと信じた。
その様子を見ているラスタも
お腹の中の子の父親は
ソビエシュだと思うはず。
けれども、作者様は
お話の中に、さりげなく、
謎を解く鍵を入れているので、
やはり、ラスタの子は
ソビエシュの子ではないと、
思いたくなります。