260話 いよいよ新しい連合の発足です。
◇幸せですか?◇
会議室で
いくつかの手順を踏んだ後
最後に大神官が書類にサインをし
帝国連合が発足しました。
嬉しい反面
帝国連合に所属する騎士団の
第1騎士団長職として
コシャールの名前が書かれていたので
ナビエは心配でした。
父親が東大帝国の
皇帝代理をしているので
その後継者が
西大帝国の騎士をしていては
立場が微妙になると思い
自分で志願したようでしたが
本当に理由はそれだけなのか
ナビエは気になっていました。
コシャールのことを考えていた時
大神官がやって来て
時間を割いてもらえないかと
彼女に伝えました。
大神官は他の人たちが出て行って
ナビエと2人だけになるのを
待っていたので
どんな重要な話をするのかと
ナビエは緊張していると
大神官は、
彼女に「幸せですか?」と
尋ねました。
ナビエはもちろんだと答えると
大神官は微笑みながら
全ての子供が可愛いけれども
ナビエ様のことは
子供の頃から知っているので
とても気になると言いました。
ナビエは大神官に
お礼を言った後で外へ出ました。
柱に寄りかかって
ナビエを待っていたハインリに
彼女が大神官のそばにいると
本当の天使に
なってしまいそうで不安だ
と言われ
ナビエはゾッとしましたが
彼の澄んだ笑顔を見て
ナビエも微笑みました。
大神官と何を話したか
ハインリに聞かれたので
ナビエは秘密だと答えました。
この後、ハインリが、連合の首長になった途端、秘密を持つようになった、忙しいと言って、顔もみせてくれないのでは、とナビエに駄々をこねるのですが、ナビエは適当に返事をします。けれども、誰もいないことを確認した後で、ハインリの口の端にキスをして、足早に歩き始めます。クイーンと呼びながらナビエを追いかけてくるハインリに、ナビエは微笑みます。
◇祈り◇
一人で会議室に残っていた大神官は
ナビエに言った言葉を
思い出していました。
彼は、心からナビエが
幸せになることを
望んでいました。
そして、もう1人
彼のバカな行動に腹を立て
今でも彼のことを
少し怒っているけれども
子供の頃から知っている
ソビエシュも
痛みを忘れて欲しいと思いました。
大神官が会議室の外へ出ると
随行してきた司祭が
彼を待っていました。
大神官はソビエシュと
話をしたいと申し出ていましたが
彼がナビエたち一行を
こっそり見に行った後
また様子がおかしくなり
誰にも会いたくないと
言っているようでした。
大神官の体調が気になる司祭は
一度部屋へ戻るように
提案しましたが、
大神官は
ラスタが閉じ込められていた塔へ
行ってみると言いました。
数か月前の東大帝国からの報告に
大神官は腹を立てましたが
ラスタとまともに
話ができなかったことが
気にかかっていました。
せめて、彼女が
良い所へ行けるように
祈りを捧げたい
と大神官は言いました。
◇勝利のパーティ◇
ソビエシュは
一度も赤ちゃんを見に来ることはなく
連合が発足したお祝いのパーティーにも
出席しないようでした。
パーティのために
ナビエは金色のドレスを着て
王冠を被り
カイとラリには
ナビエのドレスの色に似ている
黄色の服を着せました。
ハインリはいつもより
きらめく礼服を着て
ナビエたちを迎えに来ました。
ハインリがラリを
ナビエがカイを抱き、
かつてソビエシュがナビエを
エスコートして降りた
階段の上に
ナビエはしばらく立っていました。
当時、ソビエシュは
ナビエを置き去りにして
ラスタの所へ行ってしまったので
人々に憐みの目で見られましたが
今は、そんな目で見る人は
誰もいませんでした。
ナビエは片手にカイを抱いて
ハインリにもう一方の手を
取ってもらい
階段を降りました。
かつての侍女たちが
ナビエの周りに集まって来て
カイを褒めてくれたので
カイはご機嫌でした。
彼女たちはラリも
チラチラ見ていましたが
ハインリがラリを抱きながら
傲慢に顎を上げているので
話しかけることが
できませんでした。
別の方を向くと
ナビエはふくれっ面をしている
ホワイトモンド王を見つけました。
何か話した方が良いかと
思っていると
トゥアニア公爵が
ニアンのことを聞こうとして
ナビエに近づきました。
しかし、彼女が答える前に
ランドレ子爵が
100人の人が嘘をついても
その人の言うことだけを
信じる恋人と
幸せに暮らしていると答えました。
男同士の間で火花が散っているような気が・・・
◇懐かしい場所◇
3時間ほどたち
ナビエはラリを連れて
外へ出ました。
カイとハインリも
連れてこようと思いましたが
カイを抱いて、
あちこち自慢し歩いてる
ハインリは置いてきました。
ナビエは、懐かしい場所を
散歩しながら、
これは、お母様が
一番好きだった木、
夏になると白い花が咲くの。
ここはお父様とお母様が
初めて散歩した場所よ、
とラリに話しかけて、
噴水を指差すと
楽な服装をした
ソビエシュが立っていました。
彼はナビエを発見したのが
意外だったのか
ぼんやり立ったまま
ナビエの方を見ていました。
大神官は、内心では
ソビエシュとナビエ様に
離婚しないでいて欲しかったのかなと
思いました。
だから、ソビエシュのことを
今でも、少し怒っているのかなと
思います。
大神官に堂々と
幸せだと宣言することができ、
1年ほど前、ソビエシュに
惨めな思いを
させられたのも同じ階段を
子供を抱きながら
ハインリにエスコートされて
降りるナビエ様。
一方、大神官との話を拒絶し
心を病んで
パーティにも出席できない
ソビエシュ。
ソビエシュが、大神官の
助言を受け入れていたら
ナビエ様とソビエシュは
夫婦のままだったかもしれませんが
誰もいないのを見計らって
夫にサッとキスをする
可愛い奥さんに
ナビエ様はならなかったかなと
思います。