自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 1話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ プロローグ、1話 貧乏公爵の娘

 

1話 バスティアンは将校たちと歓楽街の賭博場にやって来ました。

 

迷路のような路地の先。

大半が居酒屋や賭博場など、

歓楽のためだけに存在する世界のような

見知らぬ風景を

バスティアンは目を細めて見ました。

 

何をしているのか。行こうと

肩を叩きながら催促する

ルーカス・フォン・エヴァルトの顔は

期待に満ちていました。


上院議長エヴァルト伯爵の一人息子。

士官学校で得た最高の人脈と言っても

過言ではない友人の顔を

じっと見つめていたバスティアンは、

しばらくして、ニッコリしました。

口の端をさっと引き上げるだけでも、

冷ややかだった表情が

一瞬にして変わりました。

 

バスティアンは、ルーカスと一緒に

先頭に立った群れの後を追いました。

彼らの目的地は、

通りの突き当たりにある賭博場で

少し前まで滞在していた社交クラブとは

比べ物になりませんでした。

 

バスティアンと目が合った

エーリッヒ・ファーバーは、

ここにはここなりの

風変わりな面白さがある。

すぐにわかるはずだと、

照れくさそうな表情で

言い訳をしました。

彼は鉄鋼業で繫栄している

ファーバー家の長男なので、

疎かにしてはならない人脈でした。

 

バスティアンは

今回も快く同意して笑いました。

こんな裏通りで楽しむ逸脱行為で

評判を

台無しにしたくありませんでしたが

一人で孤高のふりをして

反感を買うのは愚かでした。

まずは付き合ってから

適当な時を見計らって立ち去るのが

最も賢明な対処法でした。

 

やっと来てくれた。

あまりにも長い間、会えなかったので

そろそろ心配していたと、

この賭博場の主人らしき中年の男が

大げさに喜びを露わにして

彼らを迎えました。

これまでここで、どれほど大金を

使い果たしてきたかが分かるような

歓待でした。

 

将校たちを見ていた彼の視線が

バスティアンの顔の上で止まり

「この方は・・・」と呟きました。

一気に空けたグラスを

手放したルーカスは、

こちらはクラウヴィッツ大尉。

新聞で一度は

見たことのある名前だろうと

得意げに

バスティアンを紹介しました。

 

見開いた目をパチパチさせていた男は

ほどなくして、

帝国の海を守った英雄に会えて光栄だと

大げさな賛辞を送り、

上質のウィスキーと葉巻を一箱

プレゼントしてくれました。

 

喜んだ将校たちとは違って、

バスティアンの顔には、

これといった感情が

浮かんでいませんでした。

お酒を勧められば飲み、

葉巻を分け合って吸ったり、

つまらない雑談を

交わしたりもしましたが、

ただそれだけで、それ以上の熱意は

見られませんでした。

しかし、その瞬間も

唇は、描いたように滑らかな笑みを

失いませんでした。

意識しなくても、

体が覚えている一種の習慣でした。

 

女。賭博。 陰湿なスキャンダル。

社交クラブで、取り澄まして

国際情勢を論じていた時とは

全く違う話題が、

クスクス笑いながら交わされました。

 

バスティアンは、

主に聞き役に徹することが多く、

時々、適切な反応を

見せることもありましたが、

それさえも短い返事、あるいは

軽い笑いの範疇を越えませんでした。

 

早足で近づいて来た主人は

頭を下げながら、

準備ができたので、

二階へ上がるようにと告げました。

 

そのあたりで、

お喋りを止めた将校たちは

快く席を立ちました。

 

ちょうど貴賓用カードルームにつながる

二階の廊下に入った頃、

もう一度だけチャンスをくれと

悲鳴のような絶叫が

聞こえて来ました。

普通のカードルームから

引きずり出された初老の男が

警備員たちと揉めているところでした。

 

一斉に立ち止まった将校たちの視線が

そちらへ向けられました。

理性を失った男は、今、

廊下のカーペットの上に跪きながら

懇願していました。

賭け金をすべて失っても、

無駄な未練を捨てられない

典型的な賭博師の姿でした。

 

そのささいな騒ぎに

関心のなかったバスティアンは

制服のカフスをそっと上げて

時計を確認しました。

海軍省の晩餐会に続き、

社交クラブでの飲み会。

そして、ここまで来る間に、

いつのまにか

深夜12時に近づいていました。

 

身なりを整えたバスティアンは、

ゆっくりと目を開けることで

疲労感を払拭しました。

その時、

あの男が再び暴れ始め、

まだ掛け金が残っているので

入れてくれと叫びました。

警備員は、

乞食公爵閣下の言う通りなら、

その賭け金を見せるよう要求しました。

一度や二度のことではないのか

警備員たちは興味なさそうな顔で

嘲笑いました。

 

その言葉に男は困惑していましたが、

思い出したように、

自分の娘を賭けると意気揚々と叫び

警備員たちの手を振り切りました。

そして、言葉に詰まった警備員たちが

舌打ちをしている間も、男は、

うちの娘がどれだけ美しいか

皆、知っているではないか。

あの子に比べれば、

あれしきの賭け金は何の価値もないと、

休むことなく熱弁を揮いながら、

カードルームをのぞき込みました。

 

その姿を見守っていた

バスティアンの唇から

ため息混じりの失笑が漏れた瞬間、

ファーバー家の息子が、

今言った言葉の責任を取れるのかと

尋ねました。

そして、手を振って警備員を退けた彼は

賭博に溺れて娘を売ろうとしている

父親の目の前まで近寄りました。

 

それから、ファーバーは、

カードルームのテーブルの上に

山積みされたチップを見ながら

男の娘が、あの掛け金を

全額払っても余りある価値が

あるのかという意味だと言うと、

再び男に向き合いました。

 

男は乾いたつばを飲み込むと、

もちろんだ。

自分の娘はこの首都どころか

この帝国最高の美人だと

自慢することができると叫びました。

 

ファーバーは

このゲームの方が、

より面白そうだと言い、

興味を引かれたような顔で

将校たちに同意を求めました。

視線を交わした将校たちは、

その男がいるカードルームの方へ

そっと足を向けることで、

返事をしました。

 

バスティアンは

深い夜のような静かな目で、

その寸劇を見ました。

名門家の子弟たちが、

このような三流賭博場の常連を

自任するようになった

風変わりな面白さが何なのか、

初めて理解できるようでした。

 

カードテーブルを囲んでいる一行が

早く来てと、

催促するようにバスティアンを

呼び始めました。

娘を売ることに成功した父親も、

煌めく目を上げて、

彼を見つめていました。

 

バスティアンは笑顔でそこに向かい

席に着くと、

まもなくゲームが始まりました。

バスティアンは葉巻をくわえたまま、

自分のカードを確認しました。

それほど悪くない手札でした。

深夜12時を告げる

掛け時計の音が聞こえると、

オデットは、

熱心にレースを編んでいた手を

しばらく止めたまま頭を上げました。

仕事を手伝うと

意地を張っていたティラは、

テーブルの上に突っ伏して

ぐっすり眠っていました。

 

オデットは、

穏やかなため息をつきながら

半分ほど完成したベールと

綿糸をまとめ、

一日中、かぎ針を握っていたせいで

こってしまった手を揉みました。

 

オデットは、

ティラの肩を軽く叩きながら

名前を呼びました。

ティラはビクッとして目を開けると、

父親は、まだ帰って来ないのかと

尋ねました。

そして、まだ眠気が残っている顔で

周囲を見回したティラは

泣きべそをかきながら、

また何かあったらどうするのかと

心配しました。

 

大丈夫だからと

淡々とした返事をしたオデットは、

なかなか安心できないティラを連れて

寝室に向かいました。

 

二人の姉妹が一緒に使う部屋は、

都市を横断して流れる川が見える

北向きに位置していました。

美しい川と跳ね橋が見える眺めは

素晴らしいものの、

今日のように川風が強い日は、

古い窓枠が壊れそうなほど軋む音に

苦しまなければなりませんでした。

 

あの音はすごく気持ち悪い。

まるで幽霊がすすり泣いているようだと

顔を洗って来たティラは

不機嫌そうに呟きました。

オデットは、

真っ赤に凍りついたティラの頬を

自分の手を擦って温めた手で

そっと撫でてやりました。

 

昨年までは、お湯が出る家で

過ごすことができましたが、

父親がお金の問題を起こしたため、

より安い借家を

探さなければなりませんでした。

それでも都市の郊外にある

古い建物の最上階でも

借りることができたのは、

皇室から支給される

年金のおかげでした。

最悪の場合、どうすることもできずに

路上に放り出されることに

なったかもしれないと考えると、

オデットには、あのひどい騒音さえ

甘美に聞こえました。

 

短くキスをしたオデットは、

もう寝るようにと命じました。

ティラは、

自分はお姉さんの子供ではないと

不満そうに反論しながらも、

素直にベッドに横になりました。

まもなく、低くいびきをかく音が

聞こえ始めました。

ランプの照度を下げたオデットは

静かな足取りで寝室を出ました。

 

彼女は、

父親の分として残しておいた食べ物を

食卓の上に置いた後、

戸締りをしました。

明日レースを売ったお金で買う

生活必需品のリストまで

几帳面にまとめ終えると、

夜が、さらに深まっていました。

 

すぐにでもベッドに倒れ込みたいほど

疲れていましたが、

オデットはきれいに体を洗って、

よく乾いた古いパジャマを着て、

念入りにブラッシングをすることを

忘れませんでした。

 

どんな場合でも、最低限の品位を

失ってはいけないものだと、

母親は習慣のように言っていました。

もはや貴族とは言えないほど

貧しい境遇に転落した後も同じでした。

 

いつか、

自分たちの場所に戻る日のために。

その信仰のような希望に

縋り続けた母親は、

ついに悲惨な現実から抜け出せずに

息を引き取りました。

 

自分の人生もそうだろうと、

オデットは

ぼんやりと予感していましたが、

それでも自分の中に深く根付いている

過去の痕跡を、

消したくありませんでした。

いわば、それは、母の

最後の遺産だからでした。

 

オデットは窓の鍵をきつく締め、

カーテンを閉め、

ティラの隣に横になりました。

夢うつつで胸の中に入り込む

妹を抱いて目を閉じると、

特別なことがなかった今日一日が

とても満ち足りたように

感じられました。

いつまでも、

このような平穏な日々が続きそうな、

少しだけ、童話のような希望を

抱きました。

ありがたくない幸運でした。

バスティアンは呆れたような目つきで

テーブルを見下ろしました。

同じ数字を持つ四枚のカード。

何度見ても間違いなく勝利の札でした。

 

このゲームの勝者を確認した一行は

クラウヴィッツ大尉が

帝国一の美人を手に入れたみたいだ。

勝利の女神を、

カードゲームにまで連れて来るのは

反則ではないかと歓呼し始めました。

自分たちの敗北は、

もうすっかり忘れてしまったようで

ただ、

この状況が与える刺激的な面白さに

心酔していました。

 

バスティアンは、

ズキズキする額を撫でながら、

長く伸びた葉巻の灰を

払い落としました。

上の空で臨んだゲームで

完璧な勝利を収めると、

いくらか当惑するほどでした。

 

乞食公爵が婿を見ることになる。

掛け金を出さなければと、

彼らを取り囲んでいた見物人たちは

低俗な野次を交えながら

催促し始めました。

 

バスティアンは、

冷たい嘲笑のこもった眼差しで

向い側に座っている男を見ました。

彼は半分魂が抜けたまま、

目をパチパチさせていました。

真っ赤になった顔から流れた冷や汗が

やせた手の甲の上に落ちました。

 

彼は、

そ、そんなはずがないと呟きながら

全身を震わせて、

無意味になった自分のカードを

いじり始めました。

 

バスティアンは席を立ちました。

あんな情けない奴の娘と関わる前に、

ここを離れるつもりでしたが、

一行は、

彼を手放す気がなさそうでした。

 

バスティアンを

しっかりと押さえていた将校たちは、

どこへ行くのか。

賭け金はきちんともらわなければ。

これはバスティアンが享受すべき

正当な権利だと主張しました。

そして、エーリッヒは、

顔色を窺っている警備員を呼び寄せ、

あの男が約束した掛け金を

持って来て欲しいと、

それとなく切り出しました。

その言葉に警備員の瞳が揺れました。

 

ようやく我に返った男は

涙ながらに慈悲を乞い始めましたが、

見物人たちの興奮は

ますます高まっていくだけでした。

 

知らせを聞いて駆けつけて来た主人は

すぐに

乞食公爵の借金を回収して来いと

厳命を下しました。

長いため息をついた警備員は

女性を連れてくるために

賭博場を離れました。

 

バスティアンは再び椅子に腰かけ、

葉巻の煙を深く吸い込みました。

とても気分の悪い勝利でしたが、

あえて表に出しませんでした。

どうせ捨てる掛け金なので、

まずはこの雰囲気に合わせてから

静かに戻してやるのが、

一番大きな実利を得る選択でした。

 

バスティアンは、

微かに苛立ちを帯びたため息を

葉巻の煙と共に流しました。

彼に娘を売った

乞食公爵と呼ばれる男は、

子供のように大声で泣いていました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain

f:id:myuieri:20210206071517p:plain

エルナを結婚市場に売り出すことで

自分の借金を返そうとし、

自分の意にそわない行動をすると、

平気で暴力を振るうウォルター。

愛する人と結ばれるために

夫と娘を捨てたレイラの母親。

そして、娘を賭けてまで

カードゲームを止められない

ギャンブル依存症の父親。

ソルチェ様が描く

ダメ親を持つヒロインを見ながら

子供は親を選んで

生まれて来ることができないのだと

つくづく感じました。

f:id:myuieri:20210206060839j:plain