自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

泣いてみろ、乞うてもいい 135話 ネタバレ 原作 あらすじ 死地に追いやられた獣

135話 レイラは熱を出してしまいました。

軍医は困惑した表情で

患者を診察しました。

もう何日も、女は

快方の兆しが見えませんでした。

妊娠中なので、

薬をまともに使うことができず、

適当な治療方法を見つけるのも

困難でした。

 

無力感に襲われて引き下がる彼に

一体、いつ熱が下がるのかと

ヘルハルト少佐が尋ねました。

ギョッとした軍医は、

乾いた唾を飲み込んだ後、

彼と向き合いました。

 

実際、少佐の女は、

これまで耐えて来たのが不思議なほど

滅茶苦茶な体調でした。

普通の成人なら、この程度の発熱で

命の危険はないだろうけれど、

問題は、この女が弱り果てた体で

妊娠までしているという点でした。

しかし、少佐の前で、

事実をありのまま、

伝える気になれませんでした。

 

初めてこの部屋に呼ばれた日、

女の状態について

淡々と話しながら軍医を見る

ヘルハルト少佐の目には、

殺気といってもいいような

冷たい雰囲気が漂っていました。

自分の口に銃口を突っ込まれても

おかしくなさそうでした。

 

軍医は、

まだ、もう少し様子を

見守らなければ・・・と

口を濁しました。

マティアスは

「いつまで?」と尋ねました。

声を荒げはしなかったけれど

彼の低い声は、

脅威を与えるに十分でした。

 

あの女が倒れた夜以来、

彼はずっと看病に専念していました。

他の全員を追い払い、

ただ一人で全てを背負っていました。

 

乱暴に撫で付けた髪を握ったまま

レイラを見ていたマティアスは、

後方の軍病院に移送すれば、

治療できるのかと尋ねました。

しばらく考え込んでいた軍医は、

断固として首を横に振ると、

今の患者の体の状態では

軍病院まで移送する旅程に

耐えられそうにない。

そして、そこへ送ったとしても、

妊娠した状態では、

特に治療をする方法が・・・と

言葉を濁しました。

 

少佐の顔色を窺った彼は、

結局、言葉をきちんと終えることが

できませんでした。

死地同然の戦場に出る時も、

感情の揺れを見せなかった冷血漢が

まるで窮地に追い込まれた

子供のような顔をしていました。

 

彼は悲痛な口調で

マティアスに謝りました。

軍医を退けたマティアスは、

再びレイラが横になっている

ベッドに近づきました。

 

レイラは、

依然として意識を失ったまま

苦しんでいました。

猛烈に上がった熱は

何日も下がっていませんでした。

レイラは、

ほとんど意識を失った状態が続き

ようやく意識を取り戻しても、

粥一匙すら、

まともに食べられませんでした。

熱に浮かされて、呻き声を上げながら

何か呟きましたが、

すぐにぐったりして、

気絶したように深い眠りにつきました。

 

しかし、

マティアスは諦めませんでした。

何とか熱を下げるために

濡れタオルで汗を拭ったり、

粥を食べさせたりしました。

レイラは、それまで吐き出すのが

常でしたが、マティアスは

辛抱強く服を着替えさせ、

汗を拭いてやり、同じことを再び

最初から何度も繰り返し続けました。

 

熱くて乾いた息を吐き出していた

レイラが、辛うじて目を覚ますと

マティアスは落ち着いて

大丈夫だ。すぐに治ると囁きました。

 

「ビルおじさん」

焦点の定まらない目で

彼を見ていたレイラが

力なく笑いました。

幻を見ているようでした。

マティアスが「レイラ」と呼ぶと、

「夕方、カイルが・・・」

と意識がない中でも、レイラは

優しく、その名前を呼びました。

レイラの冷や汗を拭いていた

マティアスの手が止まりました。

 

アルビスの小屋で過ごした

子供時代を思い出すように、

レイラは、

とりとめのない話を呟きました。

ビル・レマーと一緒に

庭の花の手入れをし、

カイル・エトマンと宿題をし、

三人一緒に座ったテーブルで

雑談を交わす。

 

その記憶の中にあるレイラは

幸せそうに見えました。

熱で赤く染まり、

朦朧とした顔をしていても、

微かな笑みを失いませんでした。

 

しばらく、そのように、

幻影の中を彷徨っていたレイラは、

再び意識を失って

深い眠りに落ちました。

 

彼女を起こす代わりに、

マティアスは、

温かくなったタオルを

たらいに浸しました。

それを力いっぱい捻じる手の関節が

白く浮き出ました。

 

その夜、レイラは

何度もそばにいない人を探しました。

 

お母さん。お父さん。 ビルおじさん。

カイル。

どこにも、マティアスの名前は

ありませんでした。

リエット・フォン·・リンドマンを

乗せた軍用車は、

シエン市街地の広場に立っている

ホテルの前に止まりました。

群れをなして集まって座っている

若い兵士たちは、タバコを吸ったり、

雑談を交わしながら、

のんびりとした午後を

過ごしていました。

戦時中とは思えない、

のんびりとした雰囲気に、

リエットの表情も

一団と明るくなりました。

 

彼に気づいた、ある貴族将校が

彼の名を呼んで

笑いながら近づいて来ました。

 

まだ生きていたのか。

 

そういうあなたこそ。

運がとても良かったようだ。

 

冗談を交わしながら

クスクス笑った二人は、

ホテルの一階に用意されているバーに

並んで座りました。

 

シエン占領という

最優先目標を達成したベルク軍は、

ここで戦列を再編成した後、

西部へ進軍して

ロビタの首都を攻撃する予定でした。

休まず戦い続け、

勝利を重ねてきた軍人たちには、

南の暖かいリゾート都市で楽しむ休暇が

褒賞として与えられました。

 

皇帝は、

新年が始まる前に勝利を収め、

ベルクの息子たちを

家族の元へ戻すという

悲壮な宣言をしました。

誰も気軽に信じなかった

その皇帝の言葉が

現実になるかもしれませんでした。

 

香ばしいブランデーで喉を潤した

リエットは、最も気になっていた

マティアスの様子について

軽く尋ねました。

後方の補給を担当している部隊に

属しているリエットが

ここまで来た理由は、

まさに彼の従弟である、

ヘルハルト少佐に会うためでした。

 

将校は、意地悪そうに笑って

騒いでいましたが、

「それが・・・」と答えると、

困ったような顔をしました。

 

リエットは、

どうしたのか。何かあったのか。

怪我をしたという知らせなど

聞いていないけれどと尋ねると、

将校は、

そんなことはない。

マティアスは無事だ。

ただ少し・・・変なことが起きて、

皆でひそひそ話しているところだと

答えました。

 

リエットは、

あのつまらない奴が、

一体何をしたのかと尋ねると、

将校は、

妊娠しているロビタの女を

連れて来たと答えました。

 

「・・・何だって?」

リエットは、

自分の耳を疑って聞き返しました。

 

将校は、

他でもないマティアスが、

あの孤高なヘルハルト公爵が、

妊娠している占領地の女を

欲しがったのもショックだったけれど

それよりもっと驚くべきことは・・・

と言いかけたところで、

眉を顰めてため息をつきました。

そして、

これは言葉では説明できないと

残りの言葉を続けました。

 

リエットは、

ここまで匂わせておいて

この仕打ちかと抗議すると、

将校は、

308号室へ行って直接見てみるように。

見てみないと分からないと

返事をすると、残った酒を飲み干し

首を横に振りながら

ため息をつきました。

しかめっ面で彼を見ていたリエットは

荷物を持って、

バーを立ち去りました。

 

階段を上って、

その客室のある廊下を通っている間も

彼は友人の言葉を信じませんでした。

昼間から飲み続けている酒に

酔っているか、あるいは戦争の衝撃で

狂ってしまったに違いないと

思いました。

その方が、

マティアス・フォン・ヘルハルトが

そんなことをしているというよりも

はるかに

理にかなっているからでした。

 

しかし、しばらくしてリエットは、

そのとんでもない現実を、自分の目で

確認することができました。

 

リエットが、

ドアをノックをしようとした瞬間、

突然、客室のドアが開きました。

彼を発見した軍医は、

ギョッとした顔で後ずさりしました。

 

リエットは、

マティアスはどこにいるのかと

尋ねようとしましたが、

部屋の中から聞こえて来た

「目を覚ませ!早く!」という

裂けるような叫び声が

リエットの言葉を遮りました。

 

驚いて駆けつける軍医に付いて

リエットも慌てて

部屋の中に入りました。

到底ヘルハルト公爵とは思えないほど

滅茶苦茶に乱れた姿をした

マティアスが、

ベッドに横になっている女の肩を

揺さぶりながら

狂ったように怒鳴っていました。

血走った目にやつれた顔。

しわくちゃのシャツまで。

目で見ても信じられない姿でした。

 

軍医は、

こんなことをしてはいけない。

患者は安静にする必要があると

諫めましたが、マティアスは、

死ねば逃げられると思っているのか。

勘違いするなと叫ぶと、

腕を掴む軍医を押し退け、

再びベッドに横になっている

小さな女を握り締めました。

 

リエットは

訳が分かりませんでしたが

まずは駆けつけて、

マティアスを捕らえました。

 

リエットは、

どうしたのか。これは一体・・・

と尋ねている途中で息を切らし、

後ずさりしました。

マティアスのベッドには、

噂の女であることが明らかな

小さな女が横たわっていました。

リエットもよく知っている

レイラ・ルウェリンでした。

 

リエットの魂が抜けている間に、

マティアスは、

再びレイラに飛びかかりました。

 

意識を失った女を捕まえて、

死んで逃げたら、

自分も死んで君を追いかける。

君は死んでも自分のものだ。

分かっているかと絶叫する

マティアスは、まるで

死地に追いやられた獣のように

見えました。

耐え難い恐怖に押し潰され、

本能だけを残して、

銃口の前に投げ出された

哀れな獲物のようでした。

 

リエットは眩暈を感じて

フラフラしました。

こんなことはあり得ませんでした。

 

彼が知っている限り、

マティアスは、

一生、腹を満たした捕食者として

完璧なハンターとして

生きてきた男でした。

そして、これからも永遠に

そうしなければなりませんでした。

 

今すぐ目を開けろ。

君が必死に探している

カイル・エトマンの命を

今すぐ奪う前に目を開けろと叫ぶ

マティアスの枯れた声は

ひどく震えていました。

 

短いながらも

意識を取り戻したレイラは、

昨夜からは、

まるで死人のようにぐったりして

ただ苦しんでばかりいました。

呼吸も

だんだん荒くなって行きました。

 

頑固に閉じた目が、まるで

自分への頑強な拒否のようで、

死んでも、

あなたから逃げてみせるという

この酷い女の執念のようで、

マティアスは、

狂ってしまいたくなりました。

 

鉄の匂いがするような息を吐きながら、

レイラは苦しそうに

「おじさん」と呟きました。

マティアスは、もはや何も言えず

ベッドに、どっかりと

座り込んでしまいました。

 

レイラは、

まるで、ここに彼が

一緒にいるかのように。

さらに何度もビル・レマーを呼び、

微笑み、

そして、また意識を失いました。

 

マティアスは途方に暮れた目で

周囲を見回しました。

確かに明るい昼間なのに光が見えず

一点の輝きもない完璧な暗黒でした。

 

まさか庭師がレイラを

連れ去ろうとしているのだろうか?

アルビスからここまで

レイラを連れて逃げたように、

ここまで追ってきた自分から

再びレイラを奪うために・・・

 

とんでもない考えだと

分かっていながらも、

マティアスは恐怖に震え、

乾いた唾を飲み込みました。

 

マティアスは「レイラ」と呼ぶと

細かく震え始めた手で、急いで

レイラの熱い頬を包み込みました。

 

「レイラ、お願い」

マティアスの指先が、

血の付いた乾いた唇に触れると、

レイラは再び

「おじさん」と囁きました。

 

再びビル・レマーに会ったのか、

レイラの口元が柔らかくなりました。

当然のように

カイルの名も続きました。

再び、あの少年と共に過ごした

美しい日々を思い出しているのか、

今にも死にそうな姿をしていても

レイラは幸せそうに笑いました。

 

マティアスは、その顔から

カイル・エトマンに

明るく笑いかけていた少女を

見ました。

目を輝かせながら

愛らしくお喋りをしていて、

あれほどまでに思いやりがあり

美しかったアルビスの子供。

自分のものであることを願って

奪ったけれど、

決して手に入れることができず、

もしかしたら、

自分が命を奪ったかもしれない

あの少女。

 

近づいて来たリエットは

マティアスの名を呼び、

彼の肩を掴みました。

マティアスは、ようやく

従兄の存在に気づきました。

しかし、ただそれだけ。

リエットを目の前にしても、

マティアスの瞳は空っぽでした。

 

淡々とリエットを押し退けた

マティアスの手は

再びレイラに向けられました。

汗に濡れた髪と熱で赤く染まった頬。

極度に痩せた首筋を

徘徊していたその手が

結局何も掴めないまま

力なく落ちた瞬間、

マティアスは低く沈んだ声で

今すぐ、エトマンを連れて来てと

命令しました。

「カイル・エトマン!」

カイルは、

急いで自分を呼ぶ声を聞いて

頭を上げました。

彼をこの営倉に入れた憲兵

息せき切って駆けつけて来ると、

カイルに、早く出て来るよう

命令しました。

 

カイルは硬い口調で、

懲罰期間は、まだ数日残っていると

聞いていると答えると、憲兵は、

文句を言うな。

懲罰に代わる任務が与えられたので

早く来いと命令しました。

 

カイルは、

任務って、どういうことかと

尋ねました。

憲兵は、

ヘルハルト少佐の命令だと

答えました。

 

自分をこの営倉に閉じ込めた奴の

善処だなんて。

嘲笑でも漏らしたくなった瞬間、

憲兵は、

少佐が連れてきた女が、

ひどい病気になったので、

お前の助けが必要なようだ。

だから早く立てと命令しました。

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太陽の下で明るく笑い、

目を輝かせながら

愛らしくお喋りをし

自由にアルビスの森の中を

駆け回っていたレイラ。

マティアスは、そんなレイラに

恋したのに、

彼女を自分のものにするために、

彼女の翼を切り、

狭いホテルの一室に閉じ込め、

時には手を縛って

身動きができないようにして

彼女から自由を奪ってしまった。

その悲しみと絶望は、

体力が落ちてしまったレイラに

追い打ちをかけ、ついに彼女は

生死を彷徨うまでになってしまった。

レイラが死にかけているのは

マティアスのせいなのに、

そんなレイラの体を揺さぶって、

死んで逃げるなと叫ぶなんて。

マティアスが一生懸命レイラを

看病しているのは認めるけれど

まだ、自分のことしか

考えていないと思います。

 

それでも、最後にカイルを呼んだのは

少しはレイラのことを

思いやれるように

なったからでしょうか。

今のままでは、マティアスが

レイラの後を追って死んだとしも、

あの世でも、レイラはマティアスから

逃げ続けると思います。

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