自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 83話 ネタバレ 原作 あらすじ 愛を愛だと分からない男

 

83話 クロディーヌはマリーに謝りました。

 

鏡の中で目が合ったメイドに向かって

クロディーヌは、

淡々と謝罪の言葉をかけました。

メイドはびっくりして

持っていた櫛を下ろすと、

そんなことを言わないで欲しい。

すべて自分が

うまく立ち回らなかったせいだと

返事をしました。

 

しかし、クロディーヌは

それを否定し、

自分が愚かだった。

マリーを、そんな苦境に

陥れるべきではなかったと言うと

ため息をつきながら

ドレッサーの前から立ち上がりました。

皇太子夫妻を迎えるための

化粧を終えた彼女は、優雅で美しく、

すでに、

このアルビスの女主人と言っても

遜色がない姿でした。

 

クロディーヌは

マリーの手をギュッと握りながら

彼女への借りは絶対に忘れないと

言うと、もう一度彼女に心から謝り

お礼を言いました。

その言葉に、

メイドの目頭が赤くなりました。

長い間、

ブラントの令嬢に仕えて来たけれど

このような言葉を聞くのは

初めてでした。

いつも高慢で自負心が溢れている

伯爵家の令嬢を愛して来た彼女にとって

胸が張り裂ける姿でもありました。

 

マリーは、

これは全てレイラのせいだと

言いましたが、クロディーヌは、

そんなことを言わないように。

自分の考えが浅はかだったせいだと

言うと、

このくらいで寝室を出ました。

皇太子夫妻が到着するには

まだ少し時間がかかるようでしたが、

憂鬱な気分で、

部屋の中に閉じこもっていたくは

ありませんでした。

 

まだ荒れ果てている温室を

一周したクロディーヌは、

生き残った植物と鳥を移しておいた

サンルームに足を向けました。

愚かな庭師に対する苛立ちと怒りが

改めて沸き上がろうとした頃、

浅はかなことをして、

傷ついた心は、もう完全に癒えたかと、

背後から馴染みのある声が

聞こえて来ました。

 

クロディーヌが振り返ると、予想通り

リエットが立っていました。

目を伏せたのもつかの間。

クロディーヌは、結局、虚しく笑うと

テーブルの前に座りました。

甘い花の香りと鳥たちの歌声のおかげか

心が一層楽になりました。

 

クロディーヌは

リエットの素晴らしい慰めに

感謝しました。

「どういたしまして」と

笑顔で答えたリエットは

向かいの席に座りました。

 

クロディーヌは

日常的な会話を続けていましたが、

突然、

このことが問題になるなら

それは純粋にレイラのせいだと

思っていたと、話題を変えました。

 

リエットは、

あまり心配しないように。

男が女に夢中になっている時は

何でもできる種族だ。

そのうち、

すぐに飽きてしまうものだと

言いました。

 

しかし、クロディーヌは、

一般的な男ならそうだろうけれど

あの男は、

マティアス・フォン・ヘルハルトでは

ないかと、

ため息をつくように反論しました。

クロディーヌの言葉に

リエットは反論できませんでした。

 

あの日、マティアスが見せた姿は

確かに予想外でした。

何も知らない人たちから見れば、

メイドに欺かれた自分の女のために

献身的な

婚約者の姿だっただろうけれど。

 

クロディーヌは、やや疲れた眼差しで

リエットを見ると、

あの男が誰かに愛着を持った姿を

見たことあるかと尋ねました。

そして、

自分は一度もない。

あの男は自分の母親にさえ

特別な愛着がない人だと言いました。

リエットは、

飛躍し過ぎだと言いたかったけれど

否定できませんでした。

 

それからクロディーヌは、

あんな男が、メイドに執着するなんてと

ぼやくと、リエットは、

厳密に言えば、

レイラ・ルウェリンはメイドではないと

言いましたが、クロディーヌは

違いはないと反論しました。

落ち着いた口調のため、

クロディーヌの声は

さらに冷たく聞こえました。

 

あの男が

あんな嘘をついたあの日に、

もっと早く気づくべきだったと

自嘲するクロディーヌの目つきが

徐々に深まって行きました。

 

庭師の小屋に泥棒が入った

あの夏の朝、クロディーヌは

一人で散歩に出かける

マティアスを見ました。

おそらく、

川辺の離れに向かうようでした。

 

庭で、生け花のためのバラを

切っていたクロディーヌは、

衝動的に婚約者の後を追いました。

マティアスが離れに

他人をあまり入れないということは

知っていましたが、だからこそ、

そこに入ることを

許可してもらいたいと思いました。

ちょうど花がいっぱい入った

籠があったので、

花瓶を飾ってあげるという

言い訳をしても良いと思いました。

 

マティアスは、いつもより広い歩幅で

歩きました。

クロディーヌが彼を追いかけるのに

息が切れそうになる頃、

マティアスは川沿いの道で

突然、立ち止まりました。

マティアスの前に、

反対側から歩いて来たらしい

見知らぬ中年の男が立っていました。

 

クロディーヌは急いで

木の後ろに身を隠しました。

あの時は、

その理由がわからなかったけれど

今になって思えば、

一種の本能のようなものだったのでは

ないかと思いました。

 

その場面自体は、

それほど印象的なものでは

ありませんでした。

招かれざる客をじっと見つめていた

マティアスと、

慌てながら何を言っているのか

必死にしゃべっている見知らぬ男。

大したことではないと判断したのか

マティアスは、

すぐに彼の横を通り過ぎ、

その男も慌てて姿を消しました。

 

クロディーヌはしばらく悩んだ末、

気が変わって邸宅に戻りました。

そして、まもなく庭師が

レイラの学費を盗まれたことで

アルビスが騒然となりました。

 

気の毒だけれど、

自分には関係ないので、

関心を持つのを止めたそのことに、

再び興味が湧いたのは、

数日後の朝、警官たちが

公爵邸まで訪ねて来たからでした。

 

もしかしたら、その日、

見知らぬ怪しい人を

見たことがあるかという質問に、

マティアスは平然と、

見ていないと嘘をつきました。

 

マティアスは、その日、

見知らぬ男を見たに違いないのに

一体どうしてなのか。

クロディーヌは、マティアスの態度を

理解できませんでしたが、喜んで

彼の共犯者になることにしました。

ひょっとしたら、その時すでに

その嘘の理由がレイラだということを

予感していたのかも

しれませんでした。

そして、

あの見知らぬ男が、

まさにレイラの学費を盗んだ犯人であり

その犯行をそそのかしたのが

息子の結婚を阻止しようと血眼になった

エトマン夫人だということが

明らかになったその日に、

その予感は、

現実のものとなりました。

 

自分の婚約者が

あの子を欲しがっている。

それを知った日、

クロディーヌは少し笑いました。

孤高のヘルハルト公爵が嘘をついて

計略を巡らせながら、

たかがレイラ一人を

手に入れようとするなんて。

それに、その方法というものが、

その子が得られる最善の人生を

壊すことだなんて。

 

つまらない男たちと変わらず、

拙劣な欲望を持った婚約者に

ややがっかりしたものの、あえて

気にしたくはありませんでした。

あの男は

マティアス・フォン・ヘルハルトで

相手はたかがレイラだから。

ところが、そのレイラなんかに

こんな屈辱を受けるとは

夢にも思いませんでした。


リエットは、

心配しないように。

その愛着が本物だとしても、

マティアスがあの子を、

公爵夫人の座に座らせるわけがないと

慰めました。

しかし、クロディーヌは

快く頷くことができず

「そうでしょうか?」と呟きました。

とんでもない考えだと

分かっていながらも、

クロディーヌは不安になりました。

しかし、今度は切なる願いを込めて

「そうですよね?」と

聞き返しました。

目を細めてクロディーヌを見ていた

リエットの唇から

長いため息が漏れました。

 

彼は、

そんなに不安なら、

いっそのこと放っておけと

提案しました。

クロディーヌは、

それはどういう意味なのかと

尋ねました。

リエットは、

愛が愛だということが

マティアスに分からないように。

全く分からないまま

彼女を失うことになるように

放っておけと答えました。

 

クロディーヌは、

まさか、ヘルハルト公爵が

自分の感情一つも分からないと

思っているのかと尋ねました。

リエットは、

クロディーヌの疑いの眼差しの前でも

もし本当に愛しているなら、

マティアスは分からないだろうと

断固として答えました。

そして、マティアスは、

そのような感情が何なのか

一生知らずに生きてきた。

だから、

それが何なのか見当もつかないから

気づくこともできないだろうと

リエットは言いました。

 

クロディーヌは、

そんなことはあり得ないと

反論しましたが、

リエットは、それを否定し、

マティアスを刺激してはいけないと

クロディーヌのために、

心からアドバイスしました。

 

愛する女性が

無事にいとこの妻になることを願う

アドバイスをするなんて、

自分が情けなくて

笑いがこみ上げて来ましたが、

それでも、リエットは、

クロディーヌの幸せを願いました。

その幸せが

ヘルハルト公爵夫人の座にあるなら

喜んでそれを与えたいほど。

 

リエットは、

わざわざレイラ・ルウェリンに

手を出して、マティアスに

彼自身の感情を

気づかせるなという意味だ。

人の気持ちは本当におかしい。

愛が愛だと気づいたら

止められなくなると言いました。

そして、

君への僕の気持ちのようにという

伝えたい言葉の代わりに、

リエットは軽い笑みを浮かべました。

 

折しも、廊下の向こうから

人の気配を感じたので、

二人の会話は、そこで途切れました。

まもなく姿を現したのは

礼服姿のヘルハルト公爵でした。

 

リエットの前を通り過ぎた彼は

すぐにクロディーヌに近づき、

白い手袋をはめた手を

差し出しました。

 

皇太子がもうすぐ来るので行こうと誘う

マティアスの優雅な微笑と

身振りのどこにも、

クロディーヌを窮地に追い込んだ

あの日の冷酷な姿は

見当たりませんでした。

瞳が揺れたのもつかの間。

クロディーヌは、

婚約者と同じくらい

自然な笑みを浮かべて

その手を握りました。

 

「はい、ヘルハルト公爵」と言う

明るく陽気な声が

リエットを失笑させました。

ある意味、

天が与えたカップルだと思いました。

首を横に振ったリエットも

すぐ席から立ち上がりました。

 

まもなく三人は

皇太子夫妻を出迎えるために

人々が並んでいるロビーのホールに

到着しました。

そこでリエットは、

使用人たちの群れの最後尾に

静かに立っている

ヘルハルト公爵の女レイラを

発見しました。

皇太子夫妻を乗せた車が到着すると、

待機中だったカメラマンたちが

慌ただしく動き始めました。

ヘルハルト公爵と旧友とのことでしたが

帝国視察中の公式訪問であったため、

それにふさわしい儀典が

整っていました。

長年アルビスで過ごし、

数多くの貴賓の訪問を見てきたレイラも

今回だけは、改めて驚くほど

大きくて華やかな規模でした。

 

レイラは緊張と期待で

目を輝かせている使用人たちの群れの

最後尾に立ちました。

公爵は婚約者のブラント令嬢と一緒に

姿を現しました。

腕を組んで並んで立った彼らは、

フラッシュを浴びても

緊張した様子がなく、

余裕がありました。

 

深夜、隠れて会う男と

全く別人になったヘルハルト公爵を

レイラは、ややぼんやりとした目で

見つめました。

控えめで上品な態度のどこにも

レイラが知っている

あの狂った男の痕跡を

見つけることができませんでした。

 

高貴な令嬢の男である彼は

あんな姿なんだと思ったレイラは

ゆっくりと瞬きしました。

 

赤いカーペットが敷かれた階段を

下りてきたマティアスとクロディーヌは

優雅な笑みを浮かべた顔で

皇太子夫妻と向き合いました。

会話の声が聞こえないほど遠い距離でも

お互い、相手に対する態度が

とても親密であることを

生々しく感じることができました。

ヘルハルト公爵はもちろん、

ブラント令嬢もそうでした。

 

公爵の礼服を飾る眩い徽章を見ていた

レイラは、

思わず後ろに手を隠しました。

何も握っていない指先が

突然ヒリヒリしました。

それは、

何度も煌めく鳥の羽を撫でていた手で

クロディーヌがくれるお金を

丁寧に受け取らなければなかった

手でもありました。

 

レイラは頭を下げて

つま先だけを見下ろしている間に

皇太子夫妻とその随行団が

階段を上りました。

 

もう全部終わったと、

苦々しい安堵感を覚え、

そっと目を上げたレイラは、

すぐに深く後悔しました。

クロディーヌが振り返って、

正確にレイラの方を見下ろしながら

にっこり微笑んでいました。

チャリンチャリンと

金貨が揺れる音が聞こえて来るようで

レイラは背中に隠した手に

さらに力を入れました。

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母親にさえ愛着を持たなかった

マティアスが

愛が愛であることを分かってしまったら

おそらく歯止めが利かなくなるだろうと

リエットは予想して、クロディーヌに

マティアスを刺激するなと

アドバイスしたのだと思いました。

クロディーヌを愛しているのに

彼女の幸せのためにアドバイスをする

リエットに心が痛みます。

 

レイラは、

ベッドの下に鳥を隠したけれど

また取り出して、何度も羽を

撫ででいたのですね。

でも、それをくれた男は

クロディーヌと並んで立っている。

誰もいない所でしか、

マティアスと並ぶことができない

自分と、日の当たる場所で

マティアスと並ぶことのできる

クロディーヌと自分を比べて

レイラはどう思ったのか。

ビルおじさんが

立派な大人になれると言ってくれたのに

自分は日陰の身。

しかも、クロディーヌに、

彼女と自分の立ち位置の違いを

まざまざと見せつけられて、

とても惨めな気持ちに

なったのではないかと思います。

レイラは、そんな気持ちで

生きているのは嫌だと思うはず。

いっそうマティアスから離れたいと

願うようになるのではないかと

思いました。

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