110話 麗奈は、まさか違うよねと思いましたが、妊娠検査薬は陽性でした。
麗奈は寝ている智彦を起こし、
頬を赤らめながら
妊娠したようだと告げました。
驚いて、起き上がる智彦。
そして、智彦は妊娠検査薬を見て
本当だと叫び、麗奈を抱きしめながら
自分の子が小学校に
入学することを想像したと
言いました。
麗奈は、どうしてそんなに
気が早いのかと言いましたが
智彦は、
どうしよう。
自分の娘はどこへも行かせたくないと
子供が結婚した時のことを
心配しました。
麗奈は、何を根拠に
娘だと思うのか。
息子だったら残念なのかと聞くと、
智彦は、ニコニコしながら、
麗奈が、自分に似た娘を産みたいと
言っていた。
名前は、自分たちの名前から
一文字ずつ取って決めようかと言って
もう、名前を検討し始めました。
けれども、麗奈は手首を見ながら、
刻印通りなら、
あと５カ月しかないと言って、
お腹の子供のことを心配しました。
しかし、智彦は
麗奈の手を握りながら、
大丈夫だと思うと告げ、
とりあえず、病院の予約をしようと
提案しました。
麗奈は、超音波の写真を見ても
信じられないと言いました。
しかも、子供は双子でした。
麗奈は、お腹を触りながら
この中に、自分たちの子供が
いると思うと変な気分だと
言いました。
智彦は、麗奈の手の上に
自分の手を乗せ、
この子たちを必ず守ってあげようと
言いました。
智彦は、麗奈に、
今日から、彼女は何もしないで、
全部、自分がやると言いました。
麗奈は、智彦に
本当だよね？と確認していると、
お腹が大きくなった璃香と
鉢合わせしました。
璃香は、
こんな所で会うなんてと呟き、
２人に挨拶をしました。
智彦は、冷たい顔で、
久しぶりだと返事をしました。
璃香は麗奈に、
もしかして妊娠したのかと尋ねました。
麗奈は、妊娠５週だと答え、
璃香は、少しお腹が出て来たと
指摘しました。
璃香は「ええ」と返事をし、
麗奈にお祝いの言葉を述べましたが
心の中では、
なぜ、よりによって
ここで会ったのかと思い、
歯ぎしりしました。
麗奈はお礼を言い、
璃香も身体に気をつけるようにと
伝えると、
智彦と共に立ち去りました。
璃香は悔しそうな顔をしました。
麗奈は、
これでいい。
自分も璃香も、
もう、自分の居場所を見つけたと
思いながら、ため息をつきました。
麗奈を心配する智彦に、
彼女は大丈夫だと返事をした後、
行く所があると告げました。
ジェイミーは、
自分も麗奈を妊娠していた時、
つわりで、かなり辛かった。
水を飲んだだけでムカムカした。
けれども、桃だけは
大丈夫だったと言って、
麗奈に皮を剥いた桃を差し出し、
それでも、少し我慢すれば、
いつの間にか食べたいものが
多くなると思う。
自分もそうだったと話しました。
麗奈は、
ジェイミーが１人で
大変だったのではないかと
尋ねました。
ジェイミーは、
夜中は少し大変だった。
食べたいものは多いけれど、
買って来てくれる人がいなかったと
答えました。
麗奈は、
事故で死にかけた後、
子供ができたことを知ると、
なぜか、母親のことを思い出した。
自分には母親がいないけれど
母親のことを思い出した。
知らせたいと思ったと
打ち明けました。
ジェイミーは立ち上がり、
麗奈の手を握ると、
お礼を言いました。
麗奈は、
実は少し怖い。
まだ準備ができていない。
自分は、
本当に良い母親になれるのか。
本当にこのままでいいのかと
心配しました。
ジェイミーは、
最初は自分も怖かった。
あの時は若かったし、
自分１人だけだったから。
それでも、とても麗奈に
会いたかったと話しました。
麗奈も、
とても子供たちに会いたいと
言いました。
ジェイミーは、
遅くなってしまったけれど、
自分が赤ちゃんたちの
おばあちゃんになってもいいかと
尋ねました。
麗奈は涙ぐみながら頷きました。
ジェイミーも涙ぐみ、
麗奈の頭を撫でながら
何度もお礼を言いました。
麗奈と智彦は、九条家を訪れました。
咲恵は、
智彦が家族全員を招集してまで、
話したいこととは何なのか。
大変なことに
なっていたりしないよねと
尋ねました。
麻里子も、
気になっておかしくなりそうだ。
早く話してと訴えました。
智彦は頬を染めながら、
麗奈に話すよう促すと、
彼女も頬を染めながら、
超音波写真を皆に見せました。
これは！と驚く咲恵。
超音波写真ではないか！
と叫ぶ麻里子。
麗奈は、
現在、妊娠５週目だと告げました。
そして、智彦は栄治に
もうすぐ、おじいちゃんになると
言いました。
栄治は「それは本当か？」と喜び
咲恵は涙ぐみながら、
ありがとう、よく頑張ったと
麗奈を労いました。
麻里子も宮本も
御祝いの言葉を述べました。
栄治は沈んだ顔で、
雅紀も祝えれば良かったのにと
呟きました。
智彦は刑務所を訪れ、雅紀に、
思ったより元気そうだと言いました。
雅紀は、
自分をこのような姿にして
すっきりしたか、満足しているか。
智彦がいなかったら、
自分は、こんな目に遭わなかったと
身体を震わせながら、
恨み言を吐きました。
しかし、智彦は、
勘違いをしてはいけない。
雅紀がそうなったのは、
自分のせいではなく、
彼自身のせいだ。
変なことを考えずに、
そこで、きちんと罪を償ってから
出て来い。
その時は、また自分が
雅紀の相手をすると言いました。
怒りで、身体をわなわなと
震わせながら、雅紀は、
どんな手を使ってでも、
自分の前で智彦が絶望する顔を
必ず見てやると決意しました。
麗奈の妊娠のおかげで、
彼女とジェイミーは
完全に和解できたように思います。
麗奈は、
彼女を愛してくれる人に囲まれて、
辛くて、惨めで、悲しくて
寂しかった20数年を
少しずつ忘れていくことが
できるのではないかと思います。
雅紀が捕まって、
ようやく、落ち着いたかと
思っていたら、
まだひと悶着ありそうな予感。
智彦も、
雅紀のことなんて放っておいて
わざわざ彼を煽るようなことを
しなければいいのにと思います。
