外伝67話 ナビエはソビエシュが本当に変だと思っています。
ソビエシュの様子が昨日から変だと
思ったナビエは、
少し体調が悪いのではないかと
尋ねました。
ソビエシュは、
おかしくなってはいないと答え
ナビエが心配してくれたことに
お礼を言いました。
しかしナビエは、彼の状態を
さらに疑っているようでした。
しかし、ソビエシュは
ナビエが自分のことを
心配してくれていることに
胸が温まり、
この夢が続いていることに
感謝しました。
ソビエシュは、ナビエの部屋から
温かい光が漏れているのを
見ているうちに、
うっかり眠ってしまったと
言い訳をしましたが、
ナビエは黙ったままでした。
それでもソビエシュは、
自分から先に帰ると
言いたくなかったので、
気まずくても、
そのまま立っていると、
ナビエは短くため息をついた後に
彼の入室を許可しました。
ソビエシュは、
ナビエが心変わりするのを恐れて
すぐに、
彼女の後を付いて行きました。
一晩中ベンチにいたせいで
足が重くてしびれていましたが
平静を装いました。
ナビエは寝室に入りながら
宮医を呼ぶよう
ローラに指示しました。
ローラがソビエシュを
不思議そうに見つめながら
急いで外に出て、
そのローラを、なぜかナビエは
少し振り返ったのを見て、
ソビエシュは、もしかしてナビエは
自分を寝室に
入れたくないのではないかと思い
わざと軽く咳をしました。
そして、首の周りを押さえながら
喉が少し痛いと呟くと、
ナビエは部屋に入ることを
許可しました。
ソビエシュは部屋の中に入ると、
大きく息を吸って、
そこの空気を感じようと試みました。
そのうち目が
覚めてしまうかもしれないので
五感を使って、
ここを覚えていたいと思いました。
しかし、ナビエは眉を顰めながら
何をしているのかと冷たく尋ねました。
ソビエシュは、
冷たい所で寝たらお腹が冷えた。
ここは暖かいので、大きく息を吸ったと、
自分でも驚くほどの
言い訳ができました。
ナビエは、お風呂に入れば、
身体の冷えが少しは収まるだろうと
話しました。
ソビエシュは、
ナビエがお風呂に
入ろうとしていたのではないかと
尋ねましたが、彼女は
自分は後で入ると答えました。
ソビエシュは、
大丈夫だと断りたい気持ちと、
ナビエの部屋に
もっといたいという欲望の間で
葛藤しました。
ソビエシュは、
ナビエが使う化粧品などの香りを
吸って肺の中に溜め込めば、
夢から覚めても、
この夢を回想しながら
少しでも嬉しい気分になれると思い
結局、
お風呂に入ることにしました。
ナビエはタオルと
バスローブをソビエシュに渡し、
バタンと扉を閉めました。
お風呂から上がったソビエシュは
バスローブを着ている途中、
脱いだ服のポケットの中に
懐中時計を見つけると、
過去に戻ったかのような
現実的な夢の中で、唯一、
存在する現実の物を見ると
変な感じがしました。
ソビエシュは懐中時計を
バスローブのポケットに
時計を入れて外へ出ました。
寝室で待っていた宮医は
ソビエシュを診察すると、
軽い風邪を引いているので、
薬を飲んで2、3日ゆっくり休むよう
告げました。
ソビエシュはチラッと
ナビエの反応を見ると、
宮医から
大丈夫だと言われたせいか、
もう心配していないようでした。
ソビエシュは宮医に、
息をするたびに咳が止まらず、
身体が少し震えるけれど、
軽い風邪で間違いないのかと
尋ねました。
宮医は、
熱はないようなので、
咳が出る時はお湯を飲むようにと
指示しました。
ソビエシュは、
足に力が入らない。
東宮まで歩いて行けるかと
尋ねましたが、宮医は、
適度な散歩は
風邪を早く治すのにもいいと
答えました。
東宮まで歩いて行くと
身体に負担がかかるので、
ここで少し休んだ方がいいと
宮医が言ってくれなかったので
ソビエシュは唇を
ぎゅっと閉じました。
宮医が出て行くと、ナビエは、
着替えて帰るようにと指示しました。
ソビエシュは力なく服を受け取り
頷きました。
カルル侯爵は、
ソビエシュが、
庭で寝て夜を明かしたことを
叱責しました。
カルル侯爵は、
軽い風邪で良かった。
皇帝の健康に
東大帝国がかかっていることを
忘れてはいけないと注意しました。
ソビエシュは、
分かったと返事をしました。
寝室に入ると、カルル侯爵は、
宮医が送って来た薬を
ソビエシュに渡し、
彼は薬を受け取って飲みました。
薬はとても苦かったので、
ソビエシュは眉をひそめると、
カルル侯爵が、
飴を口の中に入れました。
夢なのに、
こんなに薬のひどい味がすることが
不思議でした。
ソビエシュは懐中時計を取り出し、
上着を脱ぐと、
机の前に座りました。
カルル侯爵は
机の上に置かれた
高価そうな懐中時計を見て、
見たことのない時計だと、
訝し気な声で尋ねました。
ソビエシュは、この時計は
自分の「現実」から
持ってきた物だという話を
どのようにすればいいのか悩み、
すぐに答えられませんでした。
ソビエシュが、
なかなか返事をしないと、
カルル侯爵は
さらに時計を注意深く見た後、
時計の針が動かないので、
壊れていると指摘しました。
最初、この時計は
よく動いていました。
時計が止まったのは、
この夢の中に入ってからで、
今、時計は
完全に止まっていました。
ソビエシュは、
もしかしてこの現象に、
この時計が、何らかの役割を
果たしているのではないかと
考えました。
この時計は
魔法学園の前学長の遺品で、
この時計だけを
ソビエシュに残しました。
もしかして、学長は自分のために
最後に魔法を
かけてくれたのではないか。
そしてこれが夢ではなく、
本当に現実で、
過去に戻ってきたとしたら?
ソビエシュは希望に満ちながら、
魔法学園の学長と話をしたいと
言いました。
生まれた時から
皇帝になることが約束されていた
ソビエシュは、自分自身の子供以外
欲しい物は、
何でも手に入れることが
できたと思います。
けれども、ナビエ様との間に
子供はできなかった。
だから、ラスタが妊娠すると、
何としてでも、その子を
後継者にしたくて、
一時的なナビエ様との離婚を考えた。
それは、
ナビエ様と離婚をした後も、
彼女は自分のものだと
信じて疑わなかったから。
けれども、ナビエ様が
即座にハインリと再婚してしまったので
彼の計画は失敗してしまった。
それでも、ソビエシュは
自分の計画を話せば、
簡単にナビエ様を
取り戻せると思っていた。
けれども、ナビエ様は
ソビエシュを突っぱねた。
この時、ソビエシュは
初めて、失ったものの大きさに
気づいたのだと思います。
その後は後悔の日々。
だから、ソビエシュは
これがたとえ夢の中であっても
ナビエ様を失わないため、
恥も外聞もなく、
必死になっているのでしょうけれど
ナビエ様の気持ちを
全く考えずに行動するのは相変わらず。
今のナビエ様に何を言っても
ソビエシュに対する不信感を
払拭することはできないので
ナビエ様が、もう少し落ち着くまで
何もせず見守ればいいのにと
思います。