自分時間を楽しく過ごす 再婚承認を要求しますの先読みネタバレ付き

子供の頃からマンガが大好き。マンガを読むことで自分時間を楽しく過ごしています。再婚承認を要求します、ハーレムの男たちを初めとして、マンガのネタバレを書いています。

バスティアン 10話 ネタバレ ノベル あらすじ マンガ 8、9話 止まらない妄想

10話 オデットが宴会場に到着しました。

 

その美しい顔を無駄に使う才能は

本当に抜きん出ている子だ。

オデットを見た

トリエ伯爵夫人の眉間に

深いしわができました。

 

表情のないオデットの顔は

まるで青白い大理石の彫刻のように

見えました。

青いサテンドレスと

ダイヤモンドの冷たい光沢が

その冷ややかな印象を

一層際立たせました。

愛らしい花嫁候補になるには

間違った姿でしたが、

決して、他人の服と宝石を借りて

舞踏会に出た貧乏人のようには

見えないのが幸いでした。

 

宴会場を見回したトリエ伯爵夫人は、

この仕事の成果に

ディセン家の将来がかかっていることを

声を低くして、

そっけなく忠告しました。

 

オデットを連れて来るために、

抑圧と強要、それに懐柔的な脅迫と

あまり良くない方法を

動員しなければならなかった

日々の記憶が、

大理石のホールの明かりの中で

蘇りました。

意地とプライドが

並大抵ではないことを見ると、

皇家の血筋であることは

間違いないようでした。

 

しばらく足を止めたオデットは、

ゆっくり首を回して

トリエ伯爵夫人を見つめると

約束は必ず守って欲しいと

頼みました。

かなり唐突な発言でしたが、

それほど生意気には

感じられませんでした。

おそらく、

切迫した目つきから感じられる

真心のためのようでした。

 

その雀の涙ほどの年金が

一体、何だというのか。

トリエ伯爵夫人は、

ふと悲しい気持ちになりましたが、

表に出しませんでした。

 

バスティアン・クラウヴィッツ

縁談を受け入れるつもりがなく、

オデットも、

自分の意思は変わらないので、

彼には、もう会わないと

知らせて来ました。

 

その心情を理解できないわけでは

ありませんでした。

ある日、突然、

見知らぬ世界に引きずり出され

侮辱されることは

容易ではないだろうし、

あの子が持っている全てとも言える

顔を披露しても、歓心を買うことが

できなかったとすれば、

事実上、希望がないと見ても

差し支えありませんでした。

 

しかし、皇帝が望んでいました。

思う存分利用された後に

捨てられることになっても、

オデットは万人が見る前で

バスティアンの女の役割を

しなければならないという意味でした。

 

トリエ伯爵夫人は、

分かった、そうすると、

快く承諾しました。


オデットが望んでいるのは、

この縁談が実現しなくても

年金の支給を止めないことだけで、

彼女は、

皇帝を説得して確答を得られれば、

自分に与えられた任務を全うすると

話しました。

 

トリエ伯爵夫人は、

確かに皇帝は冷酷な人だけれど、

少なくとも卑劣ではない。

この縁談のおかげで、

イザベルが正気を取り戻して

無事に結婚式を挙げるなら、

オデットを無視はしないだろう。

復権は無理だとしても

年金の額を増やす程度の恩恵は

与えてくれるだろう。

運が良ければ、

それ以上を得ることもできるだろうと

穏やかな口調で

オデットを宥めました。

 

ディセン家の命綱である年金を

武器にして振り回したものの、

いざそのような小銭で売られていく

皇女の娘を見ると

心が安らかではありませんでした。

オデットはトリエ伯爵夫人に

お礼を言うと、

再び自分の前に広がっている

見慣れない世界に向き合いました。

 

美しいフレスコ画で飾られた天井と

クリスタルのシャンデリア。

窓越しに広がる大庭園の風景まで。

すべてが母の言う通りでした。

皇宮の話を聞かせてくれる時、

母親は病的に浮かれていましたが

結局泣き崩れる母親の記憶が

浮び上がると

妙な気分になりました。

 

庭一面に花が咲いていた舞踏会の夜、

まさに、ここで

運命的な恋に落ちた少女は、

その愛が、自分のすべてを

奪うことになるということを

知らなかっただろうと思いました。

 

どうして、そんな恋をしたのだろうか。

それしきの愛が一体何だというのか。

オデットは、

心から母親を愛したけれど、

最後まで

理解することはできませんでした。

 

父親のような男のために、

祖国と家族を裏切ってはならなかった。

間違った選択をしてしまったなら、

謙虚にその結果を

受け入れるべきでした。

しかし、母は

まるで蜃気楼に惑わされた

砂漠の旅人のように、

いつも虚像だけを追っていました。

一時は愛を。

その愛が失われた後は、

取り返しのつかない過去を。

一生、喉が渇いた人生でした。

 

オデットはゆっくりと目を閉じて

無意味な記憶を消しました。

そして再び目を開けた時、

最後の躊躇さえも消えた彼女の目つきは

一層、堅固なものになっていました。

 

長年に渡って

家計を担当してきたオデットは、

生活が大切であることと、

その基盤となるお金が

どれほど重要なのか、

あまりにもよく知っていました。

名誉とプライドを売り渡してまで

お金を追い求める気はないけれど、

だからといって、名誉とプライドを

生活より優先させることも

できませんでした。

それがオデットの知っている

品位であり尊厳でした。

 

この縁談には年金がかかっていて、

オデットは、そのお金が

どうしても必要でした。

後戻りできない理由は

その一つで十分でした。

決意を固めたオデットは、

自分が選択した道の上を

進み始めました。

 

ホールの中央を飾っている

皇室の紋章の上を通り過ぎる時、

その男と目が合いました。

 

春の夜に似た旋律が流れ、

闇を照らす光の饗宴は恍惚とし、

庭を通ってきた風からは

春の花の香りが漂って来る。

母が聞かせてくれた話のような

舞踏会の夜でした。

ただ、このすべては

一夜の蜃気楼に過ぎず、

オデットは虚像を信じませんでした。

 

広いホールを横切って来た

バスティアンは、

最後の一歩を残した所で止まりました。

まず、シャペロンに対して礼儀を尽くす

その男の態度は、

非の打ちどころのないほど丁寧でした。

 

オデットは、きちんとした姿勢で

次の番を待ちました。

予想通り、

トリエ伯爵夫人は素直にオデットを渡し

バスティアンは躊躇うことなく

オデットに近づいて、手を差し出し

「行きましょう、オデット嬢」と

当然の権利を行使するかのように

エスコートを求めました。

その男の声が、

周囲の騒ぎを圧倒しました。

 

そっと目を開けたオデットは、

手を差し出すことで

承諾の意を示しました。

バスティアンがその手を握った瞬間

大宴会場のドアが大きく開きました。

皇帝の入場でした。

深いため息をついたバレリーは、

どうかしっかりするようにと

声を低くして囁きました。

失意に陥ったまま

グラスを傾けていたイザベルは、

ゆっくりと頭を上げて妹を見つめると

あなたの忠告なんか要らないと

返事をしました。

 

バレリーは

見ていて歯がゆい。

一体いつまで、姉に対して

何の関心もない男のために

皇室の名誉を失墜させるつもりなのかと

尋ねました。

イザベルは、

先程まで、ヘルハルト公爵の尻を

追いかけていたあなたに、

そんな説教をする資格があると

思うかのと、言い返しました。

バレリーは、

彼はヘルハルトだ。

まさか、卑しい古物商の孫が

帝国最高の貴族と同じだと、

信じているわけではないだろうと

非難しました。

 

その言葉にイザベルは興奮し、

バスティアンのことを勝手に言うなと

テラスの静けさを破るほどの

叫び声を上げました。

その騒ぎに驚いた客の視線が

一斉に二人の皇女に集中しました。

周囲を見回したバレリーの両頬が

羞恥心で熱くなりました。

 

彼女はイザベルに、

落ち着くように。

帝国の皇女らしい責任感を示せという

母の頼みを、もう忘れたのかと

戒めました。

しかし、イザベルは依然として

嘆かわしい片思いの感情の中で

もがいていました。

 

バレリーは、

お姉様がここに隠れて

涙を流している間も、あの二人は

楽しい時間を過ごしていると

意図的に声を高めて嘆くと、

これ見よがしにテラスの窓の向こうを

指差しました。

その光景を見たイザベルの顔は、

耐え難い苦痛で歪みました。

一瞬たりとも、互いに離れず、

宴会場を歩いていた

クラウヴィッツ大尉と

ディセン公爵の娘は

今は二人だけで談笑していました。

 

背が高く、華麗な容姿の二人は、

多くの人々の中でも

異質な存在のように目立っていました。

少なくとも、外見だけは

完璧に似合っている

カップルだという事実を

否定することはできませんでした。

 

一気に酒を飲み干したイザベルは、

バスティアンは、

ただ皇命に従っているだけと言って

あえて目の前の現実を否定しました。

その瞬間、よりによりって

信じられないことが起きました。

ディセン公爵の娘が何か囁くと、

バスティアンは頭を斜めに傾けて

視線を下げました。

交わす目線と笑顔が

どれほど優しいことか。

恋を始めた恋人にでもなったような

姿でした。

 

バレリーは、

お姉様がそう信じているからといって

現実が変わるわけではないと、

ひどく憎たらしい言葉で

イザベルをからかいました。

そして、

クラウヴィッツ大尉は

ディセン家の令嬢を好きになった。

それは当然のこと。

あんな美人を拒む男がいると思うのかと

尋ねました。

 

イザベルは、

ギュッと閉じた目を開けると、

あなたは何も知らない。

バスティアンは、

そんなくだらない男ではないと

返事をし、

断固として首を横に振りました。

 

一目ぼれしたあの日以来、

イザベルは、6年間も

バスティアンだけを見つめて来ました。

その長い歳月の間、

心を尽くして愛した男を

まともに知らないはずがない。

決して一人だけの虚しい妄想では

ありませんでした。

 

誰が何と言おうと、イザベルは、

バスティアン・クラウヴィッツ

どれほど高潔な男で、

どれほど忠誠を捧げた軍人で、

そのせいで、

どうしても伝えられないその愛が

どれほど深くて切ないのか、

全て知っていました。

 

少なくともお姉様よりは

よく知っているような気がすると

返事をして、

大したことないというように笑った

バレリーは席を立ちました。

 

生意気な忠告をしていた

招かれざる客が去ると、

イザベルは初めて

再び一人になることができました。

空のグラスを満たす音が

心を悲しくさせる春の夜の空気の中に

溶け込みました。

 

帝国のために献身した代価が

あんなに酷い女だなんて。

不当な仕打ちでしたが、

あの愚鈍なほど誠実な男は、

それまで受け入れたようでした。

 

もしかすると、

社交界に広まっている噂を気にして

あの女を盾にすることで、

皇女の名誉を

守るようにしたのかもしれない。

そうだろうと、

ほどなくして答えを見つけた

イザベルの目に

さらに熱くなった涙が溢れました。

 

卑賤の血統を持つ英雄と

見捨てられた皇女の娘。

世間の熱い関心が集まることが

明らかなスキャンダルでした。

今回の社交シーズンの主人公の座は、

すでにあの二人のものに

なっていると言っても

過言ではありませんでした。

それはイザベルの名前を隠すのに

十分でした。

 

しかし、

彼の犠牲を代償にして得る栄光に、

一体何の意味があるのだろうか。

ついに溢れた涙が、

赤く染まったイザベルの両頬を

濡らしました。

開いた窓の向こうからは、

甘いワルツの旋律が聞こえ始め、

ペアを組んで

宴会場の中央に進む客たちの中に、

その女性の手を握った

バスティアンも含まれていました。

 

イザベルは、歯を食いしばって

もう一杯ワインを注ぎました。

目が涙で曇っているせいで、

溢れた酒が手を濡らしましたが、

そのようなことを気にするだけの

余力は残っていませんでした。

 

これ以上、この愛に

未練を持たないよう、

最も悲惨な方法で傷つくことを願って

母親が、この舞踏会への出席を

許したことが初めて分かりました。

 

イザベルは焦点がぼやけた目を上げ

自分のものであるべき場所を

占めている、いとこを見ました。

お金のために、

皇室の操り人形を演じている女性は、

憎らしいほど平然として

堂々としていて、何よりも美しく、

その事実が与えた自己恥辱感が

悲しい涙になって溢れ出たのと同時に

ワルツが始まりました。

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イザベルでさえ

美しいと思うくらいなので

オデットは

絶世の美女なのだと思います。

そして、その父親である

若かりし頃のディセン公爵も。

 

没落した公爵家のディセン公爵は

自他共に認める美しい要望を武器にして

金づるを捕まえようと、

舞踏会にやって来た。

そして、絶世の美男である彼に

ヘレネ皇女は一目惚れした。

イザベル同様、ヘレネ

誰かを好きになったら

あらゆる妄想をして、

自分の気持ちを抑えることが

できなかったのではないかと

思います。

ディセン公爵は、それを利用し

ヘレネをそそのかして

駆け落ちをすることで

既成事実を作ろうとした。

けれども、結局、失敗に終わった。

ディセン公爵は

ヘレネを落とすために、

彼女に優しくしていたけれど、

皇室から絶縁されて

無一文となった後は、彼女に対して

今までのような態度を取らなくなった。

放蕩の限りを尽くし、

お金がなくて苦労しているうちに

ディセン公爵の顔には

かつてヘレネが一目ぼれした時の

面影は消えてしまった。

そして、ヘレネのディセン公爵への

愛は醒めてしまった。

 

ヘレネの愛が失われた理由は、

このような感じではないかと

思いました。

 

マンガでは割愛されていた

イザベルとバレリーのシーン。

イザベルが

オデットとバスティアンの姿を

見ただけで、カッとなったのではなく

妹と話しているうちに、感情が昂ぶり

妄想が激しくなり、

オデットを平手打ちするという暴挙に

出たのだと思いました。

「泣いてみろ乞うてもいい」で

マティアスとの結婚を望んだ

皇女の名前が

思いがけず出て来ましたが、

彼女がイザベルほど執着しなかったのは

マティアスにとって幸いだったと

思います。

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