95話 偽親に行方不明の娘の話をした貴族が、エルギ公爵と話をしているのを見たラスタでしたが・・・
◇信頼できる人◇
エルギ公爵と貴族の2人が
何を話しているか
聞こえませんでしたが
深刻そうな顔をしていました。
ラスタは、もっと近づいて、
話を聞きたかったけれども
足音が聞こえてしまうような
気がしました。
それに、いつもは、
プレイボーイのエルギ公爵が
話をするのは女性ばかりなのに、
男性と深刻そうな話をしているのも
気になりました。
ラスタは、モヤモヤしていましたが
その日の夕方、
偽親の前で
行方不明の娘たちの話をした貴族が、
ティーパーティーの席で
失言したことを
エルギ公爵に怒られたと言って
謝りに来たので、
すっきりしました。
自分の周りにいる人で、
信頼できるのは
エルギ公爵だけなのに、
そのエルギ公爵も
疑わなければならないのかと
ラスタは不安だったからでした。
その貴族は、
エルギ公爵はラスタのことが
大好きなようだと告げると、
2人の仲を怪しんでいるかのように
意地悪そうに笑いながら
ラスタのような魅力的な美人なら
誰の心も捕まえるのは
簡単だろうと言いました。
貴族が帰った後、
ラスタは顔を赤くしながら
エルギ公爵は、ハインリ王子と
恋仲ではなかったかと
首を傾げました。
しかし、エルギ公爵はあらゆる女性と
浮名を流しているし
ハインリ王子との手紙も、
おふざけだったのかも。
それに、初めて会った時から、
ラスタに優しくしてくれたし
ラスタのことを、
好きとも言ってくれたし・・
ラスタは顔を赤くしながら
ところで結婚式は、
いつ挙げるのだろうかと考えました。
◇結婚式の準備◇
ナビエは、
朝食の準備をしてくれたローズから
なるべく早く結婚式を挙げることと
ハインリが結婚式の準備をすると
弟が話していたと聞きました。
ハインリが結婚式の準備をする話は
初めて聞いたので
ナビエは驚きました。
ローズは、ナビエ自身が
結婚式の準備をしたいのかと
ナビエに尋ねましたが
彼女はそれを否定しました。
クリスタが、
結婚式の準備をすることで
彼女の勢力を広げないために
ハインリが、
自分で結婚式の準備をすると
決めたのだろうと思い、
ナビエは笑いましたが
その後、前の晩の出来事を
思い出してしまいました。
食事をすることで、
ハインリの・・・の姿を
追い払おうとしましたが
もっと強烈に、
思い出してしまいました。
ナビエは、スープを少し飲んだ後
スプーンを置いて立ち上がりました。
ローズは西王国の食べ物が
口に合わないのかと
ナビエに尋ねましたが
彼女はそれを否定し
ローズに、ハインリの所へ行くのに
適当な時間を知らせてくれるように
頼みました。
◇顔が見られない◇
ナビエは、
ハインリの顔を見るのが
恥ずかしかったので、
気持ちを落ち着かせるために、
数字を数えながら
ハインリの執務室まで
歩いていったところ
執務室の前で、
クリスタに会ったので
恥ずかしい思いをしなくて
済みました。
ナビエとクリスタが
一緒に執務室へ入ると
ハインリは驚きました。
執務室の前で会ったと伝えると
ハインリは納得しました。
クリスタは、
ハインリ自ら
結婚式の準備をすると聞いたけれど
それは本当かと尋ねた後、
ハインリの兄嫁であり、
先代の王妃である自分が
結婚式の準備をするのが、
一番いいと、彼に伝えました。
ハインリの眉が吊り上がりました。
彼は、困ったように笑いながら
ダメと言おうとしているようでしたが
クリスタは
ハインリの亡くなった兄の
奥さんなので
彼が彼女とぶつかるのは
良くないと思ったナビエは
ハインリが断る前に
変わった結婚だから
準備も変わった方がいい。
最初に決めた通りにするようにと
ハインリに告げました。
すぐ横にいるナビエに
反対されると思っていなかった
クリスタは
怒りはしなかったものの
少し驚いた顔をしていました。
クリスタは、
ハインリとナビエに謝った後
静かに部屋を出ていきました。
ナビエは、力のない弱い動物を
突き放したような気分になりました。
なぜかクリスタと対峙すると
気持ちが悪くなりました。
クリスタより立場の弱いラスタに
そんな気分にならなかったのは、
ラスタが自分の常識では
到底理解できない発言をしたり
妹のように扱ってくれとか
自分の物を勝手に使ったり
じぶんの真似をしたからだけれど
クリスタの行動は、
ナビエの常識の範疇なので
すっきりしないのではないかと
思いました。
しばらく考え込んでいた
ナビエを心配して
ハインリは彼女に声をかけました。
ハインリは、クリスタが
執務室の近くに来ることは
問題ないか慎重に尋ねました。
ナビエは大丈夫と答えました。
そして、我に返ると
結婚式の準備で、
手伝えることがあれば
手伝いたいとハインリに伝えました。
ハインリは、ナビエのために
結婚式の準備をするので
ドレスのサイズ以外のことは
自分で準備すると言いました。
ハインリがサイズと言った途端
クリスタがいた時には忘れていた
ハインリの
裸の姿を思い出してしまいました。
ナビエは、顔が熱くなったので
横を向きました。
ハインリはナビエが
怒っているのかと思い
跪いて、
ナビエの顔を覗き込みました。
ナビエは、
ハインリの紫色の瞳を見て
クイーンの瞳を思い出し
さらに顔が熱くなってしまったので
唇を噛み、身体を横に向けました。
ハインリは、ナビエが
本当に怒っているのではないかと
心配していました。
彼女は、
いつまでも
恥ずかしがっていないで、
ハインリに
秘密を話す機会を与えよう。
ハインリだって
じぶんを騙しているのは
気になるし不便だろうと考えました。
ところが、ナビエは、
ひょっとして、
じぶんを騙していることはないかと
聞くつもりだったのに
結婚式に、
カフメン大公を招待してほしいと
言いました。
突然、カフメン大公の名前が出たので
ハインリとナビエは当惑しました。
ナビエは、結婚式の後に
ハインリに
話をしようと思っていましたが
すでにカフメン大公の名前を
口に出してしまったので
ナビエは平然とし、
元々、この話を
するつもりだったふりをして
カフメン大公と一緒に、
大陸間の貿易を計画していたこと、
カフメン大公が
ソビエシュを殴ったことで
ダメになってしまったこと、
ナビエは、西王国で、
それを実現させたいと話しました。
ハインリはナビエを
自分の机の椅子に座らせ
彼は机の上に座りました。
すると
ハインリのお腹のあたりに
ナビエの目線が行くので
彼女は椅子をくるりと回し
カーテンの隙間から見える
窓の外を見るふりをしながら
大陸間交易の利点について
ハインリに説明しました。
するとハインリは、
しょんぼりした声で
怒っているのでなければ、
こちらを向いて話して欲しい。
目を背けるのはおかしいと
呟きました。
ナビエは、
ハインリの目を避けているのではないと
言いました。
氷のようで鉄のような
皇后と言われ
ソビエシュにも冷たいと
言われていたナビエ様。
けれども
ハインリの裸体が頭から離れず
必死で冷静を保とうとする姿が
いじらしいです。
ハインリと出会って
彼女の隠れた魅力が
どんどん引き出されているように
思います。
ナビエ様とソビエシュは
子供の頃から一緒だったので
互いに相手に対して
新鮮味を感じていなかったのではと
思います。