365話 アニャはカルレインが皇帝の側室になったと聞いて驚きました。
◇危険な想像◇
500年前には
男性側室がいなかったので、
アニャの頭の中で
危険な想像が膨らみました。
ドミスが死んだショックのあまり、
カルレインは
急に側室になったのかと、
アニャが嘆くと、ホリンは
タリウムの皇帝がロードだからと、
説明しようとしましたが
まだ、ロードの居場所と
ロードが現れたことは
秘密にしていたので口を閉ざしました。
黒死神団タリウム本部の吸血鬼たちが
いつ、その事実を知ったかは
知らないけれど、ホリンのように
カリセン支部の吸血鬼は、
最近、タリウム皇帝がロードだと
知ったばかりなので、
今、何をしながら
過ごしているのかも分からないアニャに
この話は、すぐにできませんでした。
彼女が黒死神団に来て、
もう一度ロードのために
生きていくと言ったら話せるけれど、
とにかく今は言えませんでした。
ホリンは、
自分もよく分からないけれど、
団長が幸せならそれでいいと
ごまかしました。
側室になったカーラインが
幸せだと聞いて、アニャは、
またもやショックを受けました。
アニャがぼーっと立っているので、
ホリンは、
地面に落ちている雪りんごを見下ろして
これを落としたけれど大丈夫かと
尋ねました。
しかし、アニャが答える前に
「泥棒を捕まえろ!」と叫び声が聞こえ
エプロンをつけた店員たちが
駆け寄って来ました。
アニャは慌ててその場を逃れました。
ホリンは躊躇いながらも、
店員を呼び止め、事情を聞いた後、
代わりにお金を払いました。
その後、新しい雪りんごを
買って持ってきましたが、
アニャの姿は見えませんでした。
彼女は
隠れて過ごしているのだろうか。
昔の仲間が、
そんなに高くない食べ物を
一つ買って食べられないほど
貧しくなったのかと思い、
ホリンは心が痛みました。
団長に、この話を
伝えなければならないと思いました。
◇一緒にいるのは嫌◇
ザイオールは、
タンベクとチョンウォルとヨンファルに
自分が怪しいと誰が言ったのかと
尋ねました。
3人は膨れっ面で
ザイオールを同時に眺めました。
彼らは、怪物を捕まえに行った時に
あらゆる苦労をしましたが、
生きたまま一晩中、
土の中に埋められる経験は
初めてだったので、
その2番目の元凶であるザイオールに
タンベクは冷たい声で、
質問を聞き返しました。 .
ザイオールは、もう一度、
自分が怪しいという話を
誰がしたのかと尋ねました。
そして、捜査することがあれば
その場でやればいいのに、
昨晩、3人は
自分が忙しいと言っても、
しきりに約束を取ろうとした。
自分をバカだと思っているのか。
昼に会おうと言ったのは、
自分を疑ったからではないかと
鋭く抗弁しました。
それを聞いたヨンファルは、
昨晩もザイオールが、今日のように
怪しい態度を取らなければ、
嫌いな者同士で
くっ付く必要はなかったと、
皮肉を言いました。
しかし、ザイオールも
ギルゴールに命じられて
彼らと行動を共にしているだけで、
やはり嫌なのは同じでした。
ザイオールは、昨晩見た通り、
ギルゴールの気性は普通ではないので
後で騎士団に
温室の修理代金を請求される前に
真実を明らかにした方がいいと
忠告しました。
チョンウォルは
自分たちを投げ飛ばしたのは
ギルゴールだと
冷たく言い放ちましたが、
ザイオールは肩をすくめ、
ギルゴールは、
そんなことを気にする性格ではないと
返事をしました。
3人の聖騎士団長は
うんざりした表情をしました。
ザイオールは、
きちんと案内しましたが、
騎士団長たちが情報を聞き出して、
頭の中で整理しようと思っても
横でザイオールが
ブツブツ文句を言っているので
それに引きずられてしまい、
捜査の役に立ちませんでした。
我慢できなくなったチョンウォルが
どうしてもザイオールが
自分たちを案内しなければ
ならないのかと尋ねましたが、
ザイオールは、ニヤリと笑い、
自分も嫌だけれど、主人の命令なので
する必要があると答えました。
◇安堵◇
3人の聖騎士団長たちが
宮殿の中を
徹底的に調査しているため、
ラティルはそわそわした心を
落ち着かせるために
カルレインを呼びました。
ラティルは、カルレインを
自分の前に座らせ、
彼の髪を三つ編みにしていました。
彼女が彼の髪に触れる度に
激しくビクッとするので、
ラティルはカルレインに
ジュースの入ったグラスを
握らせました。
普段、人の食べ物を
あまり食べないカルレインでしたが
ストローでジュースを
よく飲んでいました。
赤い何かをジュースに一滴混ぜたことは
内緒にしていました。
カルレインは、
自分の髪が好きかと尋ねました。
ラティルは、
彼の髪はきれいだから好きだと
答えました、
カルレインは、
髪の毛だけがきれいなのかと
尋ねました。
ラティルは、他の部分は
かっこいいと答えたので、
カルレインの口の端が上がりました。
ラティルは再び彼を引き寄せて
髪の毛を編みました。
カルレインは、
そんなに心配なら、言い訳をして
3人を追い出せばいいと助言すると、
ラティルは
自分の民が厄介なことに
巻き込まれないことを望んでいると
返事をしました。
カルレインは、
ラティルは良い皇帝だと褒めました。
ラティルは良い皇帝になりたいと
言いました。
そして、カルレインの頭の
両側の髪を編んだラティルは、
ヒヒッと笑いながら
彼の頭を抱きしめましたが、
カルレインと目が合うと
ぎこちなく手を下ろしました。
カルレインは、
どうしたのかと尋ねると、
ラティルは、
そのように見つめられると
変な気分になると答えました。
カルレインは、
自分がどんな風にラティルを
見つめているのかと尋ねると、
ラティルは、
分からないと答えました。
カルレインは、
ラティルが先に言い出したと
からかいましたが、
ラティルは黙って
彼の肩に額を当て、笑いながら、
カルレインの手を触りました
彼は、ラティルが、
5人一緒にベッドに横になってほしいと
言い出した時は、
きちんと話していたと皮肉を言うと
ラティルは、
あれは偽装だったからと
言い訳をしました。
カルレインは、ラティルが、
本当にあのようなことが
好きなのではないかと思い
ショックを受けたと言いました、
ラティルは、
自分は変態ではないと
きっぱり返事をしましたが、
みんなで横になっていると
本当に嬉しかったという感想は
一生秘密にすることにしました。
そうこうしているうちに、
誰かが扉を叩きました。
入室を許可すると、
聖騎士団長3人が入って来ましたが、
途中で驚いて後ずさりしました。
ラティルはカルレインに
起きるようにと合図し、
聖騎士団長3人には
近くに来るよう手招きしました。
タンベクは真っ赤な顔で、
調査のために歩き回っていた時、
突然、百花卿が近づいて来て、
彼が皇帝と姫に
被害を与えたのかもしれない。
前に姫がここに来た時、
最後に彼女に会ったのは彼で、
皇帝を疑っている姫に、
本当に疑わしい所は他にあるのに、
ここでこうしている理由が
分からないと言って、
彼が怪しいと思い注目していた場所の
位置を姫に教えた。
それを聞くや否や、
姫が飛び出して行ったことを
暗い顔で話してくれたと、
いつもの3倍の速さで話しました。
ラティルは瞬きをし、
拍手をしたくなりました。
しかし、タンベクの耳まで
赤くなったのを見て、ラティルは
彼女に、息切れしていないかと
尋ねました。
タンベクは、大丈夫だと答えましたが
この純真な聖騎士団長は、
ラティルとカルレインの愛情行為に
脳が限界まで追い込まれたようなので
彼女は、カルレインに出て行くよう
頭で合図をしました。
カルレインが出て行くと、
ようやくタンベクは落ち着いたようで
そっと顔を上げてラティルを見ると
謝りました。
ラティルは肩をすくめて笑い、
自分たちに対する疑いは
解けたのかと尋ねると、タンベクは
百花に聞いた場所へ
行ってみるつもりだと答えました。
ラティルは「良かった」と言って
胸に手を当て、
安堵のため息をつきました。
ラティルは、
もう二度と来ないでと
冗談めかして言うと
3人とも口を開けて笑いましたが、
ラティルは本気でした。
お守りをすり替えた件も
どうにかなりそうだし、
百花がよくやってくれたと
思いました。
◇目立たないで◇
行方不明になった人を
探しに行くと言って、
聖騎士団一行は、夕方なのに
すぐに出発する準備を始めました。
遠くから、その姿を見ていた
月楼の王子は、
「役に立たない」と悪口を吐きました。
一方、ラティルは
仕事が上手く解決して、
気分が良くなったので、
彼らを直接見送るために
宮殿の正門まで出て来ました。
気をつけて帰るようにと言って
彼らを見送るラティル。
彼女の協力に感謝するタンベク。
互いに挨拶を交わした後、
3人の聖騎士団長が
馬に乗って遠ざかる後ろ姿に
ラティルは嬉しそうに手を振りました。
そして、彼らが見えなくなると、
ラティルは百花を褒めるために
ハーレムへ向かいました。
温室の近くを通る時、
思いがけず、ザイオールが
慌ててラティルの方へ
走って来ました。
ラティルは、
どうしたのかと尋ねると、
ザイオールは、
この話をしてもいいのかどうか
分からないという表情で
焦っていましたが、
ラティルの顔色を窺いながら、
先程、ギルゴールが
彼らの後を追いかけたと告げました。
ラティルの表情が一気に固まりました。
彼女は、その理由を尋ねると、
ザイオールは、
やはり、まだギルゴールの怒りが
収まっていないようだと答えました。
一晩中、彼らを土の中に埋めても、
まだ怒りが解けないなんて。
ラティルの顔が青ざめました。
ミロの姫がここに立ち寄った後に
行方不明になり、
今度は他の聖騎士団長3人が
行方不明になったら、
タリウムの宮殿がどう思われるか、
とても心配になりました。
ラティルの後ろに立っている
サーナット卿も
彼をそのままにしてはおくわけには
いかないと、
強い口調で言いました。
しかし、ザイオールは、
ギルゴールを
そのまま放置したら
彼はどうするつもりなのかという
顔をしていました。
ラティルも、怒っていましたが
ザイオールと同じ考えでした。
彼女は頭を押さえながら、
ギルゴールは、
聖騎士団長たちに付いて行って
彼らを埋めるとか、
どうするのかという話を
していなかったのかと尋ねました。
その質問に対しザイオールは
ラティルの顔色を窺いながら
ギルゴールは、
かなり頭脳明晰なので
興奮さえしなければ、
尻尾を掴まれることなく
うまく処理するだろうから
心配しないようにと言いました。
ラティルは、
彼は、どのように
それをするのかと尋ねると、
ザイオールは、
彼らにつきまといながら
隙を狙っているのではないかと思うと
答えました。
ラティルは両手で髪を
クシャクシャにしました。
直ちにカルレインやサーナット卿に
その洞窟の位置を知らせ、
ギルゴールを止めろと
命じたかったものの、
カルレインとサーナット卿の両方が
ギルゴールより弱いという点が
問題でした。
3人だけになった時、
ギルゴールが2人に
何をするかわからないので、
彼らを送り出すのは危険でした。
ギルゴールは、
本当にどこに飛んで行くか
分からないので、
問題を起こすなら、
どうか目立たないように
起こして欲しいと思いました。
◇執着◇
アニャは皿を持って
ドミスを呼びながら
棺桶に近づきましたが、
彼女は依然として体が動かないようで
アニャが出かける前の姿勢のまま
じっと横たわっていました。
しかしアニャの声を聞いて、
かすかに瞼を上げました。
そしてドミスは鼻をくんと鳴らすと、
眉をひそめながら、
雪りんごを手に入れてきたか。
どうして鴨肉のにおいがするのかと
尋ねました。
アニャは、
雪りんごを手に入れたけれど
落としてしまったので、
代わりに鴨肉を持って来たと
答え、ドミスの上半身を
起こそうとしましたが、
ドミスが全力で
アニャを振り切ろうとしたので、
彼女はドミスを逃してしまい、
ドミスは棺桶の底に頭を打ち付け
目を見開きました。
痛いと訴えるドミスにアニャは
謝りましたが、
ドミスが急に、
自分の腕を振り払ったからだと
言い訳をすると、ドミスは、
アニャが、自分のせいにしていると
責めました。
アニャは、
自分のせいではないと思うけれど、
双方の過失にしないかと呟き
笑いながら鴨肉を差し出し、
これを食べて早く元気を取り戻そうと
言いました。
しかし、ドミスは、
アニャが食べるようにと言って
今回も断固として拒否し、
自分は雪りんごが食べたい。
他の食べ物を持って来るなら
似たようなものを持って来い。
自分は500年ぶりに目覚めたのに
鴨をかじらなければならないのかと
イライラしながら叫びましたが、
すぐに、美しく、とろけるような
笑顔を見せながら、
両手を伸ばしました。
思わずアニャがその手を握ると、
ドミスは、お腹がすいた。
もう一度雪りんごを手に入れてくれと
優しく囁きました。
アニャは分かったと言って
飛び上がると、
洞窟の外に出ましたが、
なぜ雪りんごを手に入れずに
戻って来たのかを思い出しました。
ドミスが神経質になっていたので、
すっかり話すのを忘れていました。
アニャが洞窟に戻ると、
ドミスは、彼女が戻って来た理由を
尋ねました。
アニャは、ドミスが気にしていた
カルレインの情報について
少し調べてみたと告げると、
ドミスの声と動きが止まりました。
アニャは用心深く棺桶のそばに行くと
ドミスの睫毛が微かに震えていました。
彼女は、カルレインについて尋ねると、
アニャは、
彼はドミスが死んだと思って傷つき、
女性を愛せなくなった。
彼は皇帝の側室になり、
その男がカルレインを
幸せにしてくれたようだと
話しました。
背も高く、
がっしりした体格のカルレインの髪が
三つ編みにされているかと思うと
笑えます。
彼は、ラティルの部屋を出て行った後に
髪を解いたかもしれませんが、
そのままの状態で歩き回れば
人々の注目を浴びることは
間違いないし。
それに、そんなことをするのは
ラティルしかいないので、
自分は、皇帝に
こんなことまでしてもらっていると
カルレインはラティルの愛情を
ひけらかすことが
できると思いますが、
タッシールならともかく、
傭兵王のカルレインは
三つ編み姿を周知にさらすのは
プライドが許さないような気もします。
ラティルが聖騎士たちのことを
大事に思っているなら、
何としてでもギルゴールを
止めるでしょうけれど、
聖騎士はロードの敵で、
彼らに何度も煩わされたので
自分さえ疑われなければ
無理にギルゴールを止めなくても
良いという心境に至ったのかも
しれません。