89話 会長は仁志を叱りつけている時に倒れてしまいました。
急に倒れて驚いた。
身体の調子は、
本当に大丈夫なのかと
祖父を心配する麗奈。
祖父は、
最近、少し無理をしたようだ。
少し休めばよくなると答えると
恵美が、また家に戻ったのかと
尋ねました。
麗奈は、
とりあえず、放って置く。
そうしているうちに、
誰が祖父の味方で、
誰が恵美の味方かが分かり、
一度で片付けられると
答えました。
祖父は、仁志のことを心配しましたが
麗奈は、
事前に話をしておいたので、
そんなに心配することはないと
言いました。
続いて、麗奈は、
恵美が相川の口を塞ぐために、
裏金口座にあるお金を
使う可能性が高い。
そうすれば姿を消した佐藤亜希を
見つけるかもしれないと
言いました。
そして、祖父の手を握ると、
自分をWJリテールの
本部長にしてくれたことに
お礼を言いました。
祖父は、麗奈を助けることができて
良かったと返事をし、
麗奈の手を握り返しました。
雅紀は、
璃香が仁志の実の娘であると
思っているはずだから、
何も話すなと言った
恵美の言葉を思い浮かべながら、
璃香は、レストランで雅紀を待ち、
ため息をつきました。
そこへ、ニッコリ笑いながら
雅紀が現われました。
少し遅れたことを謝る雅紀に、
璃香は大丈夫だと返事をしました。
璃香は、
自分たちは、
これからどうなるのかと尋ねると
雅紀は、
璃香がどうするかによると
答えました。
璃香がイラッとすると、
雅紀は笑いながら、冗談だと告げ、
自分は璃香とうまくやっていきたいと
言いました。
璃香は、分かったと返事をすると、
少しだけ我慢すれば、
自分の欲しい物を
手に入れることができると
考えました。
家に戻った麗奈を
エプロン姿の智彦が出迎え、
お腹が空いているのではないかと
尋ね、彼女の手を取り、
食卓へ連れて行きました。
テーブルの上に、
美味しそうな料理が
並べられていました。
最近、智彦は仕事が忙しいのに、
いつ、これを作ったのかと
尋ねると、彼は偉そうに、
しっかり食べないと力が出ないと
答えました。
麗奈はお礼を言い、
2人はテーブルに着きました。
智彦は、
麗奈の祖父の具合を尋ねました。
彼女は、
思ったより大丈夫だけれど、
しばらく安静にする必要があると
答えました。
続いて智彦は、
やはり自分は、父親の会社に
入らなければならないようだ。
自分の居場所を
取り戻す必要があると告げました。
「自分の居場所?」と
尋ねる麗奈に、智彦は、
自分が最初に
西江グループに入った時、
祖父は、自分が、
父親の後継者になることを
望んでいた。
しかし、兄は、
自分の地位を奪われると思い、
自分のすること全てを
邪魔し始めた。
それ以来、社内で、
兄弟喧嘩だとか、
派閥争いだという噂が広まり、
結局、自分が、
会社を設立するという口実で、
一歩退いたと話しました。
麗奈は、頷きました。
そして、智彦は、
その時は、兄が、
きちんと会社を率いてくれるという
期待があったけれど、
最近、兄の動きが尋常ではなく、
一部の系列会社の帳簿を操作して
裏金を作っているらしい。
兄が、もっと危険なことをする前に
今からでも、全てを
元の場所に戻したいと話しました。
麗奈は、智彦の兄が
危険な人だと指摘し、
大丈夫なのかと心配しました。
彼は、ニッコリ笑いながら、
それは自分がよく知っているので
心配しないようにと
返事をしました。
そして、卵焼きを、
麗奈のご飯の上に乗せました。
キョトンとする麗奈に智彦は、
冷めてしまうと思った。
美味しい時に
食べなければいけないのに、
真面目過ぎる話をしたと謝りました。
麗奈は卵焼きを見つめながら、
そう言えば、
今まで一度もこんなことはなかった。
実の母にさえ、
してもらったことがないと思いました。
麗奈は、卵焼きを食べると
本当に美味しかったので、
感動しました。
その彼女を見て、智彦は心配すると、
麗奈は、箸を置き、
実の母親に会ったことを
打ち明けました。
生きていたのかと驚く智彦に麗奈は、
実の母親がジェイミーであること、
自分が赤ちゃんの時に火事に遭い、
彼女は、
自分が死んだと思っていたこと、
随分、後になって、
自分が生きていることを知ったこと、
そして、こうして会うことになった。
自分に母親はいないと思っていたのに
元気に生きていた。
とてもおかしな話だ。
どうして、こうなったのかと
悲しそうな顔で話しました。
智彦は、麗奈に
大丈夫かと尋ねました。
彼女は、手で顔を覆い
震えながら、
本当に大丈夫だと答えました。
智彦は、
涙を浮かべる麗奈の頭を抱え
自分に引き寄せると、
全然、大丈夫ではない。
もう、無理に我慢する必要はない。
大丈夫でなければ大丈夫でないと
大変なら大変だと、
素直に話していい。
自分がそばにいるから、
2人一緒にいるのだからと
言いました。
麗奈は、智彦を抱き締め、
頷きました。
そこへ、浅井から
会長の具合が急に悪化し、
意識が戻らないとメールが届きました。
病院に駆け付けた麗奈は、
祖父の手を握りしめながら、
祖父の状態について、
浅井に尋ねると、彼は、
長い間、心臓に問題があり、
また調子が悪くなったようだと
答えました。
また良くなるよねと
尋ねる麗奈に、浅井は、
治療をしながら見守ることになると
答えました。
麗奈は、
自分にこれ以上謝らないで、
早く元気になって欲しいと
心の中で祖父に語りかけました。
浅井は、
麗奈の顔色が悪いので、
少し休んだらどうかと勧めました。
麗奈は、
自分は大丈夫だと返事をし、
彼にお礼を言いました。
そこへ、
璃香から電話がかかって来ました。
彼女は、雅紀と一緒に
今日、会いたいと告げました。
久々に、智彦が登場しました(^^)
堤家は財閥なので、
継母の涼子が生きていた時も、
麗奈の食事はお手伝いさんが
作っていたと思いますし、
彼女が堤家に引き取られてすぐに
恵美に毒入りのマカロンを
食べさせられたと思うので、
それ以降、麗奈は
出来立ての料理を食べたことがないし、
愛情のこもった料理を
食べたことがなかったのだと思います。
麗奈のために用意された食事と
温かいうちに食べてという
何気ない言葉。
ごく当たり前の日常を
過ごせることは、
幸せなことなのだと思います。
ジェイミーは、
麗奈と離れ離れにならなければ
彼女に手作りの料理を
食べさせ続けたはず。
金と権力に目がくらみ、
2人から平凡な日常を奪った恵美が
本当に憎たらしいです。